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激痛が強烈な甘美さへとすり替わるSWAPSAKENの狂った領域法則から逃れようと、1x1x1x1は赤くなった顔のまま、ガタガタの足腰で必死に白銀の回廊を走り抜けていた。
「ハァ……ッ、ハァ……ッ! 冗談じゃない、斬られて死ぬのも嫌だが、斬られて変な声を上げながら身悶えるのはもっと嫌だぞ!!」
だが、運動神経がサバイバー以下に落ち込んでいる1x1x1x1の歩幅はあまりにも狭い。
背後からは規則正しく、一切の乱れがない重厚な鎧の足音が迫っていた。
ガシャリ、ガシャリ、ガシャリ。
「ターゲット、捕縛行動へ移る」
無機質な声とともに、テラモンが無駄のない足さばきで一気に距離を詰める。
至近距離から振り下ろされた金色の剣の刃を、1x1x1x1は「ひえっ!?」と頭を低くして間一髪でかわした。
しかし、惨劇はその直後に起こった。
必死に身を翻して前へ踏み出そうとした1x1x1x1の黒地に緑の模様が入ったローブの裾が、空を切って下ろされたテラモンの金色の剣の飾られた柄(つか)頭の突起に、力強くガッチリと引っかかってしまったのだ。
「うわっ!? な、なんだ!?」
「……推進力の急激な阻害を検知」
前へ全速力で逃げようとする1x1x1x1の体重と、踏み込んで剣を保持しようとするテラモンの体重。
二人のベクトルが正反対に引っ張り合い、黒い生地がギチギチと悲鳴を上げた。
「離せッ! ローブが破ける!!」
「解脱不可。……引っ張り行動の停止を――」
あまりの急停止と引っ張り合いに、弱体化した1x1x1x1の足元が完全に滑った。
「うわああああっ!?」
「……ッ!?」
1x1x1x1が勢い余って後ろへ盛大に倒れ込み、その強烈な引っ張りに引きずられる形で、体勢を崩したテラモンも前へとつんのめる。
ドッッッカーーーーーンッ!!!!
白銀の床に、重厚な鎧の衝突音と悲鳴が激しく響き渡った。
豪快にひっくり返った1x1x1x1の上に、テラモンの重い体がまるごと押し倒される形で重なり合う。
白と黒の硬質な鎧が1x1x1x1の胸元を強く圧迫し、衝撃で二人は息を詰めた。
「ぐはっ……! いたた……目から火花が出たぞ……」
1x1x1x1が痛む頭を押さえながら薄目を開けた、その瞬間。
目の前、わずか数センチの距離に――テラモンの顔があった。
衝撃の弾みで、深く被られていた白いフードが大きく捲れ上がっていた。
普段は見えない茶色い巻き毛がふわリと広がって1x1x1x1の頬をかすめ、柔らかな髪の毛の隙間から、テラモンの整った素顔と、その透き通るような双眸が露わになっていた。
1x1x1x1の赤く光る瞳と、テラモンの光を失った瞳が、至近距離で完璧に重なり合う。
互いの息遣いが肌に吹きかかるほどのゼロ距離。
静寂が流れる白銀の世界で、二人の時間が完全にフリーズした。
「……あ」
1x1x1x1は息をのんだ。
かつて神殿で同じ空を見上げていた頃、この茶色い巻き毛の男は、説教くさく、不器用で、だが確かに自分という存在をその温かな瞳に映してくれていた。
分離して邪悪の化身となった後も、どれほど憎まれ、激突しようとも、テラモンの視線には常に激しい「感情」が宿っていたはずだった。
だが今、重なり合う距離で見つめ返すテラモンの瞳には、色がない。
鏡のように冷たく、ただ自分という物体を無機質に反射しているだけだった。
1x1x1x1の胸の奥が、激痛でも快感でもない、刺すような切なさでギュッと締め付けられた。
「……テラモン」
重なり合った体温を感じながら、1x1x1x1はぽつりと、掠れた声で呟いた。
「……お前、冷たいな」
それは、自分を殺そうとしてくる恐怖への怒りでもなく、反転した世界の狂気を楽しむ言葉でもなかった。
ただただ、かつて「ひとつ」であった半身の、あまりにも深く、寂しげな絞り出すような吐息だった。
その言葉が、テラモンの耳腔を抜け、脳裏に届いた瞬間。
――チリッ……。
感情を完全に消去され、自動追撃機械と化していたテラモンの胸の奥深くで、小さな「熱」が弾けた。
「……ッ!?」
テラモンの身体が、小さく跳ねるように強張った。
視覚情報:対象1x1x1x1。
殺害優先度:極大。
論理回路はそう告げているはずだった。
なのに、全身の関節を動かす駆動システムが、理由のわからないノイズによって激しく不協和音を奏で始める。
胸の奥が熱い。焼き切れるように熱い。
「冷たい」というたった一言の呟きが、冷え切っていたテラモンの魂の深層に、消し去れなかった記憶の残火を力ずくで燃え上がらせていた。
「……エ、エラー……」
テラモンの唇から、初めて機械音ではない、わずかに揺れる人間的な吐息が漏れた。
「……胸部中央領域において……未知の異常ログを検知……。……回路のオーバーヒート……原因、特定不能……」
無表情だったテラモンの眉根が、ほんの数ミリだけ、困惑に歪む。
1x1x1x1の首元に突きつけられていたはずの金色の剣。
その刀身を握りしめていたテラモンの指先から、スーッと力が抜けていく。
金属の触れ合うカチャンという小さな音が響き、殺意の塊だった剣が、白銀の床へと力なく倒れ落ちた。
「テラモン……?」
1x1x1x1は、目の前で困惑に瞳を揺らし始めるかつての神を見つめ返した。
冷たかったはずの鉄の仮面に、ほんのわずかな、だが決定的な「破調」が刻まれ始めていた。
#Vanity
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#1x1x1x1
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