TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

俺は…俺は!!!!
「…はッ…はぁ…なんだ…よ」


身に覚えのある感覚。


たぶん目が覚めた。


「なんだったんだ…全部がグチャグチャだったぞ…」


…その瞬間俺は全てがグチャグチャだった理由に気付いた。


読者に話しかけたからだ。

全てが狂った。

時間も。

世界線も。

物語…も。

俺も。

ユウも。

ミオも。

アリウムも。

この世界も。

全部。


物語…

あぁ。全部物語か。

架空か。そうか。


…タイムスリップも…か。


今までのタイムスリップするトリガーは死ぬ事だった。


…今この瞬間も。

死ねばまた戻れるんだな…


「…よくわかんねーや。はは…」


よくわからない。

でもなんだか笑えた


ユウとミオ。

それにあの子と…

話したい。寂しい。


「…本当は俺、孤独だったんだな。」


あぁ。気付いてしまった。


気付きたくなかった。


ユウ…


その瞬間スマホが鳴った。


誰かから連絡が来た。


…来てしまった。


スマホの振動は、

短く、現実的だった。


夢の余韻を切り裂くには、

十分すぎるほど。


画面を見るまで、

指が動かなかった。


……分かっていた気がする。

誰からか。

何からか。


ゆっくり、ロックを解除する。


通知は一件。


通話でも、

DMでもない。


下書きの更新通知。



開いた瞬間、

胸の奥が、嫌な音を立てた。


文章が、そこにあった。


見覚えがある。

何度も書いて、

何度も消して、

何度も「存在してはいけない」と

判断したはずの文。


でも――

今は、完成している。



《保存日時:現在》



文面は、

途中から始まっていた。


「名前を呼ばれた瞬間、

世界は一つに定まる」


知らない一文なのに、

知っている感覚がある。



スクロールする。


そこには、

これまでの出来事が

順序を無視して並んでいた。


捕まるユウ。

転校してくるユウ。

笑うミオ。

消えかけるミオ。

紫色の花。

白に近い花。

アリウムという名前。


そして――

一行だけ、

空白がある。


本来、

名前が入るはずの場所。



息が、詰まる。


ここに書けば、

終わる。


書かなければ、

続く。



その時、

スマホがもう一度震えた。


今度は、

明確な通知。


着信。


画面には、

番号だけが表示されている。


登録されていない。

でも、

拒否する理由も見つからない。



出る。


耳に当てた瞬間、

ノイズが走る。


そして――

声。


重なって聞こえる。

一人じゃない。


ユウの声。

ミオの声。

聞き覚えのある、

まだ名前になっていない声。


その全部が、

同じタイミングで

同じ言葉を言った。



「……まだ、戻る?」



心臓が、

一度だけ強く打った。


戻る。

死ねば、戻る。

そう理解してしまった後だ。


だからこそ、

分かる。


これは、

選択じゃない。


確認だ。



スマホの画面が、

じわりと暗くなる。


下書きのカーソルが、

空白の行で

静かに点滅している。


名前を、

待っている。



世界は、

まだ崩れたままだ。


時間も、

過去も、

未来も、

全部が重なったまま。


でも、

ここだけは

異様に静かだった。



もし、

今ここで

名前を書いたら。


この物語は

一つの「現実」になる。


もし、

書かなければ。


ぐちゃぐちゃのまま、

続く。



スマホの向こうで、

誰かが息をしている。


待っている。


紫色のヒヤシンスが枯れ落ちた時に

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

16

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚