あれから数日が立った。もちろん,結果は惨敗。生徒会長の座は同じく3年,東勉君が勝ち取った。
「はぁ,あいつぜってぇぶっ殺してやる。」
「こら。…東さんの方が生徒会長にピッタリでしょ?」
「どこがだよ。」
相変わらず,榎煉はむしゃくしゃしている。まぁ,私のために(?)怒っているのなら嬉しい。
「芽依~。」
友達の深瀬優実《ふかせゆうみ》が私と榎煉しかいない図書室へ入ってきた。
榎煉は本棚の裏へ逃げた。
「芽依ほんっと可哀そう。あんなやつが応援弁士になって挙句の果てに変なこと言われるなんて。」
「いや,あの…。」
「それに用紙取られたりしたんでしょ!?ちょっと先生に言ってやり直しの選挙やってもらうようにお願いしてくる!」
「いや,だから…。」
優実が怒りながら図書室を出て行った。本当に嵐みたい。
「…。」
榎煉は小さいころからみんなに優しくて,みんなに慕われていた。同じ保育園や小学校の人がいたなら榎煉の優しさが伝えれた。でもここには同じ小学校の人はいない。
「ねぇ榎煉。榎煉はどうして私と同じ私立を受験したの?榎煉ならもっと良い中学に行けたのに。」
「…さぁ。」
「ちょっと何それ。」
それに榎煉が喧嘩ばかりし始めたのは私のせい。私が喧嘩好きで放課後に他の生徒と喧嘩していた時に榎煉が怒ってその子を殴った。そのせいで小学校では殺人鬼だと言われたりしていたけどそんなこと言っていたのはほんの数人だ。多くの子は榎煉を紳士だと思っている。
「なぁ芽依。…芽依はどうして喧嘩しなくなったんだ。口喧嘩も,殴り合いも好きだったじゃねぇか。」
「そうだね。」
昔は空手やボクシングをして鍛えて,それから喧嘩して。でもそれは単なる遊びであって力を見せつけるだけだった。そんな遊びをやめたのは榎煉が本気で怒ったあの日だ。それから榎煉みたいに勉強をし始めて,喧嘩人生とおさらばできるように私立を受験した。…結構ぎりぎりだったけどね。
「ねえ榎煉,私の家に行かない?」
「え,いいの?」
「もちろん!」
そして,私と榎煉は図書室を出た。
「久しぶりだね,榎煉が私の家に来るの。」
「ほんとにな。5年ぶりとかじゃね?」
「お父さん,居たら嫌だな…。」
その後,お喋りしながら自転車で私の家に向かった。本当は私は家が近いから歩きなんだけど榎煉が私を歩かせるわけにはいかないとか言って自転車を貸してくれた。
「うわ,お父さん居るのか…。」
「まぁいいよ。」
家の玄関を開ける。
「ただいまー。」
「…お邪魔します。」
靴を脱いで玄関から一番遠い部屋のドアを開ける。リビングには多分お母さんがいるであろうから。
「芽依,もう男ができたのか。」
「お母さんは?」
「買い物へ行った。で,榎煉,何かあった時芽依を守れるのか?」
「勿論。」
お父さんがいてほしくなかった理由。それはこうやってすぐに結婚の話になるから。
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