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夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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西原衣都
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猫塚ルイ

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そして、そのまま他の保育士たちの元へ向かう。
「今……外に知らない男の人がいて、希海くんに手招きを……」
息を整えながら状況を伝えると場の空気が一気に張り詰め、保育士たちの顔は青ざめていた。
「とりあえず、私と羽衣子先生で見回りをしましょう」
そう言って、ベテラン保育士の中郷 佐知子と羽衣子の二人が外へ出ることに。
「歩美先生と千草先生は子どもたちのことをお願いします」
室内に残る保育士、田仲 歩美と横川 千草の二人は子どもたちの不安を煽らないよう絵本を読んだりして気を逸らすことになった。
外へ出た佐知子と羽衣子は二手に分かれ、園の周囲を見回っていく。
住宅街の静けさの中、先程の男の姿はどこにも見当たらない。
警戒しながら歩いていた、その時だった。
「すみません」
羽衣子が背後から声を掛けられる。
突然のことに驚き、びくりと肩を揺らした羽衣子が振り返ると、そこに立っていたのは先程の男だった。
「……何か、ご用ですか?」
警戒を緩めずに問いかけると、男はじっと羽衣子を見つめて、
「貴方、吾妻 羽衣子さんですよね?」
「……え……?」
名前を言い当てられた瞬間、羽衣子の背筋が凍る。
(なんで……?)
目の前に居るのは会ったこともない相手なのに、どうして自分の名前を知っているのか。
怖くて言葉も出てこず、ただ立ち尽くすことしか出来ない羽衣子に男は意味深な微笑みを見せた、その時、
「羽衣子先生ー!」
遠くから佐知子の声と駆け寄ってくる足音が聞こえて来る。
その気配に気づいた男は特に焦る様子もないどころか、意味深な笑みを浮かべた後で背を向けて去っていった。
「羽衣子先生、大丈夫ですか?」
合流した佐知子に声をかけられた羽衣子ははっと我に返る。
「……あ、はい……」
返事はしたものの胸の奥はざわついたまま。
(……もしかして……)
そして、今さっきの出来後を踏まえ、ここ数日感じていた視線の原因は自分なのではないかと思った瞬間、強い恐怖が込み上げる。
「何かありました?」
「いえ……特には……」
ただ、確証は無いので断言出来ず、今さっきのことを佐知子に話すことが出来なかった羽衣子。
「……戻りましょうか」
「……はい」
結局その後怪しい気配も視線も感じることは無く、園児たちの保護者が次々に迎えに来る時間になったものの、羽衣子の中に生まれた恐怖心は消えなかった。
「さようなら、また明日ね」
羽衣子はいつも通り笑顔で手を振りながら園児たちを見送っていたが、その胸の奥には昼間の出来事が重く引っかかっていた。
やがて、最後の一人となった希海が不安そうに羽衣子の服の裾をぎゅっと掴む。
「せんせ、パパまだ?」
「もうすぐ来るよ」
言いながら優しく頭を撫でていると、ちょうど玄関の外から車の止まる音が聞こえ、顔を上げると昴が足早に門をくぐってくる。
「すみません、遅くなりました」
「いえ、大丈夫ですよ。お仕事お疲れさまです」
羽衣子が応じると、希海はぱっと表情を明るくして駆け出した。
「パパ!」
「待たせたな、希海」
自然な親子のやり取りに羽衣子はほっと息を吐く。
けれどその直後、昼間の出来事がふいに脳裏を過ぎり、
「あの……」
気づけば昴に声をかけていた。
「今日、少し気になることがあって……」
「気になること?」
「希海くんが園庭で遊んでいる時に……見知らぬ男性から柵越しに手招きをされていたんです」
昴の表情が微かに引き締まる。
「……それは、いつ頃ですか?」
「お昼前くらいです。すぐに気づいて離れさせたので、接触はありませんでしたが……」
その言葉に昴は小さく安堵すると、静かに頷いた。
「そうでしたか……なら良かった。このところ、この辺りでも不審者の情報が出ていると聞いています。先生方も不安でしょう」
「……そうですね……」
そう答えながらも羽衣子の脳裏に“あの男”の顔が鮮明に蘇る。
――「貴方、吾妻 羽衣子さんですよね?」
思い出して背筋が粟立ち、思わず肩が震えた。
「……吾妻先生?」
異変に気づいた昴が訝しげに覗き込む。
「何か、あったんですか?」
「……っ」
喉まで出かかった言葉を羽衣子は必死に飲み込んだ。
希海のこともあり昴は無関係ではないかもしれない。
けれど、ここで話すべきなのか判断がつかない。
それに、誰が聞いているか分からない場所で口にするには不安が大きすぎた。
羽衣子は視線を伏せたまま小さく首を振る。
「……いえ……大丈夫です。すみません……」
昴はその様子をじっと見つめた後、やがて静かに口を開いた。
「……吾妻先生、今日は何時までですか?」
「え……?」
唐突な問いに羽衣子は顔を上げる。
「……後……一時間くらいで終わります」
「そうですか」
少し考えるように間を置いてから昴は穏やかに言った。
「もし宜しければこの後、三人で食事でもどうですか」
「え……」
予想外の誘いに羽衣子は戸惑いを隠せない。
(園の外で特定の保護者や園児と一緒にいるところを見られたら……)
そんな保育士としての立場が頭を過ぎり、なかなか返事を返せない。
その迷いを察したのか昴はすぐに言葉を重ねた。
コメント
1件
おお、第7話読んだわ!不審者問題が一気に羽衣子先生本人に迫ってきてて、背筋が冷えた…。「吾妻 羽衣子さんですよね?」って名前を言い当てられた瞬間の描写、めっちゃ怖かった。保育園の日常と非日常の境界線がじわじわ侵食されてる感じがたまらん。昴さんが食事に誘うところで終わったのも気になる…!続きが待ち遠しい🔥