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「雪葵、紫葵くん起こしてきてあげて。朝ごはんだよって」
「はーい」
「ごめんね。あいつ寝起き悪くてさ」
「いえいえ」
寝起きが悪い紫葵くんも神です。神以上です。
「紫葵くん、朝ごはんです」
返事はない。ドア1枚挟んでいたら寝ている人に聞こえないか。
ノックをして、少しだけドアを開けた。
「紫葵くーん!朝ごはんです!」
返事はない。ここまで来ると死んでいないか心配になる。いや、紫葵くんは風邪をひいたことがないぐらい体が強いからありえないんだけど。
仕方なくドアを開けて、中に入った。
「え、名画?」
寝ている美人ほど美しいものはない。いや、私だったら口を開けてそれはもう酷いものになっていただろう。紫葵くんだから美しいのか、美しいから紫葵くんなのか。
とりあえず近くに行って名前を呼ぶ。少し唸ったが、起きなさそうなので、本当に(ファンの皆さんに)申し訳ないと思いながら、少し紫葵くんの体を揺らした。
「朝ごはんです!起きてください!」
「…せぇ」
「え?」
ダルそうに体を起こして、紫葵くんが顔を上げた。ものすごい険悪な顔で。
「うるせぇ」
一気に血の気が引く感覚がした。目の前の状況に困惑して、動けないし喋れもしなかった。
紫葵くんはそんな私を差し置いて、1階へと降りていった。少し経って、お母さんから名前を呼ばれてやっと足が動いた。
朝ごはんを食べているけど、味がしない。目の前に座っている紫葵くんは昨日とは違って表情筋がピクリともしていなかった。
朝だからかもしれないという期待を残して、私は朝ごはんを完食した。
歯を磨いて、リビングに行くと紫葵くんの姿が見えなかった。部屋に行った気配もしなかったし、どこかへ行ったのだろうか。
「雪葵ちゃんどうかした?」
「えっ、あー…いや。紫葵くんはどこに行ったのかなって…」
言った後に私ストーカーみたいだなと思った。別に家族が何をしていてもいいじゃないか。ここは紫葵くんの家なんだし。
「紫葵ならランニングのついでにごみ捨てにいったよ。小一時間は走ってくるかな」
「1時間!?」
努力家な推しも最高。家事を手伝う推しも最高。全て最高。
「ごめんね、雪葵ちゃん」
急にシゲルさんからそう言われ、困惑した。
「な、なんでシゲルさんが謝ってるんですか…?私謝られるようなこと…」
「紫葵のことだよ。昨日とは違って少し態度が…キツイというか、冷たいだろ?」
「そ…う、デスカ?」
そうですねと言いそうになって慌てて言い換えたが、なんだかぎこちなくなってしまった。シゲルさんも紫葵くんの態度を思っていたらしい。
「実は、仕事をしている時の紫葵は演技をしていてね。素はあんな感じで素っ気ないんだ」
そうか、あれが素なのか。私が紫葵くんのことを知らないって言ったから、気を張らずに済んだ結果があれなのだ。
そう思うと少し気が楽になった。嫌われている訳じゃない。たぶん。
「紫葵に、妹ができるって言ったらすごく嬉しそうにしていたんだ。だから、あんまり気にしないでね」
嫌われていなかった。良かった。
「どんな紫葵くんも紫葵くんです」
「君が紫葵の妹になってくれて良かった」
そう言って、シゲルさんは仕事へ行く準備をし始める。
嫌われている訳じゃないとわかって、少し落ち着いた。でも、なんで仕事をする時に演技するのだろう。塩対応が売りのモデルや俳優だっているのに。
知りたい。紫葵くんのことが。
コメント
1件
うわー、紫葵くんの素の姿、ギャップがすごいですね……! 「うるせぇ」の一言で雪葵ちゃんが凍りつく場面、読んでるこっちまでドキッとしました。でもシゲルさんが「仕事中は演技してる」って教えてくれたおかげで、ちゃんとフォローになってるのがいいな。どんな姿も推しは推し、って思える強さ、雪葵ちゃんにちょっと勇気をもらいました。そしてラストの「知りたい」——この一言で物語がグッと深まりましたね。続きがすごく気になります!
うあ
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#オリジナル
前世掃除機~眠れぬ民~
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#オリキャラ注意
mo4民のちい
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i4
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