テラーノベル
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今でも思う。あの時お前が空のあの場所から落ちてこなければ、俺は守れるものすら守れなかったと。
今でも思う。あの時、翼が壊れて落ちてしまって、その時出会ったのがお兄ちゃんじゃなかったら、僕はお兄ちゃん達を誤解したままだったんじゃないかと。
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いつだったか、死んだ親がこんな事を言っていた。
「トリトン、こんな話を知ってるかい?空に浮かぶ天空国家には、鳥のような翼を持った人が空を飛んで暮らして居るんだ」 って。
「あーーーー…バカバカしい。なんで天空国家の人は翼持って飛べて俺らは飛べないわけ?カス!!」
肌を焼くような光を放つ太陽の下、水面を歩く青年は大声で愚痴を叫んだ。先程、鍛冶師の爺さんに頼まれて近くの街へ荷物を渡しに向かわされた。重い荷物を持ち、天空に浮かぶ大きい島〈天空国家〉を見上げため息をつく。
「なんで俺がこんな事手伝わんといけねぇんだ。」
「俺には関係ない事だろうが」
下を向き、自身が映るほど凪いでいる水面を見てブツブツと文句を言いつつ歩を進める。
ふと、水面に影が見えた。最初は鳥かなにかかと思ったが影は段々と大きくなる。恐る恐る上を見る。なんだ?何かが落ちてきている。よくよく目を凝らす。人だ。人が落ちてきてる。
火花を散らし、煙をあげた翼のようなものを背負った人だ。死んだ人が落ちてきたのか?このまま落ちればぺしゃんこになるだろう。なんて呑気なことを考えるが、すこし耳をすませば叫び声が聞こえる。生きてる人が落ちてきた。
青年は慌てて荷物を落として前に出た。音を立てて水に沈む荷物など気にせず、両手を出して落ちてきた人をキャッチする。しかしそれなりの高さから落ちてきたのだから、重さもそれなりにある。青年は人を抱えまま水に沈んでしまった。
しかし青年に焦りはなかった。 抱えた人は気絶してる様で、青年はそのまま水中を泳いで近くの水面から出た建物の一部に上がる。昔聞いたのだ、鳥の翼を着けた天空国家に住む人は水中で呼吸が出来ないと。当時はそんな訳ないと思っていたが…実際、水中を泳いでる際にその子は苦しそうにしていた。
「本当に存在してたんだな。鳥人間ってのは。」
独り言を呟きながら青年は落ちてきた子の脈拍や呼吸を丁寧に確認する。落ちてきた子と表現したのは、その子が明らかに少年の見た目だったからだ。
「なんだこいつひょろっちいな。鳥人間ってのはごっついものだと思ってたけど…」
落ちてきた子の頬を突っつく。明らかに嫌そうな表情を浮かべた子の顔や体を青年はまじまじと観察するように見る。金色の癖っ毛だ。まつ毛まで金色。自分の手足より細い手足。死んだサンゴのような白っぽい肌。もちもちほっぺ…は関係ないな。そして背中に着けている翼は破れたのか壊れたのか、内部が見えている。鳥の翼みたいなものが生えてるものかと思っていたがそんな事は無かった。壊れた翼を外しつつ、落ちてきた子を置いて水中に沈んだ部品達を取りに青年は水中に潜る。
水中は少しの光しか入ってこない程暗く、障害物が多い。崩れた昔の人が作ったっと言われている建築物が行く手を阻むがそれらを意に介さず、部品を探し、手に取る。ネジ、バネ、翼の1部、針金が中に入った動線、全部回収して水中をでて水面に立つ。
落ちてきた子を置いた場所を見ると、その子は目を覚ましていたようで叫び声を上げながら驚いた顔で周りを見渡していた。
「おい、ガキンチョ。起きて早々元気だな。頭が痛くなっても知らんぞ。」
その子に近寄りながら嫌味がちに言う。開いた口が塞がらないその子は、青年の足元を見たり顔を見たりと忙しなくしていた。
「すっ…すい…水面立ってる…んええ??………すごぉ……君って何者なの!?」
驚いたような、初めて見た物を見た時の感動のような、興味津々といったそんな様子でその子は青年に顔を近付ける。
何者なのか、なんて答えれば良いのか分からず黙っていると
「水中都市に住んでるっていう魚人ってやつなの!?魚ってやつみたいに鱗とかあるの?どうやって水面に立ってるの!?水中に入ったら魚になるって本当!?あっその前に自己紹介だよね!!僕は雲居っていうんだ。もう10歳なんだ!!お兄ちゃんはなんて名前なの?」
雲居という名の少年はグイグイと遠慮なく質問攻めをしてきた。
「おっ……俺はトリトン…16歳…だ。」
少年といえど、すごい圧と気迫で狼狽えてしまう。しかし魚人やら水中潜ったら魚になるやら鱗があるやら………あることないことを天空国家の人達は教えてるのか。
コメント
1件
わあ、めっちゃいい導入でした!「空から人が落ちてくる」って王道だけど、ちゃんと新しい匂いがする。 水中を歩けるトリトンと、翼が壊れて落ちてきた雲居。この対比がまず好き。「魚人」とか「鳥人間」っていう互いの偏見が、これからどう変わっていくんだろうってワクワクします。雲居くんの圧がすごい質問攻め、かわいかったなあ。 10歳と16歳の距離感がこれからどう縮まるのか、続きが気になります!