テラーノベル
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説明がめんどくさくなったトリトンは適当にはぐらかし、もう体は大丈夫だという雲居の手を引き水面を歩こうとする。雲居は怖がりつつも水面に足を乗せた。瞬間雲居の体が水中に沈む。慌ててトリトンは雲居を引き上げて抱き抱えた。
「おい!!お前水面歩けねぇのか!?」
なぜ自身のように水面を歩けないのか、分からないと言った様子で怒鳴ったトリトンに対し雲居は涙半分に応える。
「無理に決まってるよぉ。僕達水面歩けないもん……びっくりしたぁ……グスッ……」
トリトンは、泣きそうな雲居を怒鳴った事に罰が悪そうな顔を浮かべながら雲居を抱き直して、水面を悠々と歩く。
「怒鳴って悪かったな。俺の住んでる街までは水面歩くしかねぇんだ。そこまでは運んでやる。」
半泣き状態の雲居を運びつつ、鬱々とした気持ちで歩を進め、水中都市の一部である、「Puddle」へ向かった。
水中から顔を出している白と青が基調の個性的な建物達。奥に見えるは水面に建てられた市場。水上を歩く人々。水中には、天空国家では見ないような建物が沢山あった。雲居は初めて見る景色に目を見開き、口を開けたまま辺りを見渡していた。
町に着くと、周りの人々はチラチラと雲居の髪を困惑気味に見たり、トリトンを心配そうに見たりしていた。
「ねぇ…あの髪色って…」
「まさかトリトンの奴…」
遠くから困惑や怪訝な目で見ていた人々はコソコソと井戸端会議をしたり、変な噂話をしたりしていた。そんな中、
「おやおや、トリトン君、その子はどこの子だい?」
聞きなれたおっとりとした声が後ろからトリトンを呼び止めた。
「うるせぇな。別に関係ないだろ。」
トリトンはめんどくさそうに振り向き、声を発した人物を見る。
「そうかい。この髪色の子はそうそう見かけないねぇ。まさか天空国家の子かい?昔1度天空国家のお偉いさんを見たことがあってね……」
声の主は、双子の赤子を抱いた近所の婦人だった。婦人はニコニコと話を続けようとしたが、トリトンが憂鬱そうに
「はいはい、オバサンの天空国家のお偉いさんと昔恋に堕ちてたって話は何億回と聞いたよ。何回も聞かせんな。」
と、話に声をかぶせ強制的に終了させた。しかし、雲居はキラキラとした目で婦人を見つめて身を乗り出した。
「お姉さんも水中都市の人なの!?天空国家のお偉いさんってどんな見た目だった?そのお偉いさんってテレビとかに出たりしてた!?」
と、グイグイと質問を続けた。雲居の様子に婦人は嬉しそうに笑顔を浮かべ
「あらヤダ、アタシをお姉さん呼びだなんて、トリトン君も見習って欲しいわぁ。そうよ、アタシも水中都市の人さ。名前はソレイユよ。坊ちゃんみたいな綺麗な髪色で、そりゃもうそこらのむさ苦しい男みたいじゃなくて、まるで女性と男性の性別なんてないみたいなとても美しい見た目だったよ。でもてれびとやらはここには無いから知らないねぇ。あ、そうそう実はさ…」
話を続けたい婦人と好奇心旺盛な雲居、一晩くらい話しそうな勢いだったが
「もういいだろ!!!話終わりにしろよ!!」
眉をひそめて頭を抱えたトリトンの苦痛に満ちた声により、終了とされた。
婦人はトリトンの叫び声に観念したと言った様子で肩をすくめる。
「でもねぇトリトン。アンタ、鍛冶師の爺さんに荷物運ぶよう頼まれてたじゃないか。それはどうしたんだい?」
その言葉を聞き、トリトンは呆然とした後に段々と死にゆくサンゴのように顔色が青白くなった。その様子を見た雲居は首を傾げるが、婦人は苦笑いを浮かべた。
「その様子じゃ、やらかしたねアンタ。」
「俺、ジジィに殺されるかも…」
少し顔を俯かせてトリトンは絶望を呟いた。
「鍛冶師のおじいさん怖い人なの?……僕の翼とか直して貰えるようお願い出来ないかな……?」
恐る恐る、雲居はトリトンの顔色を伺いながら、翼の部品を取り出した。が、トリトンは意気消沈してるようで、代わりに婦人が口を開いた
「どうだろうねぇ…あの爺さんは長生きしてるし、物知りだから出来るかもしれないね。トリトン君、怒られるかもしれないけど、とりあえず行ってみな。アタシはこの子達に飯をやらんとだからね。お暇させてもらうよ。」
バシンッと婦人はトリトンの背中を強く叩き、さっさと市場の方向へ行ってしまった。叩かれた背中が痛いのか、これから雷爺さんに会うのが怖いのか、それともどちらもなのか分からないが、トリトンは涙目で心配する雲居を連れて町の奥へと進む事にした。
重い足取りで歩を進める。どんな仕打ちが待ってるのか。まさか作られた装置の実験体にでもされるかもしれない。それか装置の部品の材料を取らせに行くのかもしれない。トリトンの頭の中では嫌な妄想が膨らんでさらに足取りが重く、遅くなった。しかし、歩を進めて居るのだから目的地には着いてしまう。
その目的地である建物は、周りの建物より色が落ちていて古臭い。見た事もない多肉植物が建物のヒビからはえ、鍛治職場はブリキでできており外から丸見えだった。
雲居は先程の町の様子とは一転した見た目の建物を見て息を飲み込んだ。そして、当のトリトンは鬱々とした様子でドアに手をかけた。
「オイ小僧!!渡し荷物やら受け取り荷物やら差し置いて、また何ガキ拾っとんだバカタレ!!!オマエは猫拾ってきたガキか!?」
瞬間、内側からドアを開けられ、作業服を着た髭や髪がもじゃもじゃで不気味なじいさんの町中に響き渡りそうな怒鳴り声がトリトンと雲居に向かって叫び散らかした。
「……サーセンした。」
あまりの声の大きさに、耳がキーンとしたのか眉をひそめてトリトンは爺さんに深々と頭を下げた。雲居は翼の部品を握りしめて、驚いたまま固まり怒鳴り声をあげた爺さんをじっと見つめていた。恐る恐るトリトンは頭を上げ、爺さんを見る。
「言い訳していいか?」
「ダメじゃ。」
「いやさ、荷物ちゃんと運んでたんだよ。そしたらさ……」
「噂で聞いちょる。そのガキ、天空国家のガキじゃろ。元の場所に帰せ。」
「話最後まで聞けよ!!この老害!!」
「なんじゃと!?誰が小僧を世話してやっとると思っとるんじゃ!!」
何故か交渉から説得、そして喧嘩に発展してしまった
コメント
1件
うわぁ、トリトンが雲居くんを抱えて水面歩くシーン、すごく鮮明に浮かんだよ…!雲居くんがキラキラした目でソレイユさんに質問しまくるのも可愛かったし、トリトンの「死にゆくサンゴのように顔色が青白く」なるところ、笑っちゃったけどちょっと可哀想にもなった(笑)。老害呼ばわりするトリトンと爺さんの掛け合い、この世界観の空気感がすごく好きだなあ。次が気になるよ!