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#Vanity
ゆ♨️
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#azure
ゆ♨️
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#1x1x1x1
ゆ♨️
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99
重なり合った事故から命からがら這い出した1x1x1x1は、乱れた黒地に緑のローブを翻し、白銀の回廊の物陰から怪しげな果実を取り出した。
「ハァ……ハァ……! もう打つ手がねぇなら、これしかねぇ!!」
それはFORSAKENのキラー達が潜む暗黒庭園から持ってきた、一齧りで神すらも腐死させるはずの最悪の「毒リンゴ」――だった代物。
しかし、このSWAPSAKENの【概念の反転】の領域法則を浴びた果実は、禍々しい紫色の毒気を失い、まるで宝石のように瑞々しく真っ赤に輝いていた。
「よし……! 弱体化した俺の魔法じゃダメでも、この毒リンゴの反転パワーなら、あいつのイカれた回路を内部からバグらせることができるはずだ!」
ガシャリ、ガシャリ……。
胸部の異常ログによって一時停止していたテラモンが、再び無表情な追撃機械へと戻り、金色の剣を引きずりながら足音を響かせて歩み寄ってくる。
白いフードの陰から覗く茶色い巻き毛は静かに揺れ、その瞳には依然として温度がない。
「……ターゲットの生命反応を再確認。……殺害シークエンスを完遂する」
「完遂されてたまるかぁぁぁッ!! 喰らいやがれテラモン!!」
1x1x1x1はサバイバー以下の運動神経を限界まで振り絞り、転びそうになりながらテラモンの懐へ猛ダッシュする。
金色の剣が振り下ろされる直前、捨て身のタックルでテラモンの懐に飛び込み、真っ赤なリンゴをその無防備な口元へ強引に押し込んだ。
ムギュッ!!
「むぐっ……!?」
テラモンの完璧だった動作が、唐突に口内に放り込まれた異物によって完全に停止した。
「喰ったな!? ざまみろ、毒の反転パワーをたっぷり味わいやがれ!!」
勝ち誇る1x1x1x1。
しかし、テラモンの口内で弾けたのは、凶悪な致死毒などではなかった。
SWAPSAKENの極端すぎる反転効果により、世界で最も惨絶だった毒素は、糖度・蜜の量・食感・香りのすべてが極限まで極まった「超絶激甘極上蜜入り高級リンゴ」へと完全変質していたのだ。
果汁が口いっぱいに溢れ出し、甘美な香りがテラモンの鼻腔を突き抜ける。
「……ッ、……」
テラモンの無感情な顔がフリーズした。
論理回路が「毒素=危険物」と判定しようとするも、舌から伝わる圧倒的な「幸福な甘み」が、その機械的な処理を完全に拒絶する。
シャク……シャク……モグモグ……。
無意識のうちに、テラモンの顎が動き始めた。
白いフードの下で、茶色い巻き毛を揺らしながら、小動物のように一生懸命にリンゴを咀嚼するテラモン。
1x1x1x1は息をのんでその光景を見つめた。
「ど、どうだ……!? 苦しいか!? 回路が焼き切れて元の説教くさいお前に戻ったか!?」
シャク……ゴクン。
果実を完全に飲み干したテラモンは、ゆっくりと金色の剣を地面に下ろした。
そして、白いフードの陰から覗く目元を微かに緩め、暗い瞳に小さな、奇跡のような温かな光を宿らせた。
――神として絶対の秩序を統べ、そして感情を奪われて殺戮機械と化した中で、一度たりとも発せられることのなかった「情動」の宿る声。
薄い唇が、静かに、そしてどこか幼くほころぶ。
「……美味しい」
ぽつりと漏れ出たその言葉には、一切の電子的なノイズも、機械的な冷たさも入っていなかった。
ただの一人の「人間」として、純粋な味覚と喜びを感じ取った、完璧な感情の復活の一歩。
「……あ」
1x1x1x1の赤く光る瞳から、ポロリと涙がこぼれ落ちた。
「喋った……! 機械の音じゃねぇ……! お前、美味いって言ったなテラモン!?」
だが、テラモンはすぐさまハッと我に返ると、再び表情を素早く引き締め、冷ややかな視線を1x1x1x1に向けた。
「……口内への未知の栄養素の侵入を確認。……感情モジュールの誤作動と判定。……殺害対象への情けは不要。攻撃を再開する」
「撤回するのが早すぎるだろーーーッ!! リンゴの余韻に浸れよ少しは!!」
ほんの少しだけ感情の氷が溶け出した白銀の世界で、二人の可笑しなチェイスは、なおも賑やかに続いていくのだった。