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ライラ からぴち・シクフォニ♡
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あー……まただ。いつきくんがこの笑い方をする時は、絶対に嘘をついている。朝もそうだった。ちらっといっちゃんを見たら、案の定、ちょっと複雑そうな顔をしている。そりゃ気になるよな、頑なに1人だったしゅうとの事、一瞬で完落ちさせた理由なんだから。
「いっちゃんってさ、本当にいつきくんのこと大好きだよね?」
「はあ!? 誰がだよ! 惚れてんのはいつきくんの方だし! はぁ? はぁ?」
「めっちゃ焦ってんじゃん、いっちゃん可愛い~」
「ちょ、りゅせ、やめなって!」
いっちゃんをいじり倒すりゅうせいの手を、俺は焦って引いて止めた。
だっていつきくんの顔、今にも爆発しそうなくらい真っ赤なんだもん。これ以上はやばいだろ。
「じゃ、俺ら帰るわ。そっちはいつも通り、いちゃついてくれていいから」
「え、ともや今から休憩しに行く?」
「だから! お前はそういうことばっかり考えるのやめろって!」
「……昨日、ともやの方からきたのによくそんなこと言えるね?」
「おおぉい!!!」
反射的に二人の顔を見たら、すっげぇ「スンッ……」とした無機質な目をして俺を見ていた。もう早く帰ろう。これ以上言われたら、マジで友達なくす。
「あ、あと俺っちの――」
「それ以上はダメ!!!」
りゅうせいが何を言おうとしてるのかわからないが、もう怖くて二人の顔なんて見られない。とりあえず自分の鞄とりゅうせいの手首を掴んで、逃げるように教室を出た。
「ねぇ、なんでそんなに怒ってんのぉ?」
「あんなの、友達の前で言うことじゃないだろ?!」
廊下で足を止めて向かい合うと、りゅうせいの奴、めっちゃ涙ぐんでんじゃん。
おいおい、泣きたいのは俺の方だぞ! 俺、絶対に悪くないよな!?
「……だって、両想いなのが嬉しいんだもん」
「それは……俺もそうだけどさ」
「……片想いしてたのずっと見てたから、いつきくんがいっちゃんと付き合えたのも嬉しいの。だから、みんなで一緒にいると嬉しくて、全部言いたくなっちゃうんだよ。……ごめんね」
「んんん~……許す! 可愛いから全部許す!!」
もうダメだ。俺、完全にりゅせにイカれてるわ。自分と同じ身長がある男の上目遣いに、こんなに骨抜きにされる日が来るなんて思ってもみなかった。
「……俺っち、ともやのそういうかっこいいとこ、好きだよ?」
「……どこがだよ」
本当、りゅうせいのツボがわからん。今のどこがかっこよかったんだ。ただ甘いだけだろ。
「……小さい時お化けから助けてくれたのも、かっこよかった」
「え?」
「……あの日から、ともやの匂いが大好きなんだ」
「ねぇ、おんぶ!」と急に背中に飛びかかってきた重みを受け止める。
その瞬間、ぼんやりとあの日――腰を抜かしたりゅうせいをおぶって歩いた遠い夏の記憶が蘇った気がした。
「……ねぇ、ともや。焦らなくていいからね? 俺、待てるから」
「……待てるって、なにを?」
俺が聞き返すと、りゅうせいは俺の首筋に顔を埋めて、クスクスと喉を鳴らした。
「……ともやの心が、準備できるまで」
「え……」
「……それとも、今日もう一回、ちゃんと、好きになれたか、確かめてみる?」
背中に伝わる体温と、耳元で弾ける悪戯な声。
夕暮れの帰り道。俺がこの苦難を乗り越えて、りゅうせいの期待に応えられる日は、そう遠くない。
今はただ、背中の温もりを噛み締めながら、一歩ずつ家路を急いだ。