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濡れた手の触れ合いは、性的な昂ぶりを否応なしに刺激する。ドキドキと高鳴る心音がバレてしまわないように、私は口を開いた。
「私、今まで『お姉さんだから』と、お姉さんらしく振る舞おうとしていました。立派な姉は取り乱してはいけない、常に冷静でいなくちゃって……ずっとそうやって過ごしてきたんです」
「それはとても立派だね。知佳らしいよ」
潤は微笑みながら、片方の手で私の水滴したたる前髪を愛おしげに整える。
「でも、それは表面だけなんです。取り繕うことばかりが上手くなってしまった気がして……」
すうっと深呼吸をすると、浴室に広がっていたリンスのしっとりとした良い香りが胸に満ちた。
「そんな表面だけのクールさを変えたいんです。契約結婚を機に、素直な感情を出したい。潤には、本当の私を見てほしい」
──そして、変わった私を見てもらって、潤に『好きだ』と言いたい。
その言葉はまだ言えなくて、私は俯いてしまう。
胸元で水滴を浴びてより輝く、指輪を見つめながら続けた。
「そんな気持ちがあって……ごめんなさい。上手く伝えられた気がしませんけれど、とにかく、そう思っていて。それは私が魅力的になることとは言い難いというか、逆に要領が悪く見える可能性もあって、ですね……」
あれ、だんだん何を言っているか分からなくなってきた。
最後はしどろもどろになり、潤の手から自分の手を離して、胸元で意味もなく両手をモゾモゾとさせていると──
「分かった」
潤が短く呟いた。そう思った次の瞬間、私の体を後ろからぎゅっと抱きしめてきた。
「潤っ……?」
互いの濡れた肌はぴったりと吸い付くようで、いつもより高い密着感と潤の突飛な行動に驚いてしまう。
「知佳の気持ちを理解した上で言うよ。変わらなくていい」
耳元で響く彼の声は低く、どこか切羽詰まったような熱を帯びていた。
「それ以上、知佳が可愛く、素直になるなんて……俺が狂う」
「く、狂うだなんて……っ」
「本当だよ。大袈裟なんかじゃない。だからそのままで──いて。俺も素直な気持ちを言うと、今すぐに知佳を抱きたい」
背中に回った潤の手が、すりっと私の背骨を撫でた。いつかの快感を呼び起こされるような手付きに、お腹の奥がきゅんと疼く。
「んっ、そ、それは……」
「──知佳の許可がないと、俺は知佳を抱けない」
潤ははっきりと言い切ると、私を不意に抱き抱えて浴槽へと入った。
そして、ざぶりと広い浴槽の中を進んで私を浴槽の縁へと座らせ、彼はざぶっと湯の中に身を屈ませた。
湯が跳ねるたびに、私の鼓動も跳ねる。
背中に触れるしっとりと濡れたタイルの感触よりも、潤の予測のつかない行動や視線にドキッとする。
潤が浴槽に深く浸かったことで、彼の視線の先は自然と私の膝の高さ──その奥にある、秘所の位置になった。
潤の射抜くような視線から逃げるように、ぎゅっと硬く足を閉じると、ぱしゃっとお湯がまた跳ねる。
胸の先が、これから起こることに期待するように早くもツンと上を向き始めていたので、私は慌てて片手で隠した。
「じゅ、潤?」
今から何をするつもりなんだろう。
潤の頭が低い位置にあり、私に対して跪くような体勢になっているのだと気が付いて、胸の鼓動が加速していくばかりだった。
そのとき、潤がゆっくりと湯に浸かっていた私の左足首を掴み、そっと持ち上げた。そして、そのまま私の足の甲にちゅっとキスをした。
「っ!」
肌が濡れているせいか、それともこの体勢のせいか。
潤の口付けは、酷くぞくっとする感触だった。
浴室に湿った音が響いて、よりダイレクトに鼓膜へと伝わってくるせいかもしれない。
潤は、私の足をガラスの靴のように恭しく手に取ったまま、足の甲から足先へと肌を這うように唇を動かしていく。
「あっ、潤……。そんな、足だなんて汚いからっ……!」
空いていたもう片方の手を浴槽の縁へと伸ばし、掴む手にぎゅっと力を込める。
「知佳に汚いところなんてないよ。全てが愛おしいだけだ」
言葉は熱を帯びているのに潤の唇は冷静に、的確に下へと下がり──。
一瞬だけ私と視線を交わしたあと、静かに瞳を閉じた。
代わりにその端正な唇が開き、躊躇うことなく私の足の親指を口に含んだ。
にちゅっと、なんとも言えない淫らな音が浴室に響く。
「──ンッ、じ、潤ッ。足舐めちゃダメッ……!」
体をびくつかせ、言葉で制止を求めても、潤の舌の動きは止まらなかった。
潤は丹念に、舌先で転がすように親指を舐め、カリッと指の腹を甘噛みする。
その刺激に私が悶えると、皮膚の薄い指の間すら、じゅぷっと深く舐め上げた。
「へ、変な感じがするから、や、やめっ……」
足なんて性感帯ではないはずなのに、舌の柔らかな感触と、ぬるりとしたくすぐったさが脳を痺れさせる。
足を舐められるという背徳的な行為に、身体が敏感に反応してしまう。
潤から足を逃がそうともがいても、足首はガッチリと掴まれたままだ。
反対の足で刺激に耐えながら、お湯を跳ね上げさせるのが関の山だった。
じっくりと足を愛撫を続ける潤の姿に、お腹の奥がキュンと重く疼き始める。
「はぁ……んっ、く、すぐったい……! ぁんっ」
小指をちゅうっと強く吸われて、たまらず喘いでしまった。
息を乱せば、上半身はお湯に浸かっていないのに、足先から体温がぐんぐんと上がってくる。下がらない微熱のような感覚が、体の芯に灯り始める。
足をねぶる淫らな水音と、私がばしゃりとお湯を跳ねさせる音に、頭の芯がクラクラとしてしまいそうだ。
なのに潤は無言を守り、まるで甘露を舐めとるような淫らな舌の動きと、時折水滴が滴る長いまつ毛の向こうから、私の反応を楽しむかのような艶やかな視線を送ってくるだけ。
そんな光景に浴室内の空気はさらにじっとりと湿り気を帯びるようで、背中や首筋を滑り落ちる雫にすら、敏感に反応してしまいそうになる。
「んンッ……」
五指をゆっくりと深く咥え込まれ、足先から溶けてしまいそう。
いつしか潤の口内の熱と吸い上げられる圧迫感に心地よさを覚え、潤にしがみつきたくなったそのとき──。
潤の動きがピタリと止まった。
足首の戒めが解かれ、潤の唇が名残惜しそうに離れる。
「知佳……俺に抱かれたいって、言ってくれ」
「!」
まるでタイミングを計ったかのような、下から私を見上げる切ない物言いに、私は完全に潤に陥落した。
「──わ、私は、潤に抱かれたい、です」
考える間もなく、言葉を発していた。
「おいで、知佳。その全身にキスをしたい」
私を迎えるように両手を広げて微笑む潤。胸の鼓動は最高潮に達していた。
返事をすることなく、私はざぶんと浴槽へと身を沈め、潤の逞しい首元へと腕を絡ませる。
お湯がちゃぷん、ざばっと跳ねる音に混じって、互いの胸元にあるリングがカチンとぶつかる音がした。
そこからは、私が変わりたいとか悩んでいたことはすべて胸の奥に沈み込み──今はただ。
愛し愛されたいという気持ちだけが胸に広がり、お腹の奥から迫り来る情欲に突き動かされ、私たちは互いの唇を貪り始めるのだった──。
コメント
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おお、第17話読み終えたわ…!この2人の距離感がじわじわ縮まるの、たまらんね。特に「変わらなくていい」って言いながら潤が切羽詰まってる感じ、最高に刺さるわ。知佳が素直になろうとしてるのに、逆に潤の方が「狂う」って言っちゃうギャップがもう…。浴室の描写も湿度高くて、つい一緒に息止めちゃったよ。続きどうなるんだろう、気になる〜!🔥