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私は呪われた子、恭子であると、今日もう一度再確認することとなる。けたたましいブレーキ音の後、目の前の景色に絶望した。
やっと学校という縛りから解放された私たちは夏休み初日にジョッピングモールに行くため待ち合わせをしていた。夏休みに入り日差しの強さは増し、日陰を探そうと辺りを見回す。空を見上げると太陽の光を隠すには心もとない量の雲がチラホラと浮かんでいた。
私は大通りの信号の近くにある集合場所のベンチの木陰で香ちゃんが来るのを待っていた。集合時間10分前に着いてしまうのは楽しみだからなのだと今の私ならわかる。
今日はどんな楽しいことがあるのかと心を躍らせる。集合時間はまだなのかと時計を見て、時間を確認した後、香ちゃんが来ないか信号の先に目を凝らす。そしてまたすぐ時計の針を見ることを繰り返していた。
「恭子ちゃーん!」
ちょうど腕時計に目をやった時、耳に幸せと言う2文字が入る。声のする方向を見るとそこには信号越しに元気に手を振る香りの姿が見えた。
今日は水色のオーバーサイズシャツを腕までまくり、その中にはピンクのシャツが見え隠れしている綺麗な服を着ていた。ズボンは少し短めの白のデニムパンツで中学生とは思えないコーディネートだった。
私は香ちゃんを見るとすぐ立ち上がり、手を振りかえした。信号が青に変わり私の元に引っ張られるようにやってくる香ちゃんの姿は、何度見ても光そのもので、明るい笑顔も優しい性格も元気な声も全てが私にはかけがえのない大切なものだった、、、、
違和感はすぐに気づいた。雰囲気がいつもと違った。香ちゃんの明るさが急に消え、周りの雑音が全て聞こえなくなった。目に入るのはこちらに向かって走ってくる香ちゃんだけ。でもいつもとはやはり何かが違った。
そう思った瞬間視界の左側から急に大きなトラックが現れた。もちろん信号は赤のはず、止まらなければいけないはずのトラックが私の視界の4分の1を奪った。私は咄嗟に「危ないっ!」と叫んだ。全てがスローに見える。香ちゃんも横から来たトラックに気づいたのだろう。
でももうその時には遅かった。強くトラックにぶつかった体は簡単に反対方向へ飛ばされた、、そしてトラックはそのまま吹っ飛び、転んで起きあがろうとした香ちゃんを下敷きにした。
けたたましいブレーキ音と共に私は我に帰った。香ちゃんがトラックにぶつかった時香ちゃんは私の方を見た。目があった。その目はいつもの輝きはなく、悲しみに溢れた目をしていて、昔の私のようだった。
私は地面に膝をつき心の底から嘆くのだった。