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「ごめんなさいね!長い間ほったらかしにしちゃって、」
「いや本当だよ、何時間待たせんのー?もう寝過ぎて目がバキバキなんすけど」
あの後私は大人しく眠りにつき、次に目を覚ましたのは夕方
まだ女性が来る気配は無さそうだったので、とりあえず二度寝を決め込んだ
しかし次に目が覚めても女性は来ず、寝るに寝られない為女性が来るまで起きていた
「本当にごめんなさい!お腹空いたでしょう?夕飯持ってきたから食べて!」
「えまじ?いやぁ、なんかすいませんね」
女性は布団の上に小さい机のような物を置き
そこには白米に味噌汁、煮物や焼き魚があった
「、そういや、アンタ名前は?」
「私?私は夜斗奏!貴方は?」
「色葉。奏な、んじゃあ呼び捨てで呼ばせてもらうわ」
「、!うん、よろしくね色葉ちゃん!」
モグモグと煮物を咀嚼しながらそう言うと、奏は嬉しそうに頬を赤らめて笑った
「そういえば、色葉ちゃんの格好って変わってるよね」
「そうかぁ?別に普通だろ」
いやでも、この世界では普通ではないか
だってこの格好って多分、銀さんイメージしてるよね?
潜在意識の中のヲタクが出ちゃってるもん
「それに木刀って、何だかお侍さんみたいで格好いい!」
「えっ?えへへ、そ、そう?いやぁ照れるなぁ?」
私は後頭部をかきながらそう言うと、奏は寂しそうに俯いた
「私ね、本当は剣術を習ってたんだけど、どうしてもうまくいかなくて、」
「昔のお侍さんみたく、強くてかっこいい人になりたくて、」
「でも、女が剣術なんて変だって言われて、
それでも続けてたんだけど、怪我しちゃって、」
奏の手を見てみれば、そこには一の字に深く刻まれた手首
「だから、剣術をやめて、今はここの茶屋を経営してるんだけど、」
「どうしてもまた、思うの。強くなって、侍みたく刀を振いたいって、」
「、、、」
奏の膝上に置かれる握り拳を横目で見つつ、味噌汁を軽く啜った
「、侍ってぇのはな。刀がどうとか、剣術がどうとかで強さを決めてるんじゃねぇ」
「強さを決めるのは、ソイツの眼差しだ」
「眼差し?」
「あぁ。自分が本気で守りてぇモンを見極めている奴の目は鋭い。どんな刃よりもな」
「逆に、弱ぇ奴ってのは瞳がグラついてやがる。」
「ソイツは目先の利益だけで、守りてぇモンから逃げ出す。そういう奴ほど弱ぇ」
だからな。と私は言葉を紡ぎながら奏の頭に手を置き、ゆっくり口角を上げた
「お前の目は真っ直ぐ私を貫いているじゃねぇか。刀なんて握らずとも、お前は十分に強ぇよ」
「色葉ちゃん、」
「奏は十分立派な侍だよ。私が保証してやる」
私は奏にそう言い、再びご飯にありついた
「、うん、うんっ、!ありがとう、色葉ちゃん!」
奏は涙ぐみながらも、スッキリした顔で私に微笑みかけた
、銀魂知識は無駄じゃなかったー!!
「あ、あと明日の朝食にあずき付けてくんね?」
「?良いけど、何に使うの?」
「ご飯にぶっ掛けて食う。これがまたおはぎみたいでうめぇんだよ」
「へぇ、分かった!じゃあ明日から持ってくるね!」
「ん、助かるわ」
一回家で宇治銀時丼やってみたら意外に美味しかったから、それからはずっとやってんだよね
あと銀さんの好物は私の好物だから
その後食事が終わり、奏と少し談笑しているといつの間にか眠ってしまっていた
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「、本当に行っちゃうの?」
「おう。世話になったな」
その後あれから一ヶ月の月日が流れ、私は奏の看病のおかげで傷が完治する事が出来た
黒色の着物を半分だけ着て腰に木刀を差し込み、頭に笠を被った
「なんだか、寂しくなっちゃうな」
「、、、」
私は奏の寂しそうな表情を横目で見つめ、奏と身長を合わせる為に少し腰を屈めた
「んじゃあ、これだけ貰っていっても良いか?」
「え?」
奏の頭に手を乗せ、初日に二人で語り合った夜のように口角を上げた
「お前の苗字、これから私は夜斗色葉だ。
どれだけ離れようと、私達は繋がってる」
「もしなんかあったら、真っ先に名前を呼べ。すぐに駆けつけてやっから」
「色葉ちゃん、」
奏は目を見開きながらも、涙目で私に向けて微笑んだ
「あ、でも二日酔いん時は勘弁してね?多分動いた瞬間吐くから」
「えっ」
そうして、私は奏に見送られながら救済の旅へと出た
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「、、、」
色葉ちゃんの背を見送り、私は空を見上げた
彼女は不思議な人だった
どこかガサツで、けど人の本質を見抜いているようで、掴めない人だった
けど、少なくとも私は色葉ちゃんに救われた
「どうか、色葉ちゃんが無事に、ここへまた戻ってきますように」
その時は、彼女の好きな甘味を沢山用意して豪華な食事を並べよう
私は甘味を頬張る彼女の顔を想像しながら、店へと戻った
(イメージ画)