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――異変に気づいたのは、昼休みだった。
「ユイ、ちょっと見て」
ミオがスマホを差し出してくる。
画面いっぱいに流れる、見覚えのあるサムネ。
「……え?」
再生数。
昨日まで10万だった動画が、300万。
「ちょ、ちょっと待って!?!?」
心臓が一気に跳ねる。
問題の動画は、昨日の軽い配信切り抜きだった。
『放課後ちょっとだけガチマ!負けたらタピオカ!』
いつも通り、
笑って、しゃべって、
たまたま強い動きをしただけ。
なのに。
《この立ち回り高校生とか嘘だろ》
《XP4550なめてた》
《わざと手抜いて再生数稼ぎ?》
《強者の余裕ムカつく》
「……え、待って、なにこれ」
コメント欄、真っ二つ。
褒める人と、
叩く人と、
火をつけたいだけの人。
――炎上だ。
教室が、ざわつく。
「ユイ、トレンド入ってるよ」
「『最強女子高生YouTuber』って何!?」
やめて!
目立ちたくて転生したわけじゃない!
私は机に突っ伏した。
「……普通に青春したかっただけなのに」
放課後。
帰りの満員電車。
スマホを開くたび、通知が増える。
フォロワー+2万、+5万、+10万。
バズってる。完全に。
でも、胸は全然スッキリしない。
《どうせ裏で大会荒らしてる》
《才能あるやつは気楽でいいよな》
――その言葉が、刺さる。
私は、
本当に気楽だったんだろうか。
夜。
配信をつけるか、迷う。
逃げたい気持ちと、
ちゃんと話したい気持ち。
深呼吸して、配信ボタンを押した。
「……こんばんは、ユイです」
一瞬で視聴者数、5万人。
「えっと……今日は、ちょっと真面目な話をします」
コメントが止まる。
「私は、勝つためだけにスプラやってないです」
声が震える。
「学校行って、
満員電車に文句言って、
友達と笑って、
その延長でバトルしてるだけ」
「強いって言われるけど、
それが全部だと思われるの、正直、怖い」
少し沈黙。
そして――
《ちゃんと人間で安心した》
《青春してる最強、好き》
《応援する》
コメント欄が、変わり始める。
その配信は、
切り抜かれ、
拡散され、
伝説的バズになった。
『XP4550女子高生、炎上配信で本音』
再生数、1000万。
でも。
私は、笑っていた。
「ユイ、なんか強くなったね」
ミオが言う。
「うん。
インクじゃなくて、心がね」
炎上は、怖い。
でも、逃げなかった。
だから今、
ちゃんと青春の真ん中に立ってる。
満員電車も、
コメント欄も、
全部ひっくるめて。
これが私の、バズった青春。