数日が経った。
当然だが、明はまだ俺に怯えている。
病室の扉を開けるたび、あいつの肩がびくりと跳ねる。そのたびに胸が締めつけられた。
「今日も来たぞ」
できるだけ優しく、明るく。“親友”らしく振る舞うために。
けれど、その言葉にすら明は息を詰まらせる。
「あ、ありがとう……」
押し出すように漏れた小さな声。
窓の外から聞こえる小鳥の囀りに紛れて、すぐに消えてしまう。
俺の存在は、まだ恐怖の形なのだ。
それでも、離れない。
離れられるわけがない。
「今日はどんな話をしてほしい……?」
自分の声が震えていないか確かめながら、笑顔を作る。“好き”が見えてしまわないように。
俺の表情なんて気づかないまま、明はぽつりと言った。
「僕と君の……昔の思い出を聞きたいな」
その声音には、純粋な興味しかない。
悪気がないことなんて、誰より分かってる。
でもその言葉は、鋭い刃みたいに胸に突き刺さった。
――“恋人”だった思い出は、全部語れない。
「……そうだな」
笑ってみせる。
締めつけられる心臓をごまかしながら。
「俺たちは昔から仲がよくて……
いつも一緒にいたんだ」
本当は、手を繋いで、抱きしめ合って、キスをして、名前を呼ぶたびに愛を確かめて――
全部、語りたいことは“親友”なんかじゃ説明できない。
明は少し安心したように微笑む。
「そっか……よかった……。
君がそばにいてくれるなら……」
その言葉が、嬉しいのに苦しい。
守ってやれる。
そばにいられる。
だけど――
(俺の存在が、お前を怯えさせてる)
その真実だけは、どうしたって消えてくれない。
嘘を重ねるたびに…
明は救われて
俺は少しずつ壊れていく。
コメント
4件
叫びそう
明と博雅かな? その二人の関係性がめーーーっちゃ気になる!頑張ってくださーい🤩