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タバコ味のキス

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タバコ味のキス

1 - タバコ味のキス

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2024年09月27日

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「うぇ、ダバコくせぇ…」

ベランダの手すりに寄りかかり、電子タバコを何本も吸う恋人。1時間も何してるのかとベランダに出てみれば、ヘビースモーカーをエンジョイしている最中だった。ないこ本人は嗜む程度だのなんだのほざいているが、1日10何本も吸い上げれば立派なヘビースモーカーだ。

「社畜やめてもストレス溜まんだよね〜」

語尾を踊らせながら微笑むないこの横顔に少々見惚れながら、流されるべくため息をついた。

「俺、ないこに早死してほしくないんやけど」

「…そお?ながーくつまんない人生送るより充実した短い人生送る方が楽しいと思うけどね」

“俺が居るのに楽しくないん?”…なんて口に出せるはずもなく、そうか。とだけ口先に零し、外観へ視線を移す。高層マンションを買ったからか、物凄くと言っていいほど綺麗な夜景。これも社会の愚の骨頂なんだと内心怯えながら、ベランダの手すりに寄りかかる。

「…タバコ、やめないん」

「だから言ったでしょ、やめないよ」

「俺はないこと長く一緒に居たいんやけどな」

「…天国で一緒にいればいいやん?あと俺そこまで早死する自信ないし笑」

「そういう問題やなくて……」

少々呆れながら苦笑すると、ないこは軽く謝りながら俺の言い分を要約しだした。

「やめるか減らせってことでしょ?」

「…まぁな」

やっぱり。と笑うないこは目を伏せ、どこか切なそうに話し出した。

「ならさ、まろも早く死ねばいい」

「俺と一緒に」

驚きで固まる俺を他所に、ポケットを漁るないこ。見つけた、と言わんばかりに取り出すと、それはいつもと違う紙巻きタバコだった。

「電子タバコは?」

「まぁまぁ、これじゃないと出来ないの」

「はい、あげる、咥えて」

渡された1本の紙巻きタバコ。渋々咥えると、ないこは既に咥えていた自らの紙巻きタバコに火をつけていた。次第に近づいてくるないこの顔が視界いっぱいに映る。

( あ… )

ないこのタバコの火が、俺の咥えるタバコに燃え移る。ひと吸いしたないこがタバコを口から離し、俺に向かって小声で 吸ってみ、とだけ放つ。思い切って吸ってみると、煙たさによる咳が大きく襲ってくる。

「うぇっ、げほっ…」

苦しみながら咳き込む俺を見て笑ったないこは、タバコを自らの口から離し、俺の顔目掛けて口に含んだ煙を飛ばしてくる。

「…いい?」

「お前がそっち側やろ…」

やり返すべく、またひとつタバコの主流煙を口に含むが、むせ返って吐き出してしまった。

「無理に吸うなよ、まろはいい大人なんだから」

「一瞬だけ悪い大人になってやり返そうとしてんだよ、大人しく待っとれ」

ダサ〜笑なんて笑うないこがまたひと口と口をつける。そんなないこ目掛け、思いっきり唇を押し当てる。驚いた様子のないこから煙を奪い、少量ながらにかけ返す。

「…っ必死かよ、ばか……」

室内からの逆光で顔色はわからないが、煙のない口付けを交わした。

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