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光貴の目から、絶望が見える。



「私みたいなひどい女のことは、愛したりせずに憎んで欲しい。それで、忘れてよ。大事にされても、私は光貴を何度でも裏切ってしまうし、もう、あなたの愛には応えることができない」



光貴のことを大事に思っていながら、ひどい裏切り行為をしてしまった。

私の罪は重い。



「もう、行くね」



一歩踏み出そうとした私を、光貴が引き留めた。「ドコへ行くんや! そんなこと赦せると思う?」


「だから離婚(わか)れて欲しいって…」


「離婚はしない!! 僕の方が付き合いも長いし、律を愛してる! そんなの、向こうはただのアソビやん。結婚もしている君のことをうまく誑かして、僕との家庭を崩壊させてるんやで? ホンキになるなよ! 目を覚ましてくれっ」



光貴が半狂乱で叫んだ。



私が過ごした地獄の時間に、博人のおかげで救われたことも、博人と恋に堕ちた瞬間も、ふたりきりで奏でた音も、彼と過ごした夢のような時間も、わたしのこの想いも、他の人間からすれば、ただのアソビに片づけられてしまうんだ。

まあ、そうだよね。夫を裏切って、他の男と蜜月の時間を過ごした私の話なんか、世間から見るとただの最低な不倫話。誰からも理解されることは無い。



光貴のために私が取った行動の様に、わかってもらえない。

相容れることはできない。



それでもいい。

博人だけがわかってくれたら、それでいい。



たとえ遊びであっても、この先博人に捨てられても、悔いはない。



それでも博人の傍に、私がいたい――




「別に、アソビでもいいの。たとえそのうち捨てられても、私は本気だから」


厳しい表情で淡々と告げる事に務めた。


「今、博人と過ごす時間が、私の全てなの。光貴のことは大事に思っていたけれど、でも…もうやり直せない。ほんとうに些細なことが、たくさん、たくさん積みあがってしまって、それが醜い不満になってしまって、どうしようもなくなってしまったの。この植木鉢みたいに、私等の仲はもうどうすることもできないよ」


私等の足元で崩れた植木鉢が今まさにこの状況を示唆している。

どう足掻いても修復することはできない。心の溝はもう埋めることはできない。



「勝手な女でごめんね」



頭を下げた時、ピンポーン、とインターフォンが鳴った。今度こそ博人が来た。


光貴をすり抜けて玄関の扉を開けようと一歩踏み出した途端、光貴に腕を掴まれ、ぐっと引き寄せられた。

抱きしめられた瞬間、脇腹に重い痛みが走った。

その拍子に彼の手から、アンティークショップで買ってプレゼントしたギターのオブジェの先が、床に転がり落ちた。




さっきまで玄関の棚の上で倒れていたこのオブジェが、いったいどうして……?



DESIRE -堕ちていく あなたに奪われる- ~この愛は、罪~【完結】

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