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俺は…俺は!!!!
「…はッ…はぁ…なんだ…よ」
身に覚えのある感覚。
たぶん目が覚めた。
「なんだったんだ…全部がグチャグチャだったぞ…」
…その瞬間俺は全てがグチャグチャだった理由に気付いた。
読者に話しかけたからだ。
全てが狂った。
時間も。
世界線も。
物語…も。
俺も。
ユウも。
ミオも。
アリウムも。
この世界も。
全部。
物語…
あぁ。全部物語か。
架空か。そうか。
…タイムスリップも…か。
今までのタイムスリップするトリガーは死ぬ事だった。
…今この瞬間も。
死ねばまた戻れるんだな…
「…よくわかんねーや。はは…」
よくわからない。
でもなんだか笑えた
ユウとミオ。
それにあの子と…
話したい。寂しい。
「…本当は俺、孤独だったんだな。」
あぁ。気付いてしまった。
気付きたくなかった。
ユウ…
その瞬間スマホが鳴った。
誰かから連絡が来た。
…来てしまった。
スマホの振動は、
短く、現実的だった。
夢の余韻を切り裂くには、
十分すぎるほど。
画面を見るまで、
指が動かなかった。
……分かっていた気がする。
誰からか。
何からか。
ゆっくり、ロックを解除する。
通知は一件。
通話でも、
DMでもない。
下書きの更新通知。
⸻
開いた瞬間、
胸の奥が、嫌な音を立てた。
文章が、そこにあった。
見覚えがある。
何度も書いて、
何度も消して、
何度も「存在してはいけない」と
判断したはずの文。
でも――
今は、完成している。
⸻
《保存日時:現在》
⸻
文面は、
途中から始まっていた。
「名前を呼ばれた瞬間、
世界は一つに定まる」
知らない一文なのに、
知っている感覚がある。
⸻
スクロールする。
そこには、
これまでの出来事が
順序を無視して並んでいた。
捕まるユウ。
転校してくるユウ。
笑うミオ。
消えかけるミオ。
紫色の花。
白に近い花。
アリウムという名前。
そして――
一行だけ、
空白がある。
本来、
名前が入るはずの場所。
⸻
息が、詰まる。
ここに書けば、
終わる。
書かなければ、
続く。
⸻
その時、
スマホがもう一度震えた。
今度は、
明確な通知。
着信。
画面には、
番号だけが表示されている。
登録されていない。
でも、
拒否する理由も見つからない。
⸻
出る。
耳に当てた瞬間、
ノイズが走る。
そして――
声。
重なって聞こえる。
一人じゃない。
ユウの声。
ミオの声。
聞き覚えのある、
まだ名前になっていない声。
その全部が、
同じタイミングで
同じ言葉を言った。
⸻
「……まだ、戻る?」
⸻
心臓が、
一度だけ強く打った。
戻る。
死ねば、戻る。
そう理解してしまった後だ。
だからこそ、
分かる。
これは、
選択じゃない。
確認だ。
⸻
スマホの画面が、
じわりと暗くなる。
下書きのカーソルが、
空白の行で
静かに点滅している。
名前を、
待っている。
⸻
世界は、
まだ崩れたままだ。
時間も、
過去も、
未来も、
全部が重なったまま。
でも、
ここだけは
異様に静かだった。
⸻
もし、
今ここで
名前を書いたら。
この物語は
一つの「現実」になる。
もし、
書かなければ。
ぐちゃぐちゃのまま、
続く。
⸻
スマホの向こうで、
誰かが息をしている。
待っている。