テラーノベル
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濡れたコンクリートには、桜の花弁が大量に落ちていて、一枚一枚がどこか汚いように見える。
狭い道に入ると、ビニール傘が塀にぶつかって嫌な音を立てる。
そんなビニール傘も耐久性がなく、少しの風が吹けばすぐに裏返った。
ゆらは傘を半分閉じてから再度開いて対処した。
半分閉じる数秒の隙で、雨が当たって制服が濡れる。
普段は晴れよりも雨が好きなゆらも、流石に進級式に雨となると嫌なようだ。
元禄中学校に着き、ビニール傘を畳んで留め具でとめるのに少し苦戦した後、業務用傘立てに雑に入れる。
名前を書いていないから、どれがゆらの傘か忘れそうだ。
一昨日洗濯されたばかりの体育館シューズを履いて、人数分のパイプ椅子が設置された体育館へ向かった。
体育館の入口付近にいる教師から、A3のクラス名簿を貰う。
殻間ゆらの名前は二年二組にあった。
(うわ、御霊西鶴と同じだし…………あ、歌葉とも一緒だ。)
新しい出席番号の書かれた紙が後ろに貼られたパイプ椅子に座る。
五分後に西鶴と友人の女子達が体育館に来た。
小学生の頃から面子はあまり変わっていない。
「え〜、うちだけボッチじゃん。」
「というか、アイツと一緒とか最悪すぎでしょ。」
「プ……じゃなくて、大庭歌葉のこと何て呼んでたー?ソイツと同じになったんだけど。」
「大馬鹿だよ。西鶴ちゃんが発案したのに、自分が忘れてどーすんのさ。」
女子達はゆっくり別れて指定のパイプ椅子に着く。
(御霊、憑かれているな。歌葉を大馬鹿と呼びやがったことをアイツが忘れるはずがないし、プリキュアって言いかけた。御霊に憑いた妖精は歌葉がプリキュアだと思ってる?
早めに始末したいけど、ここだと目立つからできないな。)
進級式が始まる三分前に歌葉は姿を見せる。
名字の最初の平仮名からして、出席番号はゆらの前が歌葉だ。
パイプ椅子は出席番号順に並んでいるため、ゆらの目の前に歌葉が座る。
(歌葉がプリキュアと勘違いされている可能性があるから、守るために歌葉のことも見ておくか。御霊を見張って、人目のないところで中の妖精を倒すのが最優先だけど。)
もうすぐで式が始まるから、歌葉がゆらに話しかけることはなかった。
パイプ椅子の足を踏みながら、校長の長い話を適当に聞きながす。
進級式が終わって、新たな教室に入る。
教室の座席も出席番号順だが、歌葉は廊下側の一番後ろで、ゆらは縦列が二列目の一番前だった。
西鶴の席は二人とは少し離れたところだ。
二年用の教科書がたくさん配られ、後ろに氏名を書いて通学用鞄に入れる。
授業が始まるのは明日からなため、今日はこれで帰れる。
新担任が色々と話をした後、帰りの挨拶をする。
(放課後は妖精に憑かれた御霊が自由に動ける。御霊を尾行するか。鞄重っ……)
西鶴は早速歌葉の元へ向かった。
「ねー、大馬鹿?一緒にトイレ行こっか?」
「ごめん、無理だね〜。小便する用事があるから。」
「なら、なんで断るんだよ。お前に拒否権はないからねー。」
西鶴は歌葉を無理矢理引っ張って連れていく。
歌葉は満更でもなさそうだ。
西鶴が入ったのは、職員用トイレだった。
生徒用トイレと比べて個室は少ないが、それ以外は特に変わりはない。
「お前がプリキュアなのはシールドでバレバレなんだよ。オンプはお前が殺したんだろ!お前の所為で、死ぬほど苦しんだ……!」
憑依された西鶴は、歌葉に向けて光線を発射する。
「っ!?…………人間の……プライドの究極の立脚点は、あれにもこれにも死ぬほど苦しんだ事がある、と言い切れる自覚……だよ。というか、何この光……」
以前ゆらが張ったシールドによって、歌葉は光線から守られた。
「なんでプリキュアに変身しようとしないの!?まあいい、このシールドが守るのは妖精の力だけなんだろ。西鶴の肉体での攻撃なら……!」
西鶴は歌葉を蹴ろうとしたが、それは失敗に終わる。
ゆらが職員用トイレに来たからだ。
鞄からエテルノラジオを取り出してゆらはスイッチを押す。
「プリキュア!デイ·フェアヴァンドルング!」
視界がピンク色の空間に変わり、変身が行われようとする。
だが、外での時間経過のないはずの空間内に、妖精に憑依された西鶴が侵入した。
「変身してる途中に攻撃すればい……あぁアァぁ゙っ!?」
「残念、これは罠だ。」
『空間内の変身させる為のエネルギー』はプリキュア変身者以外の生物を瀕死に至らせる程危険である。
エネルギー自体を攻撃に転用させることはできないが、サマエルライフルの弾薬はそのエネルギーを使って作られている。
敢えて変身空間内に侵入できるようにさせることで、妖精を西鶴ごと瀕死にさせた。
(死亡させることはできないのか。というか、一度変身始めたら中断されないじゃん。)
「凌駕する桜桃の大審問官!キュアジェネシス!」
プリキュアになった姿を、歌葉にがっつり見られた。
「あ〜……少し遅れて、ごめん。」
「へぇ、ゆらちゃんすごく強いね!コイツは体育館のときから別人になってると思ってたんだ〜。この前の殺人事件や、多発する失踪事件も関係しているのかな?この姿、ダイヤぐらい耐久力あるよね。人間じゃないみたい!」
「今はバレないようにしたいから、声小さく。」
西鶴から出てきた全身火傷の妖精は、デフォルメの流星のような外見をしていた。
キュアジェネシスはエテルノラジオにチェスのキングの駒をさして、自身と歌葉を透明にする。
妖精の流星痕の一本をちぎって床に置き、残りの肉体は研究用にしまう。
「喜多川マンションまで透明化したまま送るから。」
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