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朝の森。モルグ・マッシュは、いつになく胸が高鳴っていた。
「……いよいよ、森を出る時が来たか。」
森の道を進むと空気が変わり、木々の隙間から光が差し込む。森の出口はもうすぐだった。
しかし。
「――……うっ?」
ズシーン……と大地が揺れるほどの重い足音が森の静寂を破った。目の前に現れたのは、体長3mを超える灰色の熊のような巨大モンスター。体中に鋭い棘が生え、唸るような声で威嚇している。
「なんだよこれ……ラストボスか!?いきなり難易度高すぎだろ!」
モルグの背中を滴る冷や汗。
熊型モンスターが、突如として突進してきた。
「まずいっ!」
間一髪で避けたが、その勢いで近くの木がなぎ倒される。巨大な腕がうなりを上げ、次の瞬間――
「ぐわッ……!」
強烈な一撃が直撃。モルグの右腕が宙に舞い、地面に転がった。
「っ、いってぇ……!やべぇ、腕が……!」
猛烈な痛みと とまらない出血 。絶体絶命。このままじゃ死ぬ!
「……ダメだ……ダメだっ、せっかくここまで来たのに……!」
その瞬間、頭の中で声が響く。
『新たなスキルを獲得しました』
「っ、今だ!これしかない――!」
【菌糸包帯(マイコ・バインド)】
「菌糸よ、糸になれ――!」
モルグは本能で叫ぶように発動。切断された肩口から白銀の細い菌糸がわき上がり、瞬時に腕の断面に絡みついていく。
「すげぇ……!どんどん血が止まって……腕の感覚が、戻ってくる!」
みるみるうちに菌糸が傷口を覆い、肉と骨を再生。たった数秒で腕が元通りに!
「これが俺の……再生スキル……!」
「やるしかない!今度は俺の番だ!!」
熊型モンスターに向かって、モルグは次々とスキルを放つ。
【毒胞子(ポイズンスポア)】
「お前には……毒だッ!」
紫の毒胞子を放つ。熊は一瞬ひるむが、それでも突進してくる。
【眠り胞子(スリープスポア)】
「これで少し眠ってろ……!スリープスポアッ!」
青白い胞子が熊にまとわりつき、重たそうに腕を振り下ろし始める。
【幻覚胞子(ミラージュスポア)】
「ついでに――見せてやるよ、悪夢を!ミラージュスポア!」
虹色の胞子をぶつけると、熊の目がぐるぐる回り出し、意味不明な方向に突進を始める。
一気に弱った巨体を逃さず、モルグは叫ぶ。
「これで、終わりだ――ッ!」
熊型モンスターは毒と幻覚、それに眠気でフラフラになり、やがて大木に激突し崩れ落ちた。
「はぁ……はぁ……。倒した、のか……?」
静寂が戻る。巨大な敵が力なく横たわっている。その姿に、モルグは信じられない気持ちで近づいた。
「……ギリギリだったな……。でも、俺は“キノコ”として、本当に強くなったんだな。」
ふと、菌糸で包帯になった腕を眺める。
「回復もできて状態異常もばらまける……俺、もしかして最強種じゃね?」
おどけて笑いながら空を見上げ、森の出口の向こうを見つめる。
「さて、次はどんな世界が待っているやら。元気になった腕と共に、冒険再開だ!」
こうして、森を出る――新たな世界と可能性に満ちたモルグの姿が、朝日に照らされていた。