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カレーライスでなくキーマカレー良いですね✨
翌朝、
皆んなで朝食をいただく。
なんだか皆んなニコニコしている気がする。
いつも怖い顔でムスッとしていた父が1番ニコニコしているように見える。
今の方が断然良いが、ちょっと不思議な光景だ。
そして、また朝から父は、匠にアレもコレもと食べ物を勧めている。
匠は、
「ありがとうございます」と言っているが、
「お父さん! もう、大丈夫だから」と私が止めた。
「そうか? じゃあ好きな物を食べて!」と、
「はい、ありがとうございます」
そして、
「匠くんは、今一人暮らし?」と母。
「はい、そうです」
「あ、じゃあ、良かったらお惣菜持って帰って。お口に合うかどうか分からないけど」と。
「ありがとうございます。どれも美味しいので嬉しいです! 助かります」と喜んでいる。
「綾も、今日匠くんちに行くんでしょ? 持って行って冷凍庫と冷蔵庫に分けて入れてあげて」と、
私の今日の予定まで決められた。
「えっ」と、匠を見ると、
「よろしくお願いしま〜す」と言っている。
「ふふ、うん、分かった」
──嬉しい
そして、私は急いで朝食を食べて、身支度をした。
────
「すっかりお世話になってしまって、本当にありがとうございました」と匠が言うと、
「いいえ、またゆっくり来てね」と母。
「また、毎週でも泊まりにおいで」と言う父。
「「お父さん!」」と母と2人でツッコむ。
「さすがに毎週はね〜2人の都合もあるわよね〜ぜひまた、ゆっくり来てちょうだいね」とお婆ちゃん。
「ありがとうございます」
「じゃあ、行って来ます」と、私も一緒に出て、匠の車に乗り込むと、
「「「行ってらっしゃーい」」」と、3人に手を振られる。
──なんだか恥ずかしい
そして、運転席側の窓から、
「頑張ってね〜」と言う母。
「何を頑張るのよ?」と私が笑うと、
「頑張りま〜す!」と匠。
「え? 何を?」と聞くが、
「ふふ」と、笑っている。
「え、何?」
「じゃあ、失礼します」と会釈をして、ゆっくり車を走らせる匠。
「バイバイ、ごゆっくり〜」と3人に手を振られるので、振り返す。
「ごゆっくりって……」と言う母に笑ってしまう。
ガレージを出ると、手を繋ぐ匠。
「何を頑張るの?」ともう一度聞くと、
「綾が初めてウチに来てくれるから」
「うん、ん?」
「いや、それだけだけど?」と言う。
「何? もう〜皆んなして意味深な……」
「ハハッ」と笑っている。
「じゃあ、初体験でもする?」と言う。
「……何の?」と聞くと、
「今、ドキッとした?」と聞かれて、
「……ちょっとだけ」と答えると、
「ふふ、可愛い〜」と言う。
「もう!」
どうも家族と匠が何か結託してるようで、私だけ、何がなんだか分からなくなっている。
20分ほどで、匠のマンションに到着。
初訪問だ。と言うことは、既に初体験!
「ホント近くだったんだよね?」
「おお、そうだな」
匠が母から貰ったお惣菜の袋を持ってくれる。
そして、もう片方の手を繋いで駐車場から歩く。
そう言えば、コレも初体験だ。
昨日は、手を繋いだり、抱きしめ合ったり、キスをしたりしたけど、手を繋いで外を歩くのは、初めてだ。駐車場から部屋までだけど……
「初体験!」と言うと、
「ん?」と聞く匠に、繋いだ手を見せる。
「ん? 昨日手を繋いで寝たぞ」と言うので、
「外を歩くのは、初めてだよ」
「あ〜そっか。初体験だな」と笑う。
「うん」
エレベーターで、匠の部屋まで上がる。
匠が《《7》》をポチッと押した。
「7階なんだ」
「うん」
「夜景見える?」
「見えるよ」
「そっか」とニコニコする。
「夜まで居る?」と聞かれる。
「う〜ん、お邪魔じゃなければ」と答える。
「もちろん!」と言う匠。
「ふふ、じゃあ居る!」
「うん」
そう言いながら、匠の部屋へ。
「どうぞ」とドアを開けてくれる。
「お邪魔しま〜す。うわ〜! 何コレ? 思ってたより数倍広い!」と驚いた。
「ふふ」とご満悦の匠
「え、凄〜い!」
リビングも広く、LDKを合わせると20畳以上はあるだろう。
窓から見える景色も綺麗だ。
「え、待って! 何この広さ! ねぇ〜匠この部屋どうしたの?」と、私はテンパって変な聞き方をした。
「どうしたの? って買った!」と言う匠
「え〜〜! どうやって?」
「不動産屋に行って、契約して……」
「そんなことを聞いてるんじゃないわよ」
「ハハッ」
大学院卒3年目とは言え、まさかこの広さを買えるのだろうか?
「まあ、俺1人では無理だよな」
「そうよね? あ、お父様?」と聞くと、
「うん、まあ、半分出してもらった。最初に買っておいて、狭くなったら買い替えられるかと思って」と言う。
2LDKだが広いので、部屋は、区切れるようになっている。引越す必要はないのでは? と私は思った。
「凄〜い! あっちの部屋も見ても良い?」
「良いよ〜どうぞ〜」と言ってくれたので、私は、まるで内見会のように、全部見せてもらった。
「凄いね〜素敵〜」と言うと、
「良かった、気に入ってもらえて」と笑っている。
そして、持って来たおかずを早速広げて、タッパーから冷凍庫と冷蔵庫に1食分ずつ分ける作業をする。
「冷蔵庫、開けても良い?」
「うん、もちろん」
それをしながら、私は気付いた。
そう言えば、私は、匠のお父さんの職業を知らない。
「ねぇ」
「ん?」
「匠のお父様って、何のお仕事をされてるの?」と聞くと、
「パイロット」と答えた。
「え〜〜! そうなんだ〜カッコイイ〜」と言うと、
「カッコイイか……」と、少し不満げな顔をする。
「ん?」
「ずっと家に居なかったからな」と、少し寂しそうに話す。
「だから、俺は本当に綾の家族に救われたよ」と。
「そっか……」
「俺は、パイロットにだけはならない! って思ってた」
「そうなんだ」
匠なりの寂しさを抱えていたんだ。
「だから、せめてもの償いなのか、マンションを決める時、半分出すから買っておけ! って」
「なるほど……」
「まあ、おかげで綾と知り合えて、綾のご家族にも良くしてもらったからな」と言った。
「うん」
「で、今は、目の前に綾が居る」と言う。
「うん」
「結果、良かったのかな」と匠は言う。
「うん、良かったんだよ!」と言うと、笑っている。
「私、お父様と会ったことある?」と聞くと、
「あ〜たぶん有ると思うんだけどなあ」
「そうなんだ、ごめん、覚えてないかも」
「3歳じゃ無理もないよ」
「だよね〜」
そして、私は食材を、
「コレ、1食分ずつにしてるからね」
「ありがとう」
「あ、今晩何にする? 今日食べる分は、冷蔵庫に入れるけど」と言うと、
「お任せします」と言う。
「え〜ダメダメ! 匠、その答えは、0点よ!」
「え? ごめん」
「じゃあ、何が食べたい?」と聞くと、
「綾の得意料理」と言う。
「え〜もう〜難しいなあ。それもダメ! 1点! 昨日は、煮物やら、魚やら色々だったもんね」
「じゃあ、綾のカレーが食べたい!」と言った。
「カレー?」
「うん」
「分かった! 100点!」と言うと、
「やった〜!」と喜んでいる。
カレーに喜んでいるのか、100点に喜んでいるのかは、分からないが、良しとしよう。
合い挽き肉があるので、キーマカレーにしようと思う。挽肉を冷蔵庫に入れておく。
そして、野菜室を確認する。ほとんど無い。
カレーは、玉ねぎだけでも良いが、サラダも欲しいし、これからだって野菜は必要だ!
「う〜ん、お野菜買いに行く?」と言うと、
「そうだな、足りない物は、後で買いに行こう」と言う匠。
「うん」
まるで新婚みたいだな、と嬉しくなった。