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短くてすみません
男と少女は検査兵にばれない様に城の横を通りすぎ、川へ向かった。
川は意外なほど勢いが強く、一般人が泳げばたちまち流されてしまうだろう。
「これ、泳げる?」
「俺の住んでいた森の川の流れに比べれば、朝飯前さ。」
「以外だね、俺も一緒。」
2人が服を着たままさっさと泳ごうとした時
「ロウ!!右に避けろ!」
男はほぼ反射的にその言葉を聞き、右に避けた。
すると空を切りながら矢が男の左側に突き刺さった。
「!」
「まだ来るぞ!」
少女と男は無数の矢を避けながらようやく川を渡りきった。
城の方を見上げると何人かの兵が弓を構えながらこちらを見つめていた。
「ばれたか‥」
「やっぱりずるはいけないね。」
自分で名案と言っておきながらそんな事を言うので男は爆笑してしまった。
「さぁ、さっさと行こう。」
昼は少女が捌いた鳥を食べ、2人はぐっしょり濡れた体で山を登り始めた。
やがて夜になり、山の頂上付近で歩みを止め近くの株に腰掛け
ふたりはしばらく夜空を見上げていた。
「ロウ‥」
「なんだ?」
少女が何か言おうとした時。
「ほぉー!こりゃ良いカモがきたわ!」
突然茂みから声が聞こえてきた、少女と男は武器を素早く構えた
茂みから現れたのは、鉈を片手に持った40絡みの細い男だった。
「カモ?」
「親分!!今日は良いカモが来ましたぜぇ!!」
後ろの方に大声で呼び掛けると。
やはり40絡みの山賊らしき男達が20人ほど茂みから出てきた。
「ほほう!!こりゃあええ!!」
最後に50絡みのでっぷり太った山賊の親分らしき男が出てきた。
「おい男、小僧、ここを通りたくば有り金全部置いていけ!!
もし断った場合は‥」
手に持った鉈を舌舐めずりした
「この鉈の錆びとなってもらうわ。」
(はてさて‥)
男が困っていると
「ちょっと待ってくれ親分!!こいつ女だでよ!!」
「何!?」
途端に山賊の親分が荒いいきずかいで目を輝かせ少女へ駆け寄る。
「おい小僧、その布を解け!」
少女は舌打ちし、特に抵抗せず言われた通り布を解いた
すると夜の月明かりに照らされた少女の黄金の髪が暗闇に眩い光を放つ。
しかも幼子だとしてももう匂うような美しさは隠しきれない。
山賊達はもうよだれを垂らさんばかりに少女にいやらしい視線を向けた。
「こりゃあ良い!!おい男!!交通料はこの女と有り金全部だ!!」
山賊の親分は少女の腕を掴み引き寄せる。
「かわいいのぉ~。13か?今夜はたっぷりかわいがってやるわ。」
山賊の親分は舌舐めずりせんばかりに少女を荒っぽく撫で回す。
少女は何も抵抗しなかったが、あいにく目が笑ってない。
真っ赤な瞳の奥に冷たい危険な炎が静かに燃えている。
「もったいないな」
「何?」
男は挑発する様にため息をついた
「お前らにはその娘はもったいないと言ってるんだ下衆が。」
「なぁにぃ!?」
山賊達は男をぐるりと囲み、男に鉈を突きつけた。
「おい野郎共!!そいつを‥」
言い終わる前にいきなり視界が反転した。
山賊の親分は何が起きたか理解できずポカンと口を開けていた。
目の前に立っているのは、今夜たっぷりかわいがるはずの金髪の少女だ。
金髪の少女は自身の腕を撫でた
「おい」
「どうしてくれる?」
少女とは思えないような地の底から溢れだす声だった。
「まだ悪寒が収まらない。」
闇夜の中で血の様な真っ赤な瞳が猫の様に爛々と光っている。
髪は逆立ち、獣の様に唸りだしている。
山賊の親分は片切声をあげ逃げようとしたが少女がそれをさせなかった。
双剣を素早く引き抜き山賊の親分の足の健を斬り付け走れなくし、
転げたところを馬乗りした、山賊の親分は必死に命乞いをしたが
「俺はお前の様な奴は絶対に許さない。」
素早く剣を閃かせ顔面を八つ裂きにした。
少女は剣を引き抜き山賊達を睨み付ける。
「ばっ化物ー!!」
その言葉を聞いた少女は一瞬悲しそうな顔を見せた。
男も息を飲んだ
少女を黄金の炎が包み込んでいる。山賊達に牙を剥き
真っ赤な瞳は血の様に煌めき、まるで射殺さんばかりに鋭くひかっている、
がむしゃらに向かってくる山賊達をあしらい、斬り付けていった。
あるものは腕を斬られ、またあるものは脈をぱっくり斬られ即死なものも
空を切りながら飛んできた矢を片手でへし折り、代わりに剣を投げ、
一寸のずれもなく見事に額に命中させていた。
その時の少女はまるで嘲笑うかのように冷ややかに笑っていた。
男はこの時、理解した。
今目の前に居るのは少女ではない。
少女の姿を借りている「何か」だ。
男と少女は無事、山賊達を全員倒し、山を越えた。
朝日が昇ると同時に白銀の建物が輝いた。
「あれは?」
男は目を細め顔を苦痛に歪めた。
「レティシア王国のファンシー市が誇る王宮ルバーブ」
「ルバーブね‥」
「美しいだろう?」
「いや」
「?」
「俺には醜い人達に支配された、哀れな城に見える。」
男はポカンと口を開け、少女を見つめていた。
この少女はもう知っているのか?
そんな思いを胸に抱きつつ、少女と男はルバーブに向かった。