テラーノベル
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俺は、今、子供を誘拐している。
俺は誘拐した子供の母親に電話をかけた。
「もしもし」
「お前の子供を誘拐した」
「そんな……」
「返してほしければ1000万円用意しろ」
「1000万円ですか?」
「そうだ」
「そんなの無理ですよ。100円にしてください」
「小学生の小遣いじゃねえんだぞ!」
「でも1000万円なんて払えませんよ」
「いいから用意しろ!」
「ところで、あなたは何で誘拐なんてやっているんですか?」
「話すわけねえだろ」
「まあまあ。知らない人だから話せることもありますよ」
「まあまあじゃねえ!」
俺はなぜか、この母親に自分の人生を話していた。
「会社をクビになって、彼女には別の男と付き合うからって別れを切り出されて……その別の男が会社の上司で……自暴自棄になって風俗に通い詰めて、100万円くらい借りて……それから利子がどんどん膨らんで、返せなくなったんだよ」」
「それで、理由は何ですか?」
「だから今話しただろ!」
「よく分かりません」
「とにかく1000万円用意しろ!」
「分かりました。1000万円分のクーポンをご用意します」
「はっ! ダメに決まってるだろ! 1000万円現金で用意しろ!」
「貯金がないので、1000万円は用意できません」
「ふざけんな! 借金してでも、肝臓でも売ってでも、何が何でも用意しろ!」
その時だった。
――ドン!
突然、部屋のドアが勢いよく開いた。
「動くな! 警察だ!」
「な、何で警察が!?」
俺は慌てて立ち上がった。
すると、電話の向こうから母親の声が聞こえた。
「あらかじめ警察に相談していたんです」
「は?」
「息子が帰ってこなかったので、心配になって警察に連絡していたんですよ」
「そんな……」
「そこへ、あなたから誘拐の電話がかかってきたんです」
俺は言葉を失った。
――つまり俺は、誘拐した子供の親に自分から電話をかけて、居場所を警察に教えたのだ。
「クソ……!」
俺は膝から崩れ落ちた。
「どんな理由があったとしても、罪は償ってください」
警察に腕を掴まれながら、俺は歯を食いしばった。
すると、電話の向こうから母親が言った。
「あの……」
「なんだよ……」
「最初に100円にしてほしいって言ってましたよね?」
「……ああ」
「じゃあ、100円あげるので、元気出してください」
「……」
俺はしばらく黙った。
「いらねえよ」
1000万円を要求した男に、最後に残ったのは100円だった。
コメント
1件
あ、読んだ読んだ! 「誘拐」第2話…珍妙な掛け合いとラストの切なさが沁みたよ🥀 最初は「100円にしてください」ってクーポン提示とか、あまりにも斜め上すぎてクスッときたんだけど、犯人の自己破壊的な背景がポロッと出てくるところで一気に空気が変わった。母親が警察に相談済みだったオチも納得の伏線回収。そして最後の「100円あげるので元気出してください」…この一言だけで、この母親って絶対に本物の優しさを持ってる人なんだなって伝わってくる。 重くなりすぎないユーモアと、人間の弱さをちゃんと描くバランス、めちゃくちゃ好きです。 続きが読みたい……次はどうなるんだろう🤍