ーーー翌日ーーー
ーー学校ーー
先生「よーし、これで帰りのHR終わります。夏休みまであと3日だが、気を抜かないように。」
生徒A「瞬、放課後カラオケいこーぜ。」
瞬「悪い、これからあいつのお見舞い。」
生徒A「そっか。じゃあ、また今度な。」
瞬「うん。楽しんで。」
先生「早川。これプリント。如月に渡しておいてくれ。あと、夏休みの宿題とか色々教えてやってな。」
瞬「はい。分かりました。」
瞬は病院へ向かい始める。
ーーー病室ーーー
コンコン
零「はい。」
瞬「俺だよ。プリントとか色々持って来た。」
零「瞬か。入って」
瞬「失礼しまーす。調子はどう?」
零「まだ、少し傷口が痛いけど元気。」
瞬「そうか。それならよかった。先生色々貰って来た。これ、プリント。これは夏休みの宿題の範囲。レポートとかあるからな。」
零「まじか…めっちゃ多いじゃん。」
瞬「そーだな。やっぱり、高校は多いなー。」
瞬「……」
零「……」
しばらく沈黙が続いた。
俺は昨日、メロンパンを買ったことを思い出した。
零「そーいえば、これ。メロンパン。瞬にもあげる。食べながら話そう。」
瞬「あ、ありがとう。無理して話さなくていいからな。」
瞬と俺はメロンパンを食べながら話した。
零「俺の両親が亡くなったのは9月27日。俺の誕生日だった…」
そこからあの日起こった事を俺は瞬に話した。
ーーー10年前ーーー
ーーー9月27日日曜日ーーー
俺はワクワクが止まらなかった。
零(幼少期)「ママ!パパ!早く行こうよ!」
父「そうだな。ケーキ買いに行こうか。」
母「そうだねぇ。何のケーキにするの?」
零(幼少期)「仮面ライダー!!」
母「そっか。じゃあ、行こうか!」
零(幼少期)「うん!」
父さんは医者、母さんは看護師と忙しい。休日も仕事をしている日が多い。俺は2人の仕事が終わる夕方まで待っていた。16時にケーキを買いにいく約束をしていた。3人で車に乗って行った。
ーーー車内ーーー
父「零ももう6歳か。早いものだな。」
母「そうねぇ。零は大きくなったら何になりたい?」
零(幼少期)「ヒーロー!仮面ライダーみたいなみんなを守れるヒーローになるんだ!」
父「ヒーローかぁ。じゃあ、強くないとな。」
母「みんなを守るなら、優しい心もないとね。」
零(幼少期)「僕、パパとママも守れる強くて優しいすごいヒーローになって、悪者をたくさん倒すんだ!」
父「いい夢だ。零ならなれるさ。」
母「でも、正義がいつでも正しいわけじゃないわよ。」
零(幼少期)「…?」
母「少し難しかったね。大人になったらわかるよ。」
父「もうすぐで着くぞ。」
ーーーショッピングモールーーー
父「それじゃあ、ケーキ買いに行こうか。」
それから、ケーキを買いに行った。
母「この仮面ライダーのケーキを1つください。」
店員「かしこまりました。プレートや蝋燭はお付けいたしますか?」
母「お願いします。」
店員「分かりました。では、お子様のお名前と年齢を教えていただけますか。」
母「零、自分で言ってごらん」
零(幼少期)「えっ、で、でも…」
俺は小さい頃は人見知りで恥ずかしがり屋だった。
父「ヒーローになるなら、自分の名前と年齢くらい言えないとな。」
零(幼少期)「れ、れいです。6歳です…(小声)」
母「そんな小さい声じゃ聞こえないよ。もっと大きい声で。ほら。」
俺は恥ずかしい気持ちを押し切って、大声で言った。
零(幼少期)「きさらぎれいです!6さいです!」
店員「零くん、お誕生日おめでとう!きっとヒーローになれるよ!」
零(幼少期)「あ、ありがとう!」
店員「30分後、またお越しください。」
母「はい。ありがとうございます。」
それから少しの間、外のベンチで過ごした。
父「零、サッカーは好きか?」
零(幼少期)「うん!僕サッカー大好き!」
この頃、よく幼稚園でサッカーをしていた。それを知っていた両親がプレゼントをくれた。
母「はい。零、これプレゼント。本当は家であげようと思ったんだけどね。」
箱を開けると、サッカーボールが入っていた。
零(幼少期)「ありがとう!僕、沢山練習する!パパ、ママ!ありがとう!」
その後近くの公園で、僕は3人でサッカーをした。
零(幼少期)「よーし、負けないぞー!」
しばらくの間遊んだ。
父「まだまだだな。ヒーローになるならもっと体力もつけないとな!」
そう父が言うと母が微笑んだ。
母「零。生まれて来てありがとうね。」
零(幼少期)「ママも、産んでくれてありがとう!」
母は泣きそうになっていた。ケーキを取りに行く時間になった。
父「そろそろ、ケーキ取りに行くか。」
零(幼少期)「うん!!」
3人でもう、一度ショッピングモールに戻った。
ーーーショッピングモールーーー
母「先ほど、ケーキをお願いした。如月です。」
店員「如月様ですね。お待ちしておりました。こちら、ケーキになります。お確かめください。」
店員さんがケーキを見せてくれた。
零(幼少期)「うわぁ〜!すごい!やったー!」
母「帰ったらみんなで食べよね。」
父「今日は、ママがご馳走を用意してくれるぞ。よかったな、零。」
母「遅くなるといけないから、早く帰ろっか。」
零(幼少期)「うん!お腹減った!」
僕たちが帰ろとしたとき悲鳴が聞こえた。
客「キャーーーーーー!火事だーーーーー!!」
驚く暇は無かった。目の前の階段が火の海だ。
人々は一斉に走り出した。叫び出すこども。混乱する親。目指すところ同じ。非常口だ。僕たちも非常口に向かったが、沢山の人で溢れていた。
客「おい、はやくどけよ!」
客「押すな!こっちは無理だ!」
客「通してください!死にたくない!」
とても、通れる状況じゃない。すると父が言った。
父「少し遠いが、もう一つ向こうに非常口がある。そっちに急ぐぞ!」
僕はパパに抱いてもらって、非常口に急いだ。
父「くそっ!もう、火がこんなところまで!」
非常階段の目の前まで火が迫っていた。
母が遠くにいる1人の女の子を見つけた。
母「ねぇ、あそこに女の子がいるわ!」
煙や火で顔はよく見えなかったけど、小学生ぐらいの女の子だ。母はその子の元に行った。
母「ねぇ!一緒に逃げましょう!」
女の子「……」
女の子は恐怖で体が震えていた。母は何も言わずにその子を抱いた。
父「急げ!!通れなくなるぞ!」
その時、母の横の木材が倒れて来た。
すぐに父が助けてに向かった。
父「母さん!今、助ける!」
母「私は大丈夫だから。この子を今すぐ助けて」
父「でも!」
母「いいから!死なせたくないの!」
その言葉を聞いた父は、涙を堪えて女の子を助けて、非常口に向かった。女の子は頭に酷い傷を負っていて、火傷もしていた。僕たち3人は長い長い階段を降りていった。非常口も近づいていた。
消防士「誰か居ませんかー!!!」
助けに来てくれた。僕は安心した。もう、意識も朦朧している。煙を吸い過ぎたみたいだ。僕は倒れた。
父「こっちに子ども2人!1人は酷い火傷と怪我をしてて、もう1人は一酸化炭素中毒!階段にいるぞ!」
僕たちは救急車で運ばれた。
ーーー病院ーーー
僕が目覚めたのは、1週間後だった。10月4日。
零(幼少期)「んっ…ここは…」
見知らぬ天井。体を動かすと痛みが走った。
零(幼少期)「いたっ…」
すると、扉が開いた。ガラガラ…
看護師「あっ!だめだよ。まだ動いちゃ。」
零(幼少期)「ここ、どこ…?」
看護師「病院だよ。れいくん、火事に巻き込まれて倒れちゃったんだよ。覚えてないかな。」
そうだ、僕、火事に…。僕は思い出した。
零(幼少期)「ねぇ!ママもパパは!どこにいるの!?」
看護師「…」
暗い顔をした看護師さんが、少し間を空けて言った。
看護師「あのね。れいくん。落ち着いて聞いてね。実はね、パパとママはもういないの。」
零(幼少期)「なんでっ!パパとママ助かったんでしょ!」
看護師「ううん…助からなかった。正確には助けられなかったの。」
零(幼少期)「どうして!どうして助けてくれなかったの!僕たちのことは助けてくれたのに…」
父さんはあの後、母さんを助けに行ったらしい。その後、助けに行ったがもう、その時には息をしていなかった。父さんは母さんを庇うように倒れていたと言う。
看護師「れいくん。ごめんね。」
と言うと、ネックレス、腕時計、サッカーボールを僕に渡した。
看護師「お父さんとお母さんのもの。ここにおいておくね。」
僕は何も言うことができなかった。ただ、黙ることしか出来ずにいた。
零(幼少期)「……」
その間、ずっとそばに居てくれた。
看護師「……」
何か言う訳でもなく、ただ何も言わずに手を握ってそばに居てくれた。
つづく
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