夜の森の中、暗く静かな森の中。
唯一の光源は、生い茂った木々の隙間から落ちる月光だけであり、
聞こえる音も、虫の音や風に揺られる木々達が微かに揺れるものだけである。
そんな山の中に、ライトの光と一つの足音が響いた。
その光と足音の持ち主はまだ年若い、少年と言ってもいいだろう人物だった。
少年は、森の中の申し訳程度に作られた細い道ーーーハイキングコースを淡々と進んでいく。
そしてしばらく歩いた後、足を止めて真横に続く本当によく見ないと分からない分かれ道と、その先にある塗装の剥げかかった通行禁止のバリケードを照らした。
「…ここか?」
彼は一言呟いた後、そのまま分かれ道を曲がり、立ち入り禁止のバリケードも通り過ぎてずんずんと森の奥へ進んでいく。
進んで、進んで、進んで… そして、突然あたりの音が全て消えた。
虫の声も、木々の揺れる音も、風も止んでいる様だ。
一瞬、手に持っていた懐中電灯の光が大きく揺らいだ気がした、
そんな、明らかに普通では無い状況が起こったのに、彼はとくに足を止めることなく歩き続ける。
どんどん、どんどん、進んで、進んで。
だんだん歩いてゆくにつれて、腐臭が漂って来た。
そのまましばらく先へ向かうと、そこには1匹の猪の死骸が転がっており、腐っていた。
それは虫がたかっていたり、ウジが湧いていたりせず、ただ腐っているだけと言うおかしな死骸だった。
そして、一体だけではなく、よく見れば、周りに腐り具合こそ違う同物が何体も転がっている。
「うへぇ…地獄絵図だなぁ…鼻栓がほしい。」
少年は顔を歪めながらあたりの光景を薄目で見て、辺りを探索し始めた。
コメント
3件