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やあ、お元気かな?異星人対策室のジョン=ケラー室長だ。現在ティナが日本に滞在しているので我々としても余裕がある期間……とはいかず、四六時中各方面からの問い合わせが殺到してその対応に追われているのが実情だ。
特にティナが滞在している日本からの問い合わせが大半を占めているが、彼らには時差と言うものをもう少し考慮して貰いたいものだ。日本人は礼儀正しく謹み深いと聞いていたが……いや、ティナが居るのだ。藁にも縋る気持ちで問い合わせているのだろうと言うのは良く分かる。
ミスター朝霧が滞在しているし、補佐としてジャッキー=ニシムラ(実は変態)を応援として派遣しているが……彼は少し個性的だから、早くも日本の警察と懇意になっているみたいだ。何をしているのだろうか。
さて我々は問い合わせの対応に奔走しているわけだが、日本時間の昨晩突如として合衆国及びその友好国へ送られてきた資料の対処に苦慮している。
なぜか異星人対策室にも送られてきたのだが、内容としては東アジアの某国のエージェントが日本の事故現場からティナのサンプルを無断で採取、国外へ持ち出そうとしたのをアリアが察知。これを阻止してエージェント達を確保したと言うものだ。某国が関与していると言うあらゆる証拠も資料として送られてきた。
大々的に公表されていないのが幸いだが、我々の反応と対処を観察しているのだろう。ティナが不思議なくらい好意的だから、その分アリアが厳しくなるのは仕方がない。色々迂闊な子だからなぁ。
例の親書の件で政府は大騒ぎだったのに、この追撃は正直辛いものがある。大統領達を煩わせぬようティナ関連の対応は全て異星人対策室が請け負ったから激務も仕方がないが、部下達には申し訳ない気持ちで胸が張り裂けそうだ。
私の分を増やして彼らの負担を軽減しようとしたら断れてしまった。皆で乗り越えると。
良い部下達に恵まれて私は幸せ者だ。落ち着いたら食事に行くことにしよう。いや、最近の若い子は上司との食事が苦手だと聞いたことがあるな。
特別有給休暇を付与した方が喜ぶかもしれないな。
「ティナ君のサンプルか。確かに喉から手が出る程欲しいが、北は功を焦ったようだ。いや、背後には中華も関わっているだろうな」
「ドクターもそう思うか」
「当然だ。グローバル化が進んでいるとは言え、東洋人の中に白人や黒人が溶け込むのは不可能だ。まして日本では目立ちすぎる。エージェントの話を聞いて真っ先にあの国が頭に浮かんだよ」
一息吐いていると、同じく一息していたドクターと遭遇したのでオジサン二人でコーヒー片手に小休止だ。もちろん部下達にも休むように伝えてあるし、私が最後に部屋を出た。当然だな。
「やはりドクターもティナのサンプルには興味があるか」
「むしろ気にならん研究者など存在しないだろう。だが、彼女の不興を買ってまで手に入れるものではない。友好を深めれば進んで提供してくれるようになる」
「それを理解している人はそこまで多くないさ」
とは言え、ティナの負傷を含めてこの件が及ぼす影響を考えると……もっと情報が欲しいな。地球の常識を備えつつティナと親しくて意見が出来る存在。
ミスター朝霧やジャッキー=ニシムラ(観音開き)だと難しい。ううむ。
「何をそんなに悩む必要があるのかね?」
「む、口に出ていたか」
「集中するのは構わんが、内心を漏らさぬようにな。それで、室長の悩みなのだが。地球の常識を知っていてティナ君と親しく、そして気軽に意見できる者が居ると言えばどう思うかね?」
「そんな人物が居るのか!?」
「何を驚いているのか。カレン君だよ」
「なっ!」
そうだ、カレンが居た!あの子はティナに初めて出来た地球人の友達!ティナだって無下にはしないだろう。ちょっと行動力が高過ぎるゆえに大変な変化を獲得してしまったが。
「今現在彼女は学校へも行けずここに滞在している。もちろん彼女を守るためではあるが、年頃の少女に今の環境は酷だとは思わんかね?」
「だが、外に出すのは危険だ」
「ケラー室長、娘を想う親の気持ちと言うものは分からんでもない。しかし、逆に考えるのだ。恐らく地球に存在するどんな場所よりも、ティナ君の側が安全であることに疑う余地はない。違うかね?」
確かにそうだ。地球人に対して懐疑的なアリアもティナの友人となれば気を配るだろうし、フェルもティナ以外の友人としてカレンと親しくしようとしてくれている。確かに、下手をすればホワイトハウスより厳重に守られている場所だな。
不可抗力とは言え、年頃のあの子をずっと閉じ込めている現状は父親としても心苦しく想っていたのだ。
「……やはりドクターに相談して正解だったな。早速カレンに相談してみるよ。もちろん、彼女の意志が最優先だがね」
カレンを派遣するとなれば色々手続きなども大変だし、移動手段にも頭を悩ませねばならんが……仕方無い。
……と思っていたのだよ、少なくとも三十分前の私は。
先ず、カレンに事情を話したら快諾してくれた。窮屈な環境もあるだろうが、少しでも私の手伝いが出来ることが嬉しかったようだ。本当に、私には過ぎた良い娘に育ってくれた。
さて、カレンを派遣するとなれば重要なのは日本までの移動手段だ。航空機を使うのは当然として、護衛を誰にするか悩んだ。ジャッキー=ニシムラ(実は合気道八段)が居れば彼に任せるのだが、生憎彼は日本だ。
しかし、生半可な者に娘を任せること出来ない。あの子は何かと有名になり過ぎたし、誘拐されたこともある。メリルに頼むことも考えたが、彼女は例の基地での研究で忙しいらしく今すぐに派遣するのは難しい。
日本政府へ要請するにしても時間を要するし、どうしたものかと考えていたらカレンが部屋から忽然と姿を消した。一瞬嫌な予感が脳裏を走ったが、次の瞬間には不安は消えた。ティナが慌ててメッセージを送ってくれたんだ。
どうやらカレンはいつの間にかティナやフェルとやり取りが出来る端末を渡されていたみたいで、カレンが日本へ行くと聞いたフェルが直ぐにこちらへ転移してカレンを日本へ連れて行ったと。
フェルはカレンと一緒に居られるのが嬉しかったみたいで、ティナもビックリしたようだ。いやはや、仲が良くて何よりだよ。
……いや、フェル。今度は君か。ティナのやらかしには馴れているんだが……フェル、君もなのか。
突然お客が増えて、しかもそのお客は自分で言うのも何だが合衆国要人の娘ときた。日本の皆さんには愛用の胃薬を送ろう。その前に……飲むか。