南無さんは、いつもそうだ。
「おい港、この任務はお前じゃないと無理だ。頼んだぞ。」
軽いノリで押し付けるくせに、やるべきことはめちゃくちゃ厄介だ。
「馬鹿南無が……!なんで俺なんだよ。」
不機嫌そうにぶつぶつと呟きながら、俺――港は、海辺の小さな漁港に立っていた。
冷たい潮風が吹き付け、薄暗い空にはどんよりとした灰色の雲が広がっている。人影は異様な静けさが漂っていた。
「さて、今回のターゲットは……超常異能者、通称『シーレイヴン』。」
港は自分の小型端末を操作しながら、任務内容を確認する。
シーレイヴン――異能を用いて海上を支配する強力な異能者で、最近船舶が次々と謎の失踪を遂げている事件の中心人物らしい。
「また厄介なやつをよこしやがって……。」
港は頭を掻きながら、南無の顔を思い浮かべた。
任務の一環として、港は漁船に乗り込み、指定された海域へと向かうことになった。
「海か……悪くないけど、なんか嫌な予感しかしねえ。」
港は舵を握りながら、周囲を警戒する。
やがて、船が指定海域に到達したその瞬間――
「……っ!?」
突如、海面がざわつき、波が異常な動きを見せ始めた。まるで見えない手が水を操っているかのように。
「狩り手がこんなところに何の用だ?」
冷たく鋭い声が響くと同時に、海面からゆっくりと人影が現れた。
それは、水のように滑らかな動きをする異能者――シーレイヴンだった。
彼の周囲には、水柱のようなものが複数立ち上がり、まるで護衛するかのように揺らめいている。
「おいおい……これが噂の超常異能者かよ。派手に出迎えてくれるじゃねえか。」
港は舌打ちをしながらも、油断せずに身構えた。
「南無の命令か?ふん……あの女はいつも厄介な手を使う。」
シーレイヴンは冷笑しながら、手を軽く振った。
次の瞬間――巨大な水の蛇が形を成し、港へと襲いかかってきた。
「うおっと!」
港は素早く体を反らし、間一髪で水蛇の攻撃をかわす。だが、水蛇はそのまま船体に直撃し、木片が飛び散る。
「おいおい!船を壊すんじゃねえよ!」
港は叫びながらも、すぐさま体勢を立て直す。
「どうやら話し合いで解決ってわけにはいかねえみたいだな。」
港は漁船の甲板にあった錨を手に取り、勢いよく投げつけた。
「そんなもので――!」
シーレイヴンは嘲笑を浮かべるが、次の瞬間、錨が水蛇の一体を貫き、形を崩してしまう。
「どうだ、漁師の知恵を侮るなよ!」
港はさらに次の攻撃を仕掛けるべく、素早く動き始めた。
しかし、シーレイヴンはまだ余裕を見せていた。
「ふふ……面白い。だが、この海では私が絶対だ。」
彼は両手を広げ、周囲の海水が一斉に巻き上がる。その勢いは港をも圧倒するほどだ。
「……マジかよ。」
港は一瞬だけ表情を曇らせたが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。
「まあ、いいや。派手にやろうぜ――これも南無の馬鹿のせいだしな!」
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