テラーノベル
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鳴海さんを探して早四時間。あの人を追いかけるのは慣れていたはずが、最近の距離の縮まり具合に油断していた。あんなに全力疾走で逃げなくてもよかったのに。本当はあのまま、ウサギ耳つけた彼とデートが出来ると思っていたのに。
携帯に電話してもでないし、星野さんに聞いても分からないという。鳴海さんがいきそうなところは全て探しつくした。また、校内中を探そう。
あの人を見つけて何を誤解しているか問いたださなくては。そうでないと、あの人のそばにいられなくなると怖くなる。
下駄箱から再び校舎内に踏み入ろうとしたとき、携帯が鳴った。名前は星野とあって即座に出る。
「もしもし、鳴海さんいました?」
「俺だ、立川だ」
「……きるぞ」
「まぁ、聞け。石本の居所は言えんが、面白いもんが見れるだろうから、校庭の水槽のとこにいろ。そしたら、すぐに見つかる。じゃ、俺はこれから大翔とデートがあるからな」
きると言ったにも関わらず、立川から電話を切られた。なんだか、自慢をされた気がしてあいつの忠告を無視しようとも思ったが、鳴海さんのことで嘘をつく理由も思い当たらない。急いで水槽近くまでいった。
指定された水槽が、巨大といわれるのは納得がいく。面積も広ければ、高さも飛び込み台下にあるプール並みにデカイ。そこにコイや金魚などがはなされている。
釣りをしたい者は下の受付で金を払い、梯子で上の水槽の淵にまでいき、そこに組まれた足場に座って釣りが出来るようだ。毎年、この学校では目玉になる見世物を用意するときいたが、まぁ校長の趣味だと考えられる。
水槽付近を探すが、鳴海さんらしき人物は見当たらない。見当たらないが、生徒会と腕章をつけた男子生徒たちが花火を打ち上げる装置を持ってきて、設置し始めている。それを黙って見ていれば、周りにいる生徒たちが集まってきて何か騒ぎ出した。
「今年こそ、とれるといいな」
「彼女作りたいとかにしよう!」
「お前、頑張ってこいよ。行けるって!」
「あ、始まる!」
終了を告げる花火か。
なんで願い事がかなうのかと俺が首を傾げていると、生徒会長の異様にまつげの長い生徒が時計を秒読みしている。そしてカウントダウンが零になった瞬間、花火のスイッチが押された。
ドでかい音。歓声。校舎を超えた高さまで飛んだ花火玉は、いやそれは小さなパラシュート花火だった。それが、カサを開いてゆっくり落ちてくる。それをとるのが目的だったかと、俺が人ごみから外れた時。パラシュートは校舎の方へ飛ばされていく。
あぁ、このままいけば水槽におちるな……そんな予想をしながらパラシュートを目で追っていた時。校舎の三階、水槽が真下にある教室の窓が開いた。その窓からのぞくピンク色のウサギの着ぐるみの顔だけをかぶった人物。まっすぐパラシュートに視線をやっている。窓の柵に足をかけ、窓枠を手で掴んでいる。嫌な予感しかしない。
なんとなく、あんたがこの文化祭に参加した意味がわかったような気がする。俺は急いで水槽の梯子にかけより、係員の生徒を押しのけて急いで昇った。梯子を昇りきるのと、鳴海さんが窓からダイブしたのは同時だった。
時間が止まって見えるというのは、本当らしい。ただ、上から降ってくる彼に手を伸ばしていた。そして空中でパラシュートを掴み取り、そのまま水槽に落ちる姿がスローモーションで見えた。深いから怪我はないと分かっていながら、俺は半ば狂ったように名前を叫んでいた。
生徒たちの騒ぎたてる声も、遠くから駆けつける教師の足音もどうでもいい。ただ鳴海さんの名前を呼んで、水槽に飛び込もうとしたとき。近くの組み場から水しぶきの音と、黒い髪。そばに、ウサギの頭部だけが浮かんでいる。
「鳴海さん!」
彼に駆けより、手を伸ばす。俺に見つかった彼は子供がいたずらを見破られた時のような、申し訳ない顔で差し出した手を掴んだ。そしてひとこと。
「渉。これでお前の願い事、叶えろよ!」
満面の笑みで言われて気付いたが、俺たちの繋がった手の間には願いが叶うというパラシュートが握られていた。
「あんたって人は……」
子供のいたずらが成功したことに、つられて笑みを返していた。
ぬいぬい
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コメント
1件
もう、鳴海さんったら本当に突拍子もないことするんだから……! でも、ああやって渉くんのためにパラシュートを取ってあげる姿、ちゃんと彼なりの愛おしさを感じましたね。ウサギの着ぐるみの頭だけかぶって校舎からダイブするシーン、めちゃくちゃ印象に残りました。最後の「渉。これでお前の願い事、叶えろよ!」で、つられて笑う渉くんの気持ち、すごく分かります。思わずこちらまで温かい気持ちになりました。