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これは私の見た夢の話。
目が覚めると私は古びた船の中にいた。見覚えのない場所。カビ臭い船内。一番躍りいたのは私の姿だった。たまたま近くにあった鏡を見ると私の姿は幼子へと変わっていた。
これはどうしたことかと考えていると、ギシギシと船のきしむ音に合わせ誰かの足音が聞こえてきた。そして近くの扉が開き一人の男が入ってきた。
「おや?。こんな場所に女の子一人いるなんていったいどうしたんだろう。」
私はその優しい声に心を奪われた。状況を伝えようと声を出そうとしたが背から漏れる音は声にならず空気が漏れるばかりだった。
「かわいそうに。声が出ないんだね。とりあえずここは暗いから外に出よう。」
男は私の手をとり外へと先導する。
出口が見えると日の光が差し込んできた。しかし私の体は日の光に拒否反応を起こすように痛みを与えた。
大丈夫?長い間暗い場所にいた影響かな?。それにしてもこんな場所に一人にしておくなんて誰がこんなひどいことを。」
男は私を気遣って日の光が届かない場所へ連れていった。
「ここなら大丈夫だ。僕はこの後やることがあるから帰らなきゃ。大丈夫だよ。また会いに来るよ。」
そういうと男は私を軽く抱き締めてからその場を後にした。
船には窓や時計がないためどれほど時間が流れたのかわからない。だけど男はちゃんと会いに来てくれた。
「やあ。元気にしていたかい?。」
声が出ない私は意思表示を示すためぴょんぴょんはねた。
「そうかそうか。今日はパンを持ってきたんだ。一緒に食べよう。」
私は男から渡されたパンを食べると上手く飲み込むのに時間がかかった。
「大丈夫?今度はもっと食べやすい物を持ってけるよ。」
男は私の頭を撫でた後ポケットからハーモニカを取り出し素敵な音楽を聞かせてくれた。
「どうかな?上手く吹けたかな?。」
私は静かにうなすまいた。
「そうか。それはよかった。」
男は色んな話を聞かせてくれた。郵便局で働いている話や生活が苦しい話。他にもたくさん。私は男を元気付けたくてさっき吹いてくれたあの曲を吹こうとしたが上手く吹けない。
「ひょっとして僕を励ましてくれてるのか?。お前は優しいね。」
男は私の下手くそな演奏でも嬉しそうに笑ってくれた。
「あっそろそろ仕事だから行かなきゃ。また会いに来るよ。」
それから貴方は毎日私に会いに来るようになった。私は気づけば貴方の事を心から愛していた。こんな幸せな時間がずっと続くと信じていた。
しかしそんなある日、私の体から黒い光が出るようになった。近くの鏡を見ると私の姿は醜いものになっていた。
日に日に私の姿は醜くなっていく。そして運命は私を嘲笑うように動き出す。
私の体はみるみる大きくなりとうとう船の天井を突き破る。私のめの先には私の姿に怯える人々と一人立ち尽くす貴方がいた。
貴方は大きくなった私を見ると近くに落ちていた船のマストで私へと振り下ろしながら叫んだ。
「この化け物め。ずっと騙していたのか?お前なんか嫌いだ。」
貴方の突き刺すような言葉は振り下ろされるマストよひも痛く私を深く突き刺した。初めて見た世界。眩しい太陽。青い空に広い海。世界はこんなにも美しいのに醜いのは私一人だけ。
目が覚めると私はベッドの上で寝ていた。どうやら悲しい夢を見ていたみたい。今もまだ悲しい夢の最後が頭に焼き付いているんだ。
太陽の光に焼かれながら彼女は悲しげな声で歌っていた。あの人が吹いてくれたあの歌を。