──「あなたたちはこの6人を超えなくてはなりません。
それではまず、火の学年トップ、シユラくんにパフォーマンスを見せていただきましょう」
シユラが、「【イール】」と言い植物を成長させると、ポピュアの子たちから悲鳴が上がった。
「きゃー!」、「え!?」、「やばっ」
「先生! シユラくんの手から血が出てます!」
「──あぁ、【イール】の説明してなかったわね」
メヒワ先生が話し出した。
「植物を成長させる方法は2つ。
《リベク》と唱え、太陽エネルギーを流す方法と、【イール】と唱え、血を流す方法です。
【成長】と唱え、血を流し成長する植物は、与えられた血を分解し成長したり、元素を生み出すことができます。
生み出したものは、血に含まれる情報により、血を与えた者の言葉に従います。
方法は違えど、プロンを必要とする植物とほとんど能力の差はありません。
──血を扱うことは危険なため、4年生になるまで本来は使用を認められません。
ですが、シユラくんはみんなと違ってプロンをあまり保有できない特異体質ですので、負担を減らすためにも、プロンの代わりに血を使うことが許可されています。
シユラくんが血を扱うことは、日常であり、何の心配もありません。
それでは改めて、火の学年トップの実力を見せていただきましょう。シユラくん」
──シユラはまた「【イール】」と唱えた。
すると手から血管のような赤い枝が生え、シユラの腕に絡みつくと、茎の先端にうずまき形の芽を付けた植物が、ブワッと成長した。
そして、「【ヴァル】」と唱え、うずまき形の芽から、魔法使いのように、火をボッと出した。
続けて、「【ヴァルキュア】」と唱え火を浮かし、
──「【ヴァルヴァノン】」と唱えその火を大きくした。
──そして、「【ヴァルオホエ】」と唱えると、大きくした火を曲げ、大中小の円を作り、重ね、浮く火の的が完成した。
そして、火の的をスーッと、遠くに移動させると、
「【ルカエラ】」と唱え、的にめがけて火でできた矢を放った。
ど真ん中を見事に撃ち抜くと、的は矢を吸収して火のクラゲになり、教室を浮遊しだした。
──メヒワ先生は、浮遊する火のクラゲに焦点を定め、「《ルヴシヤ》」と唱えた。
すると火のクラゲは、内から「ファー!」という音を出し消滅した。
──「素晴らしいパフォーマンスだったわ。火の試験頑張って──それでは次、ミル、よろしくね」
変わった形の帽子をかぶった少女『ミル』は、「はーい」と言うと、水植物を成長させ、水を操り始めた。
水で人型を作ると、「《メル》」と唱え、凍らし、氷のオブジェを作った。
ミルは、出来上がった氷のオブジェに手を向け「ジャジャーン。メヒワ先生」と言った。
「似てるー」と笑いながら拍手する子どもたち。
メヒワ先生は、子どもたちを静めようと、オブジェに向かって術を唱え始めた。
しかし、メルが先手を打ち、水を弾丸のように飛ばす術を使い、メヒワ先生が何かをするよりも先に、オブジェを粉々に砕いた。
気づくとメルは、先生から身を隠しており、メヒワは「ハァ」とため息をついた。
キラキラと氷の破片が舞う中、次にグオが呼ばれた。
グオは、風植物を扱い、氷の破片を含んだ竜巻を出現させると、その中に入り、自分を浮かせた。
──そして、光を放つ植物を成長させ、竜巻の中から光を当てた。
くるくると薄い光が回る竜巻の中、グオは下にいるぼくらにニヤッと笑った。
そんなグオを見てメヒワ先生は、「センスないわね」とボソっとつぶやいた。
──「降りてきなさい」
先生は仕切り直し、教室に立てかけてある大きな岩を動かすと、「この岩に穴を開けなさい」とグオに指示した。
グオが風を操り、その大きな岩に綺麗な穴を開けると、
メヒワ先生は、「みんな、グオに拍手」と言い、次の子を紹介した。
次に呼ばれたのは、シユラといつも一緒にいる、ヘッドバンドを付け、両目を半分隠した少年『ヘムル』。
彼は、カベ際にはえた芝を成長させ、教室を暗くした。
そして、毒植物を扱い、自身の体を発光させ、素早く横に動き《《分身》》を作り出した。
──「この技は、毒の知識だけでなく、ヘムルくんが持つ高い身体能力があってこそなせる技です」
次に呼ばれた子は、眠そうな目をした、センター分けの少年『ルドラ』。この子もシユラといつも一緒にいる子だ。
ルドラは、黄色い花冠をかぶった、人面植物を成長させると、顔に当てた。
そして、ポピュアに向かって「《ロォコエニカ》──《バーン》」と唱えた。
すると急に、リヨクの鼻の奥から、嗅いだこともない臭いが、ブワッと広がった。
「うっ」と鼻を抑えるリヨク。
周囲が「いい匂い…」、「みかんかな?」、「わたしはぶどうだと思う」と盛り上がる中、リヨクは1人うずくまっていた。
「どうしたんだ?」と、オウエンは心配そうにリヨクの肩を掴んで言った。
リヨクは、声を出すと吐くと思い喋れなかった。
(なにこの匂い……)
「おい、おい、だいじょーぶ?」とリヨクの肩を揺らすオウエン。
(やめてオウエン……吐く……)
しばらくすると臭いに慣れてきて、やっと喋れるようになった。
「ハァ……揺らしすぎ」
「リヨクなんで泣いてるんだ?」
オウエンは不思議そうに言った。
「オウエンは平気だったの?」
「平気?」
「においだよ」
「なんの匂いかわかないけど、おれはめっちゃいい匂いと思った」
リヨクは、教卓の前に立つ『ルドラ』と目が合った。
するとルドラは、リヨクを見てニヤッと笑みを浮かべた。
それから周りの子たちの会話を聞き、自分だけにくさい臭いを嗅がせたとわかったリヨクは、「っ」と舌打ちをしてルドラを睨んだ。
するとルドラはまたニッと笑った。
「あいつ…」
「リヨク、なんかいま怖い顔だぞ?」
リヨクは笑みを浮かべ続けるルドラを睨み続けた。
──「それでは、最後ね。成長の学年トップの実力を見ましょう。ハツくん」
ハツは、花の下にいた芽のような髪型の少年だ。
彼は、足元に手をかざし「《リベク》」と唱えた。
すると芝は、ハツの足にぐるぐると絡みつきながら成長し、やがて、体全体を覆い、芝のスーツが完成した。
ハツは、芝でできた足と腕をさらに伸ばし、塔の上部まで昇ると、両腕に絡みついた芝を地から離し、リヨクが開けた塔の天井穴を、芝で塞いだ。
──「これで、天井の修復も必要ないわね。
6人ともありがとう。さぁ、戻ってちょうだい」
ハツのパフォーマンスを目の当たりにしたリヨクは、劣化感を感じた。
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