私は鈴木芽依。友達に無理やり生徒会長に立候補させられた。こうして毎日図書室にいるのは演説内容を考えるためだ。そして,私の彼氏…榎煉もこうして私のために来てくれている。
「演説できそうか?」
「…まぁ,何とか。」
とは言ったものの用紙にはまだ名前しか書けていない。だいたい私は心から生徒会長になりたかったわけではない。押し付けられたのだ。だから目標とか,生徒のためにしたいことなんてない。
「大体,榎煉が生徒会長になればよかったじゃん。」
「…俺がなれると思うか?」
それはそうだ。榎煉は頭も割といいし,運動もできる。が,榎煉の最大の弱点と言えば生徒からの信頼がないこと。喧嘩ごとに巻き込まれやすい榎煉は生徒会長,ましてや生徒会のメンバーにはなれないのだ。
「…生徒会から目つけられてるしね。」
「あんな奴らほっとけばいい。」
「じゃあどうして私の事応援してくれるの?」
榎煉がそっぽを向いた。
「そりゃ,芽依がみんなから好かれたり,信頼されたりするのが嬉しい…から。」
「可愛いかよ。」
本当に猫みたいだな,榎煉って。
「…よし,目標見つけた。」
「何にしたんだ?」
「おっしえなーい!」
そして,私は榎煉を置いて図書室を出た。
ー演説当日ー
「では,生徒会長に立候補した鈴木芽依さんの演説です。」
壇上にあがり,マイクを自分の高さになるよう下げた。
「こ,この度せ,生徒会長に立候補した,鈴木芽依です。」
緊張してうまく話せない。それでもみんなは笑わずにつまらない演説を聞いてくれた。
「私が生徒会長に立候補した理由は一つです。…誰でも通うことのできる学校にしたい。それが私の立候補した理由です。」
私が会長に立候補した理由(目標)は榎煉が学校に毎日来てほしいから。喧嘩ばかりしている子だからと言って本当の心は分からない。私だって昔はああだった。とても,心の底から楽しいとは思えなかったから。
「___どんな生徒でも楽しく学校に通えるよう,私は一層努力したいです。以上です。ご清聴ありがとうございました。」
次は榎煉による応援演説だ。へんなこと言わないといいけど,榎煉ならやりかねない。
大きなざわめきの中,榎煉の演説は始まった。初めはごく普通の応援演説だった,のに…。
「鈴木さんは頭が悪く,運動ができないおっちょこちょいです。」
…。
「しかし,人に対する態度は私とは全く違い,聖女そのものです。英語の点数は毎回赤点,数学なんてみじんもできない。そんな人が人を助けるとき,萌えますよね。」
平然とした声で榎煉はそう言った。本当に私の事を応援しようとしているのか。私のダメなところばかり話している気がするのに,榎煉はまだ平然としている。だから私は後ろから睨み続けた。
「以上で演説を終わります。」
後ろを向いたときにもっとにらんでやった。
そして,何も悪いと思っていなかった榎煉を叱ってあげた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!