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不安と希望を胸に抱え、飛び出した。お父さんとお母さんに見守られながら見送られたぼく。春は終わりを告げて桜は散り、日光の温かみは初夏の始まりだった。旅を始めてみたはいいものの、少し疲れてきた。
「少し休憩しようかな」
そう思い、とある一軒家の小さな柿の木に留まった。
初めて翼をはためかせ、自らの身を宙に浮かせた感覚は達成感と興奮で寂しさなど忘れ去られるほどであった。ふと目を家の方へ向かせると生まれたばかりの小さなニンゲンと二人の大きなニンゲンがこの家には住んでいるようだ。小さなニンゲンは可愛げな服装をしていて女の子に見えた。
「あのニンゲンはぼくと同じ歳くらいかな?」
そう思ったけど、あのニンゲンはまだ自分で立てないようで、ぼくよりも成長していないように見える。
「それにしても他の家よりもこの家は他の家よりも大きいな」
この一軒家は少し他の家よりも大きい。庭には畑や木があり、いろいろな植物が植っている。
「この家にいたらずっとご飯を食べれるじゃないか」
そうも思えるような広い土地、丁寧にお手入れされた植物たち、畑には果実に引き寄せられたたくさんの虫も見える。畑の植物に隠れて今まで気づくことができなかったが、大きなニンゲンが植物のお手入れをしているようだ。このニンゲンは家の中にいるニンゲンとは違い、頭の毛が白かった。ずっと腰を曲げているので家の中の大きなニンゲンよりも小さかった。
初夏の温かい夕日に囲まれながら庭の小さな柿の木に留まり一階の窓を覗いた。