仁人side
とうとう遊びに行く日になった。
勇斗と付き合ってた頃はこんなのただ楽しみだったのに。
今は気まずくて仕方がない。話せるかも不安だ。
いつもより少し遅く家を出て、待ち合わせ場所に向かう。
待ち合わせ場所にはまだ誰も居なかった。
「ふぅ。」
そう深呼吸をしてメンバーを待っていた。
しばらくすると、足音が聞こえてきた。
誰だろうと振り向くと、佐野勇斗が立っていた。
「…あ、」
思わず声が出てしまった。
今いちばんふたりで会いたくない人。
『…おはよ』
少し気まずそうにしながらも、勇斗は喋りかけてきた。
そういえば、今まで通りにしようと話していたっけ。
「おはよ。」
俺は冷静に返しつつも、他のメンバーが来るまでどうしようと頭でずっと考えていた。
そんな事を思っているのも束の間。
俺と勇斗のスマホには3通のメール。
【ごめん、俺ら3人行けなくなった】
【今度埋め合わせするからごめんな】
【また行こうな】
そんな地獄みたいなメールが送られていた。
このメールを見た瞬間、これは作戦だったのかと気づいた。
そんな事はどうでも良くて、勇斗の反応だ。
『…っ、』
うん、すっごく気まずそう。
もう解散した方が良いのか…?
「…ねぇ」
勇気を振り絞って話しかける。
「…えと、どうする?きょうは解散する…?」
どうするかを勇斗に決めてもらおうと思い、解散しやすいように解散の選択肢も与えた。
俺的にはしっかりと話がしたいが。
『…せっかくだし行こ。』
え。今なんて言った?
良いのか?ほんとに良いのか?
元恋人だぞ?
「…え、あ、うん」
少し戸惑いながらも俺たちは少し距離を保って歩く。
どこへ行くのかは柔太朗たちが知っていたため、ふたりとも知らなかったが、勇斗が無言で歩きはじめる。
「ちょ、どこ行くの?」
そう聞いても返答はない。
早歩きで歩く勇斗に追いつくのに必死で下を見ておらず、足がもつれた。
やばい、転ぶ…!
とおもったら転ばなかった。
なんでだ、と思う間もなく、手に感触があり、勇斗が手を掴んでくれたからだと察した。
「…ありがとう」
そうお礼を言うと、勇斗は
『…ん。』
と言うだけ言って、手を繋ぎながら俺を引っ張っていく。
しばらくして着いたのは、俺らの初デートの場所。
水族館とかいつぶりだ。
そんな事を思いながら見ていると、勇斗が声をかけてきた。
『…なぁ仁人。』
「…なに?」
『…前はごめんな。八つ当たりして。』
俺は思わず は? と言いそうになるが、抑える。
「…笑 別にいいよ。気にしてないし。」
本当は気にしまくりだが、勇斗は気にしてなさげだから俺も気にしてないふりをする。
『…嘘だ。裾、握ってる。』
俺はどうやら嘘をつく時は裾を握るらしい。
『…俺、もう仁人を傷つけたくないんだよ。だから、本音を話して欲しい。』
手を握りながらそんな事を言われて。
俺はもう勇斗に恋しないと決めたのに。
「…俺、八つ当たりとかどうでもよかった。勇斗と一緒にいれるなら。」
『…うん。』
「正直、別れる時の勇斗が優しすぎて、もう二度と勇斗と一緒にいれなくなると思うと寂しかった…っ、」
と、勇斗に本音を明かした。
『…ごめんな。仁人。』
そんな勇斗がだいすきだった。
俺に八つ当たりしちゃうけどやっぱり優しくて。
心配してくれて。
「…いいよ、もう。どうにも思ってない。」
「俺は勇斗の近くにいられるならなんでもいい。」
「恋人に戻らなくたっていい。M!LKのメンバーのうちの一人でいい。」
いっそのこと、すべてさらけ出してしまおうと思ってることすべてを話した。
『…もう、恋人に戻りたくはない?』
『…俺、仁人が居ないと無理。心にぽかんと穴が空いたみたいな。』
そんなことを話された。
俺だって恋人に戻りたいし、心に穴が空いてる。
でも、恋人に戻ったら辛いのは勇斗。
「…今は、勇斗が心配。また恋人に戻って、勇斗がまた俺に八つ当たりしちゃったら…。」
「俺は気にしないよ。勇斗は優しいの知ってるから。でも、八つ当たりしてまた苦しくなるのは勇斗でしょ?」
「また、俺の事を想って別れる。その繰り返しじゃあ、意味が無いよ…」
俺は恋人に戻りたいとは言わなかった。
勇斗の重荷にはなりたくない。
俺が恋人になると勇斗の負担になってしまう。
俺に八つ当たりしてきていたのは、自分の事で精一杯なのに、俺の面倒まで見ていたから。
そんなの、ため息ついたり、冷たくなるのは当然だ。
『…仁人、?』
勇斗に呼ばれてはっとした。
『…なんで泣いてるの、』
その言葉に驚いて手で拭うと、冷たいキラキラ光った涙が落ちた。
「…なんでだろっ、笑」
そんなのとっくに分かってた。
理由なんて、1つしかないだろう。
「勇斗が好きすぎたんだ…、」
『仁人…っ、?』
「…俺、勇斗の負担になりたくない。」
泣きながらも思っていることをすべて伝えた。
「勇斗の負担になるくらいなら、恋人に戻らない。」
勇斗にとっては、厳しい言葉だったかもしれない。
でも、俺はそのくらい、M!LKに人生をかけてきた。そして、勇斗をいちばん大事にしたい。
『…そっか、笑』
『仁人は良い奴だね。』
勇斗の一言が脳に響き渡る。
『でも俺、もう八つ当たりしない。仁人に辛い思いさせないよ。』
「…何言ってんの、?本当に出来るなんて思わない。」
『出来る。俺には仁人が必要なんだよ。』
『仁人が居るから、M!LKはここまで来れてる。そして、佐野勇斗もここまで来たのは、仁人がいてくれたから。』
『仁人、お願い。俺もうひとりで抱え込まないから。抱え込んで仁人にぶつけたりしないから。』
『俺の人生のパートナーになってくれよ。』
最後の一言で俺は、決断した。
「…わかったよ。ただ、約束ね。辛くなったら、ちゃんと口にすること。俺に出来ることがあるならなんでもするから。」
「疲れた時は疲れたって言っていい。甘えたい時は甘えたっていい。勝手に、離れ離れになる道を選ばないで。」
『仁人…、』
『ありがとな。仁人も、いつでも甘えてきていいから。というか甘えて欲しい。』
俺は勇斗の負担になると心配していた。
でも、それはこれから勇斗が変えてくれそうだ。
これからもよろしく。佐野勇斗。
これからもよろしくな。吉田仁人。






