コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
追憶のマッチング
地下の静けさを破るように、遠くから足音が響いた。 金属の扉が開く音、無線の声、そして複数の足音が、確実にこちらへ向かっている。
手嶋はすぐに立ち上がり、吐夢の手を握った。
「見つかった。行くぞ」
吐夢は頷き、ふたりは暗い通路を走り出す。 地下鉄の廃線は複雑に入り組んでいて、道は狭く、足元は不安定だった。
「こっちに抜け道がある。昔、よく使っていたんだ」
吐夢の言葉に、手嶋は驚きながらも信じてついていく。
背後からは、警察の懐中電灯の光がちらつき始めていた。
「吐夢!手嶋!止まれ!」
声が響く。だが、ふたりは止まらない。
息を切らしながら、吐夢は古びた鉄扉を開ける。 その先には、狭い階段が続いていた。
「この先、地上に出られる。だけど…出口は人通りの多い場所だ。見つかる可能性も高い」
手嶋は吐夢の目を見て、静かに言った。
「それでも、行こう。君となら、どこへでも」
ふたりは階段を駆け上がる。 背後では、警察の足音が迫っていた。
地上に出ると、そこは早朝の商店街だった。 シャッターが半分開いた店、新聞を配る人、そして通勤途中の人々。
ふたりはフードを深くかぶり、人混みに紛れて歩き出す。 手嶋の手は、吐夢の手を離さなかった。
「次は…どこへ行く?」
吐夢が尋ねる。手嶋は、少しだけ笑って答えた。
「まだ決めてない。でも、君がいるなら、どこでもいい」