テラーノベル
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伊波の過去の話。
伊波「星導、俺…ヒーローしてていいのかな…。」
夜のソファで、俺はポツリと呟いた。
夜。夜は、いつも気持ちが沈み込む。昔言われた些細なこと、自分の犯してしまったミス、忘れていたはずのそれら全てが、もう一度鮮明に帰ってくるのだ。
隣には静かに本を読む星導。俺の声を聞くや否や、少し驚いた表情で尋ねてきた。
星導「どうしたんですか?ライらしくもない。何かあったの?」
伊波「…市民に、お前は選ばれしものじゃない、機械に頼ったただの雑魚だ、って…。」
夜の拠点は静かで、俺の放った言葉が闇に飲み込まれていくよう。
ディティカ、いや、西というチームは基本、自然の力を使ってヒーロー活動をしている。小柳の白狼の力、カゲツの妖術などがその例だ。
西は自然の力を借りて村を守ってきた。自然の力を神の力とし、自然の力に選ばれたものを敬う。そんな風習があった。
そんな中、機械という人工物に頼って、神だの天才だのと敬ってきた人々と同等に並んだ俺。反感を買うのは当然だろう。
星導「ライ、昔のこと、思い出してみたら?」
伊波「なんで…?」
星導「なんとなーく。ほら、教えてよ。」
星導は静かに、でも優しく笑った。
伊波「ええっと…。小学一年生くらいの時かな…。」
俺は友達と石蹴りして遊んでいた。
伊波「えいっ!よし、ぼくのほうがとおくにとんだ!」
「くっそ〜!ライ、いしけりうまいんだよ!」
「まだ!まだゴールはさきにあるし!」
伊波「でも、この距離ならぼくがかちだよ!」
こんなくだらないことで喜んでたけど、これがいつもの俺たちだった。
「ライ、スポーツも勉強もできるし、モテるよな。ヒーローみたい。」
伊波「ヒー、ロー…!ぼく、ヒーロー好きなんだ!うれしいなぁ。」
ピンチの時にやってきて、みんなを悪から守ってくれる。でも、その力を自分の為に使わず、ボロボロになってでもみんなを優先する。
そんなヒーローが昔から大好きだった。
「ライならなれるよ!おれのことたすけてくれ!」
伊波「ふはっ!おまえがやられるんかよ!ぼくとヒーローになるんじゃないの?」
「そうだな!みんなでなろ!やくそく!」
そんなこと話してたら、コザカシーが来たんだよ。友達は大怪我、一人は死にかけ。
伊波「は…ぇ……。なんで…。ねぇ、ねぇ!」
俺は悔しくてさ。木の棒で戦おうとした。そしたら友達が俺のズボンの裾を握って必死で訴えてくれたんだ。
「ライ、ヒーロー、よんで…こい…!は…やく!おまえじゃ…かてないよ…。」
その真剣な顔を見てさ。俺はヒーローを呼んでこようと決めた。
伊波「うん…わかった…。しなないでね…。」
「うん…。」
そうして俺は無我夢中でヒーローの拠点に走った。今思うと、あの子は冷静だったな。
伊波「ヒーロー!ヒーロー!たすけて!ともだちが!」
「分かった。すぐに行くぞ。」
「じゃ、場所を教えてくれますか?」
伊波「うん!こっち!」
2人組で、顔は覚えてないけど、すごく親切で、落ち着く声だった…気がする。
伊波「え…な…んで…しんで…る?ねぇ、へんじしてよ!」
「まだ生きてるよ。救助隊呼んだから、この子たちは大丈夫。さ、お兄さん、本気出しちゃおっかな〜。」
そして、そのヒーロー達がコザカシーを倒してくれた。なんか、凄い技を使っててさ。
俺、ヒーローになりたい、けど俺にそんな魔法みたいな力はないって投げやりになったんだ。
伊波「ぼく、ヒーロー、なれないよ…。」
「どうして?」
伊波「ヒーローさん…。ぼくにはそんなすごいちからはないし…。」
「そうだなぁ、確かに、俺たちは凄い力を持ってるかもしれない。その力を使って、市民を守ってる。」
「でも、ヒーローはそれだけじゃないよ。」
伊波「…え?」
「ん〜…。例えば!君は、友達を守ろうと俺たちを呼んできてくれたでしょ?でも君が、僕が戦うってあのオバケ達に攻撃したら、きっと君も大怪我をしたし、2人とも危なかったよね。」
伊波「うん…。」
「君が、俺たちを呼んできてくれたことで、君のお友達は助かった。なら、市民を救った君は?」
伊波「ひー…ろー!」
「そう。これができない、あの人みたいにうまく行かない、じゃなくて、君にできることを伸ばしてみたら?君も、勇敢だし、状況判断ができる。ヒーローの素質はあるよ。」
伊波「ほんと!?ぼく、ヒーローになりたい。おにぃちゃん、ぼく、ぜったいにヒーローになるから、いっしょにたたかおうね!」
「ええ。約束。」
俺、超能力者、魔法使い、って目立ってるのがヒーローだと思ってたけど、俺にしかできない「何か」の力を信じてみようと思えた。
伊波「…ただヒーロー達の背中を見てるだけじゃダメだよね。憧れて、なろうと思ったら、それ相応の事をしないと。」
そうして、鍛錬を重ねて、六年生の時、ヒーロー協会に試験に行った。
伊波「合…格!」
見事、俺は試験に受かって、晴れてヒーローになった。史上最年少の12歳。でも、助けてくれたヒーローの元には簡単には行けなかった。
伊波「はぁ…はぁ…。」
「ハンマー持つんならまず力をつけろ。戦いたければそこからだ。武器を使えなきゃ意味がない。」
伊波「っはい…!」
「ここまで。これ以上は無駄だ。」
伊波「ごめん…なさい…。」
階段を着実に昇っている感じはしてた。でも、それでも周りには届かなくて。
幸い、辛いことだけじゃなかった。自分のつくった武器が活躍したって話を聞くたび、散々機械をいじって、重たいハンマーを一生懸命振り回してきたこのボロボロな両手も、誰かを救えてるんだって思った。
「自主鍛錬、忘れるなよ。自主鍛錬こそ、一番の強さだ。」
伊波「はい!」
そんな日が数年続いて、気づけば高校生。その頃には、俺は地区のトップになるくらい成長していた。
仲間はいたけど、ほぼ一人みたいなものだった。周りはあまり強くなくて、俺は何回も死にかけて、でもみんな自分のことに手一杯で助けてくれなくて。
悲しかったし、寂しかった。助けてくれたあのヒーロー達みたいに背中を預けられる相手がいたらいいなって。
ただ、悲しいことだけじゃなくて。ハンマーを使って空を高く舞って攻撃するから、同僚から
「お前の攻撃、なんか光を掴まえてるみたい。」
なんて言われたり。なんやかんや、凄くやりがいがあったんだ。
地区でコザカシーを倒しているときは、自分がヒーローに慣れてるんだって思えた。
現地にいけばコザカシー、本部に行けば先輩、同僚の愚痴やら相談。そこから学ぶことも沢山あった。
いつも笑顔で明るかった人から
「笑うのが辛い。最近、ずっと悲しくて…。」
完璧だと思ってた人にも
「お前みたいな力が欲しいよ。俺はお前が後輩で、尊敬するけど少し悔しいんだ。」
伊波「先輩…。」
伊波「みんな、苦しさ、悔しさを抱えて生きてるって分かった。だからこそ、俺は前を向けたんだ。」
星導「うん。答え、あったじゃん。」
伊波「え…?」
それまで静かに頷いていた星導が、ふわりと微笑んだ。
星導「ライは、なんでヒーローになろうと思ったの?なんでメカニックになったの?市民から伊波さんすご〜いって、崇めてもらうため?」
星導の少し嘲笑したような言い草に、自分の中のヒーロー像を否定されたような気がして、つい大きく声を出してしまった。
伊波「ちがう!自分の力で…かっこいいヒーローになって、市民を守りたかったから。自分の可能性を信じて、みたかったから…。」
星導「そ。誰に見向きもされなくても、バカにされても、自分が目立たなくたって、ライは自分の力でヒーローになって、市民を守ってる。」
星導「前線に行ってないから何?後ろだって大切。現に俺も後ろの方で戦ってるしね。力が弱いから何?なら指令塔としてみんなを引っ張ればいい。ライのお陰でディティカは強いんだよ。」
伊波「るべ…。」
星導「険しくて先が見えない道のりでも、ズルはしない、近道はしないって決めたんでしょ?」
伊波「うん…。だって俺は…。」
星導がニコリと笑う。そう。そうだ。俺は…。
伊波「ヒーローだから。」
星導「…ど?スッキリした?」
伊波「うん!ありがと。」
小柳「あれ…なんか俺、その話知ってるぞ。」
星導「そりゃそうですよ。小柳くんが助けたんだもん。」
いつの間にかキッチンでココアを入れているロウと目が合った。
伊波「ロウ!?いたの。てか、助けたって…。」
小柳「ああ、そうじゃん。お前、一緒にヒーローしようって星導と約束してたガキか。」
伊波「は…。」
思考が停止する。星導と?俺が?約束?
星導「ちっちゃくて可愛かったですよね。ライ。」
小柳「あと俺こいつの稽古つけたわ。」
少し経って、ようやく分かった気がした。
俺がヒーローになろうと決めたきっかけを作ったのがるべで、稽古をつけて俺が死なないように気を使ってくれてたのがロウ。
伊波「へ……。お前らだったの!?てか小柳、お前かよ。俺の心へし折ったの。」
星導「ライ、さっき地区リーダーのとき、一人で悲しかったって言ってたじゃん。」
伊波「うん。」
星導「今はどう?」
ココアを入れた小柳もマグカップを持ちこちらへ向かってきた。
伊波「俺は…背中を預けられるような仲間…。るべ、ロウ、カゲツ、そしてオリエンスと同期でほんとに良かったって思ってるよ。」
少し気恥ずかしくて、ちらりと二人を見ると、星導も小柳も驚いている。何、俺なんか変なこと言った?
そんな俺の気持ちとは裏腹に、二人ともふっと笑った。
星導「ライ、めっちゃヒーローみたいな顔でめっちゃヒーローみたいな事言うじゃん。」
小柳「びっくりしたぁ…。お前、なんか強くなったな。」
伊波「…はぁ?」
話の意味がわからなくて、つい素っ頓狂な声を出してしまう。てか星導はなんだよ。俺ヒーローだし。
伊波「てかカゲツは?」
星導「上で寝てる。もう夜中だよ。」
伊波「そう言われると眠気が…。」
星導「ほら寝るよ!アンタ早く寝なさい!」
またプチ演劇が始まりかけた。
小柳「お前なぁ…。」
伊波「ふふ、おやすみ。」
星導、小柳「「おやすみ。」」
あとがき
翠蓮です。お気づきの方いらっしゃるでしょうか。何を隠そうこの小説、伊波ライさんの「レイオブライト」という曲を元につくっておりました。
翠蓮名物の明らかに甘々すぎる小柳さんと星導さんが、今回甘々爆発してましたね。
キャラ崩壊が無いように、と努力してはいるのですが、矢張り私の中でこれが彼らなのでしょうか。いや、そんな事はないでしょうけど。
歌詞を入れきれていないので、「おい、ここ入ってねぇぞ」ってなるかもしれませんが、そこはお許しください。
またどこかで会いましょう。では。
(2026/11/2)
コメント
1件
うわっ…!伊波の過去編、めっちゃ良かった…!小学生の頃に助けられたヒーローがまさか星導と小柳だったなんて、その伏線気づかなかったわ。るべの「前に立ってなくても、ライのお陰でディティカは強いんだよ」って言葉、めっちゃ沁みた。結局ヒーローって力の大きさじゃなくて「市民を救いたい」って気持ちだよなって再確認できる回だった🔥 最後のココアタイムほっこりした…続き楽しみ!
ぺぽ゜
11
138
けー
1,800