2人は朝早くから西に歩き始めた
少女は黄金の髪を一つに編み、また黒い布で頭を包んだ。
「もったいない‥」
この黄金の髪は日に当たれば人の目を射るほど美しく煌めくのに。
「こうでもしなきゃ後々面倒な事になる。」
憤然と言い返し、歩きだした。
「何でロウは西に行くの?」
「‥ちょっとな‥やらなければいけない事が在ってな‥。」
「ふ~ん‥。」
少女はそれ以上検索をしなかった。
けわしい山を抜けると、人が賑わいひしめき合う町が見えてきた。
「あれは?」
「ここは貿易の国、レティシア王国の王都ファンシーだ。
他の国と比べ遥かに貿易に長けている。」
「綺麗だなぁ~‥‥。」
少女は目を輝かせ山を降りていった。
町には幾つもの屋台が並び合い、広場では美しい衣装を着た
少女達がくるくると躍り回り、食欲を刺激する良い匂いが漂ってくる。
「うわぁ~!」
少女は初めて見る世界の町にすっかり心を奪われているようだ。
あちこち動き周り観察していると、少女の腹が鳴った。男も手を打った。
「どれ、腹ごしらえをしていくか。」
男は銀貨を出し、焼き鳥とじゃが芋のスープを2つずつと
最後に葡萄酒を頼んだ。
すると
「俺もちょうだい。」
「おい‥子供が飲むものじゃないぞ?」
「何でも楽しんだもの勝ちさ。」
厨房が混んでいた様で出てくるまで時間がかかった。
すると後ろで知り合いらしき2人が立ち話をしていた。
「こんにちは、いや~今日はええ天気ですね~。」
「まったくです。こりゃ良い野菜が出来ますわ。」
すると1人が辺りを見渡し、声を低くした。
「王子様はどうかさったんかね?」
男の体がピクリと動いた。少女はこの動きを見逃さなかったが、
黙って後ろの話に耳を傾けていた。
「どうしたもこうしたも、兄王子に追い出されて、一人で逃げ切って
今は消息が分からず、兄王子が追っ手を出してるらしいんですわ。」
「あれま、追っ手までだしてるんですかぁ?」
「しかもその首には金貨二百枚が懸けられてるらしいんですわ。」
「金貨二百枚!?」
1人は目を剥いた
少女は首をかしげる
「金貨二百枚ってどれくらい?」
男は腕を組み、
「ざっと平民の一家が10年は暮らせるさ。」
「へー‥。」
また後ろの話に耳を澄ます
「だけども何でそんな事になったんでしたっけ?」
「ほら、弟王子が権力欲しさに先国王を殺したって
兄王子からいわれてたんだよ。」
「それはまた‥。」
「おかげで弟王子の味方の臣下は弟王子を逃がして、
兄王子に反逆罪とされて皆牢屋に閉じ込められたんだよ。」
1人が空を見上げ、ため息をついた。
「このレティシアが混沌から救われるのはいつなんかねぇ‥。」
そこまで話すと2人は別れを告げ、道の景色に溶け込んでいった。
「ねぇロウ‥その弟王子って‥_」
「はいよお待ち!!」
2人の前に威勢良く皿が置かれる。
「さぁ食べよう。」
男と少女は舌鼓を打ち、料理を租借し始めた。
焼き鳥は噛めばタレが溢れ出し、油が口一杯に広がり、
スープは程よく温かく疲れた体に染み渡った。
少女もその味を気に入った様でスープを飲み物の様に流し込み、
焼き鳥を夢中で口に頬張っている。
男はそんな姿が初めて可愛らしいと思った。
剣を持たせれば鬼神となる子供だが、やはり根は少女なのだ。
「そんなに焦らなくても、料理は逃げないぞ?」
「食えるときに食わなくちゃ!」
なんとも獣じみた返答に男は吹き出した。
そして後からきた葡萄酒を口の中に流し込む。
少女はしばらく葡萄酒を見つめて一気に煽った。
「どうだ?」
少女は目を輝かせおかわりを頼んだ
「悪くない、飲みやすい味だよ。」
「それは何より。」
しばらく葡萄酒を堪能した少女は男を見つめた。
「これからどこに行くの?」
「そうさな、やはり首都ファンシーの中心に向かわなければならない。」
「行けるの?」
「いや、身分を証明できる物が必要だ。」
「だけど持ってない?」
「その通り。」
「だとしたらやっぱり‥」
男と少女は顔を見合せにんまりと笑う。
「抜け道で行く。」
少女は最後の焼き鳥を口に放り込み、勢いよく立ち上がる。
「名案。」
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焼き鳥は旨い