テラーノベル
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私の名前はメメ・クローデル。幽霊屋敷に住む、令嬢である。幽霊屋敷、というのは他称ではあるものの、その漆黒の城に、青白いランタンの灯りはそう呼ばれても無理は無い。それに、私の屋敷には人間はもちろんのこと、人外たちが住み着いている。そういうところも幽霊屋敷と呼ばれる由縁だろうと私は考えている。なぜ、人外達が住みついているのか。それはそいつらが勝手に住みついているのである。追い払おうにもひ弱な私にはそんなことは出来ない。それに、両親はずっと前に亡くなり、この屋敷の正式な主は私一人だけ。つまり、私の一存によって、この屋敷は成り立っている。生活が成り立っているのは、そいつらのおかげでもあるため、特別に許可してやっている。
「メメ様。朝ごはんですよ。」
ドアをノックしたあと、そう侍女のレイラーが言う。彼女の種族は魔女であり、いくつもの魔法を使うことが出来る。例えば、買ってきたばかりのジュースも氷魔法で簡単に冷やせてしまう。万能な侍女である。生まれた時からずっと傍におり、今ではかけがえのない親友のようなものである。
「ふあ〜。おはよう、レイラー。今日の朝ごはんは?」
「とりたての卵を用いたオムレツです。今ならば出来たてですよ。」
「それは魅力的ね。早く行きましょ。」
「あ!お着替えが───」
「そんなもの後でいいですよ!早く食べちゃいましょ!」
「仰せのままに。」
そんな会話をしつつ、私はレッドカーペットを踏みつけ、階段を勢いよくかけおり、リビングへと向かう。
そこには既にほとんどみんなが集合していた。
「ガン兄働きすぎ〜休みなよ」
「メテ兄もちゃんと休んでよ!どっちも働きすぎなの!これ以上やるならダークも黙ってないよ!ね!」
「はぁ…。ぐさおが許さないなら、私も許せないですから。剣を抜くしかないみたいですね…。」
「ちょ!?休む!休むから!ダークのはシャレにならないから!」
「私も後で休みますよ。患者さんに迷惑をかけてしまいますから。」
「それがいいですよ。ガンマス様が居なくなられると皆様困られますからね!」
リビングの隅で喧嘩していたそこの4人はこの館では珍しい、4兄弟である。長兄ガンマス、次男メテヲ、双子のぐさおとダーク。それと、椎名である。漏れなく全員人間であり、ガンマスは医者を、メテヲは研究者、ぐさおは家政婦、ダークは護衛、椎名は看護師として、この館に雇われたものたちである。こんな喧嘩をしているが、仲はよく、よくそこの5人でお菓子をかけて争っている。
「ウパ〜そっち運んで!」
「言われなくても!」
キッチンでは威勢の良い声が聞こえる。そこの2人はラテとウパ。一蓮托生、とでも言うようによく二人でいることが多い。長年の親友らしく、そのコンビネーションは目を見張るものがある。そこで、料理担当として、仕方がなく住まわせてあげている。ラテは獣人であり、犬耳が生えている。ウパはウーパールーパーと人間のハーフらしく、水陸どっちでも生活出来る、というのが自慢らしい。最近は触覚をラテに可愛くしてもらった、と自慢していた。
「メメさん!庭の手入れ終わりました!」
「ちょッ茶子!様をちゃんとつけなさいって…。」
「あーたしかに!メメ様!お仕事完了しました!」
「ん、お疲れ様。」
そう言って、外で手を振りながらこちらに近づいてきたのは茶子と菓子。2人は姉妹であり、どちらも妖精なんだとか。普段は私と同じくらいの大きさだが、本来は花と同じくらいの大きさらしい。最近は、庭の手入れをする代わりに食事を〜!と言われたので正式に雇っている。
「あ、レイラー!遅いですよ〜。オムレツ、冷えちゃいますよ。」
「メメ様が中々起きなくて…。」
「そ、それなら仕方がない…ですかね?メメ様。おはようございます。冷めきっちゃう前に食べてくださいねー。」
「はいはい、分かってますよ。」
そう言いながら私は自身の椅子に座る。この子はみぞれ。レイラーと同じく侍女として雇った子である。レイラーと違って生まれつき一緒、という訳ではなく両親がなくなってしまった時にお祖母様が心配だから、と本邸からいらしたお世話係さんである。子供扱いされているのは心外だが、ここは割り切って子供でいてあげている。
「へいヘーイ!メメ様!害虫退治終わりましたよー!」
「ちょっ!ひな!お食事中にそういう話は…。すみません、ひなが…。」
「大丈夫ですよ。引き続き報告お願いしますね。」
「かしこまりましたー!えっと、Gが1匹この館に紛れてたのですぐさま跡形もなく消しときましたよ!」
「よくやった!!」
「あ、ほんとに虫なんですよね。」
意気揚々と報告してきた子はひな。その隣で謝っていたのはルカである。2人は吸血鬼兄妹であり、私と同じく貴族であったが、2人の親の不祥事により、貴族権を剥奪されてしまった所を、私がメイド、執事として雇った。2人は主に害虫駆除や、護衛、門番などを任せている。
「メメ様〜?食事終わった?今日も今日とて空の旅行きますか?」
「後で行きます!今から食べるので待っててください!」
「ちょ!危険なのであれほどやめてくださいと…!!」
「八幡宮なら大丈夫ですよ。」
「なんの自信なんですかそれは!」
「その時は私が責任持ちますわー」
「当たり前ですよ!?」
そう言いながら笑うのは八幡宮。種族はドラゴンであり、飛ぶ時にその大きな翼を広げ、ゆうゆうと空をまう。普段は人間に擬態しているため、ドラゴンということが早々バレることは無い。
「お腹すきましたー!早く食べましょーよ!」
そう言って食事を催促してくるがめついのはぜんこぱす。通称ぜん。屋敷に迷い込んできた哀れな熊の獣人であり、当初民意で食べるかどうかを検討された子だ。今はもう我が強くなり、図太い神経の持ち主だ。
「そうしましょうかね。みなさーん!席に着いてください!ご飯食べますよ!」
そう私が一声かけると次々にみんな席に座り始める。今日も今日とて、私の正面の席以外満席である。全員が食卓に並ぶ時、少し思ってしまうのは何かが足りないような感覚。どこか、かけてしまったかのような。言葉にはしづらい違和感。それはなんだったか。
「メメ様。お食事の合図を。」
そうレイラーに言われ、はっと我に返る。そうだ。今から食事なのだ。私は直ぐに切りかえ、両手を合わせ、そして──────
「いただきます。」
「「いただきます!」」
そんな声と共に私たちは食事を始める。種族関係なく、毎度の如く騒ぎ立てる奴らには迷惑している。が、それもまた日常の1ページなのだろう。私は手元にあるオレンジジュースを口に含みながら、そんなことを考える。
──────いえもん視点
ぼーっと下界を眺める。寂しくなってしまった神界には誰一人いない。それどころか慕ってくれる天使も、イタズラをする悪魔も、仕事に忙しそうな神もいない。本当に、俺一人だけ。天使や悪魔はもはや妄想上の生き物だし、神だっていないと思うものの方が多い。そう、それで構わない。上の存在がいる、という事実は知らなくていい。ただ、幸せに過ごして、天寿をまっとうした時、また、平和な世界に送り返してあげるから。
俺は、ボロボロになったローブだったものを握る。長年の時のせいで繊維が解け、ボロボロとなってしまってなお、俺は手放すことが出来なかった。そこにだけは、俺の、俺たちの思い出が詰まっているから。俺は、その布切れになってしまったものに、保存の魔法を再度かける。直しはしない。そしたら、それは思い出じゃなくなるから。時を戻しはしない。俺の、頑張った成果を唯一刻んでくれるものだから。
俺は、幸せそうに笑う、みんなの笑顔を見る。
あそこに混ざれたら、どれだけ幸せなのか。もう、俺は幸せを味わえない。予想し難いものにこそ、幸せはつまっている。全てを理解した俺にはそんなものはなく、永遠に、不幸にも、幸せにもなれず、ただ、見守るのだ。
─────唯一の【神】として。
──────〜完〜
はい、皆様。完結しましたー!!いえーい!
長い間、もしかしたら1年もの間、ご愛読ありがとうございました!
当初、気軽な気持ちで話を書き始め、想像のいくままに、情報を上乗せし続けました(最初の10話目あたりの時に大体の設定決めてましたw)。
詳しいことは次回思いっきり語ります!この話の裏側的なやつですね!それと、要望が多ければハピエン作ります!ハートが多ければ多いほどいい!1万ハートいけ!(強欲すぎるやつ)
あ、この物語に登場した椎名ちゃんは元々この世界にいた子です!つまり!登場一切してないです!あ、ぜんさんの方もそうですね。名も無きモブに食われちゃった子です。
ハピエン寄りではあると思いますよ、この最終話。最初、全滅で行こうと思ってたので。でも、そこは主人公。見事!自身を犠牲にして、ハピエン1歩手前までいきました!お見事!
それでは!おつはる!
コメント
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泣きましたて… ……どれ過去進めないとな!!!
初コメです!完結おめでとうございます! 中盤辺りから見てました! せっかくの最終回なのでコメント…めっちゃドキドキしてます(^^;) それでですねぇ…私この小説の設定を似せて小説を書きたいんです 許可取りに来たのは勿論なのですが、少し問題が… 私基本的にぷりしょなんですよねぇ… ぷりしょの方で書きたいんです サイトが変わると駄目かなぁと思い… 良ければお返事ください
お疲れ様