注意事項
・この作品はwrwrd様の二次創作です。
・本人様とは関係ありません。
・検索避けに協力してください。
・軍パロです。
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kn「ut先生また出掛けるんか〜?」
玄関口で革靴を履き込むutを横目で見る。
時刻は昼過ぎ。
あのutが珍しく書類を終わらせたらしく、今から出掛けるらしい。
よれよれのスーツに革靴を履き、W国の紋章を外して肩掛けの鞄に入れた。
kn「それ外してしまうん?」
ut「うん。これは目障りになってまうから。」
ちょいちょいと前髪を整え、扉を開けた。
綺麗な日差しが差し込む。
kn「行ってらっしゃい。」
ut「行ってきます。」
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カラン。
ガラスのコップに氷が当たる音。
壁は古びた木で出来ていて、雰囲気のある喫茶店。
一見人気に見えるが、森の中にあるため客は見られない。
店長は水色の癖毛をふわふわとなびかせ、瓶底メガネをかけている。
カランコロン。
ut「マスター!!来ちゃった!!」
カツカツと足早にカウンターに向かい、席に座る。
店長は苦笑いしながらぺこりと会釈をした。
ci「utさん、昨日ぶりですね。」
ut「おん!!マスター…いつもの!!」
ci「マスター…って、僕は店長って読んで欲しいです。」
ut「マスター!!」
ciは呆れながら、utに小さな豆を渡した。
落花生だろうか。
ut「お。新作?」
ci「はい。落花生の食感の魅力を出せるように工夫してみました。」
ut「いただきます」
コポコポ。
珈琲がカップに入っていく。
ciの後ろ姿を眺めながら、utは豆を口に入れた。
ci「どうぞ。珈琲です。」
ut「ありがとう。」
utはカップを受け取り、ciを呼んだ。
隣の席に座れと言えば、ciはすんなりと座る。
ut「んー!!最高やぁ…」
今日は、少し苦い味だが、美味しいに変わりない。
ciの作る珈琲の味は、ciの感情によって変化する。
今日は、なにか考え事でもしているのだろう。
ci「それは嬉しいです。」
ut「ciも食べやあ?」
ci「いえ、気にせず…。」
ut「ああ、そっか…すまん。」
ここで、ciの話をしよう。
彼は元軍人である。
そんな彼はハッキングや、作戦を立てることを特技としていた。
なぜ、そんな有能な彼が軍人をやめてしまったのか。
それには、理由がちゃんとあるもので。
とある戦争があった。勿論、ciも参戦していた訳なのだが、結果は目に見えていた。
押されていた。正直、負けとしか言いようがないほどに。
そんな彼は、自爆特攻をするという作戦を立て、自ら敵に突っ込んだのだ。
そこで、彼は毒が含まれたスプレーを顔面に掛けられてしまった。
幸い、命を失うことはなかったものの、視力を失いかけ、味覚は失ったのである。
視力は、なんとかギリギリあるというくらい。
味覚は全然である。
そうして、トラウマができてしまい、軍を抜けてしまった。
彼は生き方を変えたのだ。
元々料理の腕には自信があったので、料理で生きていこうと考えた。
森をさまよっていた所、古びた廃喫茶店を見つけたのだ。
これが、彼が店長になるまでの道のりである。
ut「マスター、明日は用があるから来れんわ。」
ci「はい。何事も上手くいくことを願います。」
ut「おん!!」
utの鞄から見えるW国の紋章バッチ。
ciはそれをぼんやりと見つめていた。
彼が軍人であることくらい、初対面で知っている。
でも、彼は今までの軍人とは違くて、面白味があり、優しいのだから、つい心を許してしまった。
そして、今では常連客になるという、心からの友でありお客様なのである。
ciはutに手を振って見送った。
彼の成功を願って。
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ut「ただいま〜。」
shp「あ、おかえりです。」
革靴を脱ぎ捨て、廊下を歩く。
お風呂上がりのshpと会ったので、お土産の落花生を渡した。
shp「…これは?」
ut「お土産!!美味すぎるで〜?」
utはまだ濡れているshpの髪の毛をわしゃわしゃと触り、自室に向かった。
shpはぐしゃぐしゃになった髪の毛を、イライラしながら直していた。
コンコン。utが就寝しようとした時にノックの音が鳴った。
どうぞと言えば、shpが部屋に入ってきた。
shp「この豆、バカ美味かったです。」
豆が入っていた袋を差し出してそう言った。
これはきっと、また買ってこいという意味である。
ut「せや。shp君も一緒に行こうや!!」
shp「え、いいんですか…?」
ut「もちもち!!」
utはカレンダーを取り出して、日にちを確認する。
今週はもう予定でいっぱいだな…と思い、来週を確認する。
ut「ここは?shp君休暇取れる?」
shp「あ、行けますよ。でも、兄さんは?」
ut「俺は書類はよ終わらせて無理にでも行くわ。」
shp「ふは、ほんまその店長の力凄いわ。」
カレンダーに赤丸を付ける。
その下に「shp君と喫茶店デート(笑)」とメモった。
まあ、それはshpもキモがる訳で。
shpはうわっと言いながら、足早にutの自室を後にした。
utはぴえんというような顔で閉まった扉を見ていた。
そして、今日。
森の中をゆっくりと歩く2人の軍人。
いや、W国の紋章は無いから、今は一般人…と言った方がいいだろうか。
shp「バイクで行かないんすか…」
暑い暑いと、shpはジャージを脱いだ。
ut「当たり前やん。腹空かせとかんと!!」
「んでな、一気に珈琲飲むねん。身体の芯からぶわって来るんやで!!」
「それが堪らんくてなぁ…」
ニコチン大好き人間とやらは何処に言ったのだろうか。
今は、幹部の中でも上位に健康体だろう。
そりゃ、週三くらいのレベルで森を往復していたらそうなるけども。
shpは煙草を取り出し、火を点けようとした。
すると、utに取り上げられてしまった。
ut「ダメダメ。体ん中はからっぽにしとくんや。」
shp「はぁ…」
ut「珈琲はよ飲みたいなあ」
utはるんるんと子供のように歩いている。
shpはそんなutをダルそうに追いかけていた。
はて。
ここに喫茶店があるはずだが…?
そこには、「売地」と書かれた看板が1つ。
あの、古びた喫茶店の姿は無かった。
ut「…え?」
utはすぐさま駆け寄って、柵の中に入った。
だが、そこには何も無い。
ただ、崩されている瓦礫の中に、あのカップが割れて落ちていた。
ut「…、」
shp「兄さん?ここ、売地って書いてますよ。」
utは悲しそうに割れたカップの破片を拾い始めた。
ぷつりと指が切れても、拾っている。
shpは仕方なく、拾うのを手伝った。
shp「兄さん?」
ut「…ここが、喫茶店の、はず、やねん。」
「…なに、が、?」
集めたカップの破片を丁寧に小さな袋に入れた。
すると、奥から人がやってきた。
肩には、A国の紋章が着いていた。
mb「お?てめぇ、何処のもんや?」
shp「ああ、森に迷ってるんすよ〜」
「ここで工事か何かされてるんすか?」
mb「ああ、話せば長くなるが…聞いてくか?」
食い付いたのはutである。
utはぜひ聞かせてくれと言って、男を見つめた。
mb「A国で、優秀な幹部様が居たんだとよ。そいつがな、戦争で大怪我負ったみたいで、それがトラウマになってしもたんやって。まあ、それで夜逃げみたいに、姿を消しちまってん。」
ut「大怪我で、逃げれるもんなのか?」
mb「ああ、大怪我と言っても、味覚を失ったとか、失明しかけた…とか。だから、足は普通に動けたらしい。」
utはギリギリと拳を握った。
mb「それで、そいつがここに喫茶店を開いてたらしいわ。まあ、それが総統様にバレてもうてな。一昨日、捕らえられたんだとよ。」
「きっと、A国の幹部様の事だから、薬やらなんやらのどんな手でも使って、また優秀な幹部に戻すんだろうな。そいつ、総統様のお気にだったし。」
ut「それって、ciっていう、水色髪が似合う男?」
mb「あっ、そうそう。その人。」
utは殺意で溢れていた。shpは咄嗟にutを後ろに提げた。
shp「わざわざすみません。ありがとうございます。」
mb「…ああ。」
男はゆらりと前に出て、shpのポケットからW国の紋章を取り出した。
ヒラヒラとそれを見て、にこりと笑った。
mb「まあそうやと思ってたよ。W国の幹部さん」
shp「…、知ってたんか。」
mb「ciに問い詰めたら、軍人が客として来てくれるって吐いたからねえ。この近くのお国言うたら、W国しかないから。」
ut「てめぇッ!!」
shp「兄さん!!」
殴ろうとするutの腕をshpが止める。
男は笑いながら、走っていった。
utはshpを乱暴に連れて、軍基地に戻った。
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tn「はぁぁぁぁ!?!?!?」
室内に響き渡る大声。
それに耳を塞ぐ幹部の皆。
だが、utは1人淡々と話し出した。
ut「早くA国に宣戦布告を出してくれ。」
tn「ん、んな急に言われてもだな…。」
ut「早く。早く。」
殺気で室内が押し潰されそうだ。
shpは皆に状況を説明した。
それを聞いて、皆はutに尋ねた。
zm「A国が、そいつの本来の居場所なんやろ?」
sho「そっちの方がええんやない?」
utは眼鏡越しに二人を睨んだ。
ut「てめぇらは何も知らないからだ。」
「宣戦布告を出さないのなら、俺は勝手に動かせてもらうぞ。」
gr「まあ落ち着け。単独行動すると死ぬぞ。」
ut「ああ、別に構わない。」
kn「utこ”らぁッ!!」
knは走ってutの肩を掴んだ。
utはギロリと視線をknに向けた。
kn「なんでそんなに彼に執着すんねん!!」
「あくまで、店長と客の立場やねんぞ!!これ以上、深入りしたらアカン!!」
ut「店長と客…それもそうだ。でも、俺たちは親友なんだよ。kn、お前も俺が捕らわれた時、理性を失うほど怒ったらしいな?」
kn「うッ…そ、それはッ。」
ut「お前らの考えで勝手に話を進めるな。」
kn「…ッ、、でもッ、。」
ut「…分かってる。俺を心配してくれてるって。」
kn「…、」
ut「でも、同じくらいあいつが心配なんや。分かってくれ。」
gr「よーし!!宣戦布告してくたぞいっ!!」
grがピースをしながら笑い声を上げた。
それを聞いてtnはふらりと尻もちをついた。
utは、grの元へ行き、ハイタッチを済ませる。
ut「行ってくるわ。俺、前線行かせてもらうで」
zm「っしゃ、助太刀するぜ!!」
sho「行くぞー!!」
kn「…おう!!」
rb「…はあ、行きますかな。」
shp「emさん行こー。」
em「はぁーい。」
tn「…お前らの勢いには降参や。」
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そして、ようやくA国軍基地に到着した。
パッと見スラムが目立つ国だった。
utはひっそりと侵入し、ciを探しに。
zm、sho、knは前線で敵のヘイト買い。
rbは情報を伝える。
shp、emは後線にスタンバイ。
grは、にやりと微笑んだ。
さあ、戦争の時間だ。
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ut「…。」
カツカツという足音を立てないように慎重に歩く。
ciは何処にいるのやら。
ゆっくりと建物を歩き、外へ出る。
誰もいない。恐らく、ほとんどの奴が前線に行ったのだろう。
utはライターを明かりに、暗い裏道を歩いた。
ut「…、誰もおらんな。」
そう呟いた時、足になにかがコツンと当たった。
下を向くと、そこには人が倒れていた。
老人だ。こんな所で、倒れてしまっている。
utは咄嗟に老人を起こし、体に着いた土を払った。
mb「御優しいお方じゃ…。ありがたや。」
ut「いえ。それより、ここは危険やね。あっちの小屋に入っとりゃあ。」
mb「おお。それはどうも親切に。」
utは老人に肩を貸し、小屋に座らせた。
そして、自らの薄っぺらいスーツを老人の膝にかけてやった。
utが急に優しくなるものだから、皆が今の状況を見れば混乱するだろうな。
mb「お主に、これを預けたい。」
ut「うん?…って、これッ、!!」
mb「これは、御優しい軍人様が私に下さったものだ。でも、私には荷が重すぎる。」
「これを、あの御優しい軍人様に返して欲しいのだ。」
ut「…はい。任せてください。」
mb「あの御優しい軍人様は、偉い人達に悪く扱われているそうだ…助けてやってください。」
utは、老人から見覚えのある懐中時計を受け取った。
そして、ゆっくりと小屋の戸を閉めた。
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ふらり。ふらり。
意識が抜けた。
目の前は何も見えない。
聞こえる銃声。臭う血しぶき。
これはきっと薬の大量摂取による副作用。
俺の目には何も映らない。
俺の意識は何も示さない。
ただただ、壁にもたれて座るだけ。
手の置かれた拳銃。それを握る力もない。
何が起きているのか。それも分からない。
zm「案外楽勝やなあ〜」
sho「それな〜!!」
kn「ていうかさ、ut先生からその店長の見た目とか聞いてないやん?」
「殺っちゃってたり…しぃひんよな?」
zm「ま、まあまあ…。」
ut?
utがどうしたのだろう。
ああ、元気にしているのかな。
zm「ん?おっと…敵か!!」
かちゃり。
頭に何かが当たっている気がする。
sho「こいつ生きてんの?おーい」
誰に言ってるの?俺?
kn「だいぶ身体ボロボロやぞ。瀕死じゃね?」
zm「せやねえ…おっ。ut先生じゃね、あれ!!」
ut?
なんで、ここにいるのだろう。
kn「おーい!!utせんせー!!」
ut「…!!」
カツカツカツ…だんだん早くなる足音が近付く。
すると、パシンと音が鳴って、頭に当たっていた何かが離れた。
ut「…マスター。俺やで、分かる?」
ci「……。」
utさん、何しにきたの?
ああ、戦争か…じゃあ、俺やられちゃうんだなぁ。
何処にいるの?最後に姿だけでも見たい。
手を伸ばすと、案外近くに居たようだ。
コツリと眼鏡に指が触れた。
ut「…焦点が合ってないな。よし、連れてくぞ。」
そう言うと、俺の体はふわりと軽くなった。
持ち上げられたのだろう。
やっと解放されるのか。
もうこんなクソみたいな国、今度こそおさらばしてやる。
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目を開けてみたら、白い天井が広がっていた。
自分がまだ生きていると察する。
手に力を入れてみると、動いた。
多少の痺れも感じた。
辺りを見渡すと、カーテンに囲まれていた。
誰もいないようだ。
俺は、痛む腹を抑えて起き上がってみた。
目を極限に細めて、手にあたる物を見る。
そこには、見覚えのある懐中時計が置いてあった。
これは、俺がじいさんに渡したものだ。
俺がまだ、小さい頃に助けてくれたじいさん。
俺の形見は、せめて彼に託そうとしたんだ。
なぜ、ここにあるのだろう。
懸命に考えるが、分からなかった。
とりあえず、そのことはほかって、窓を見た。
綺麗な青空がぼやけてみえた。
どうやら、片目の視力は無くなり、もう片方は無くなりかけているようだ。
全く、生きずらいこの俺を、生かしやがって。
そう考えていると、カーテンが開いた。
ut「…マスター。やっと起きたんや。」
utさんだ。
utさんはふうと息をつき、こちらに寄ってきた。
パイプ椅子に腰をかけ、俺の目を見た。
ut「…見えるか??」
ci「…なんとか。ぼんやりと見えます。」
ut「このメガネやるわ。結構弄った。」
渡されたメガネをかけると、utさんの表情がよく見えた。
ぴったりのようだ。
ut「なあ、何食いたい??腹減っとうやろ。」
ci「…まあ、はい。」
ut「なんでもええで。作るん得意やから!!」
…と言っても、味覚ないし特別好物な物はない。
ci「utさんの好きな物を食べたいです。」
助けてくれたutさんの好きな物を知りたい。
それから、その好きな物でお礼をしたい。
そう思った。
ut「…分かったわ!!ちょーっと待ってろ!」
utさんは笑顔でカーテンの外へ出ていった。
ut「ci、ほい!!」
やってきたのは1時間後。
だいぶ長々と料理をしていたな。
渡されたのは、珈琲であった。
受け取って、口に含んでみた。
ci「…あ、あまい。」
ふわっとした甘さが口に拡がった。
何年ぶりだろう。この”あまい”を感じたのは。
これは何の味だっただろうか。
さとう…?みるく…?
甘いに当たる物を沢山思い描く。
なんだろうなんだろうと思考が働く。
ut「……/」
utさんは恥ずかしそうに頬を指先で撫でていた。
ああ、美味しい珈琲だなあ。
世界で1番、美味しいなあ。
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tn「ci、珈琲くれ…。」
shp「わいにも〜」
ciがW国幹部になってから1ヶ月が経った。
ciは城下町に喫茶店を開き、そこの店主プラス幹部という立場である。
snによって作られた素晴らしい薬によって、味覚も視力も取り戻すことが出来た。
なんて神様に恵まれた人間だろう。
ciは滅多に感情を出さない。
そんなこと、最初からutは知っていた。
だから、いつも珈琲を飲む。
ciの作る珈琲の味は、彼の感情と同じ。
甘い時もあれば、苦い時もある。
そんな毎日少し変わる珈琲の味を、楽しむのがutのルーティンであった。
ut「マスター、珈琲1つ!!」
ci「はぁい!!」
前半くらいは、10月頃に書いてて、後半を今書きましたねはい。
なので、矛盾は生まれてて正常ですから!!
私、悪くないもん!!
コメント
7件
ciの視力と味覚が戻って良かったぁ、、。なんかutの好きなものがciがつくる珈琲のように、ciの幸せがutの幸せみたいな感じがして好こ。
ciのくんの珈琲飲んでみたいな … 珈琲飲めないけど (( 兄さんかっけぇっす !! 屑の中に優しさがあるのはきっとスターだからこそなんだろうなぁ ciくんの味覚と視覚治ってよかった … !! 神作投稿ありがとうございます !✨