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そして、匠は、
「コーヒーでも入れようか? あっ! 綾は、紅茶かホットココア?」と聞いてくれる。
私は、体質なのかコーヒーを飲むとなぜか夜、心臓がバクバクして眠れなくなることがある。
だから、カフェインレスか、ホットココアにすることが多いが、紅茶も好きなのだ。
紅茶にもカフェインが含まれているが、コーヒーのおよそ半分ほどだとか……気持ちの問題なのか、夜も普通に眠れる。
「あ、私が淹れるよ」と言うと、
「良いから良いから座ってて」と、匠が淹れてくれるようだ。
「じゃあ、紅茶お願いしま〜す」
「はい! ミルク? レモン? ストレート?」
「ふふ、凄い! カフェみたい! レモンで」
「了解しました〜」
「普段からレモンがあるの?」と聞くと、
「あ〜たまに焼酎に入れて呑むから」
「なるほど〜お料理はするの?」と聞くと、
「いや〜今は、ほとんどしないな。でも、やれば出来る子だから」
「ふふ、そうなんだ。出来る子なんだ」
私は、リビングソファーに腰掛けて辺りを見回す。
部屋は、とても綺麗だ。
余計な物は何もない。
大きなテレビが壁面にかかり、革張りの茶色いソファーにナチュラルな木のテーブル。
どこかレトロな感じがとてもオシャレだ。
大きなグリーンの鉢植えもある。
まるで、ショールームのよう。
「匠ってオシャレだね」と言うと、
「そうか? インテリア雑貨屋さんで見て、そのまんまマネして買っただけ」と言う。
「そうなんだ、確かにお店そのまんまって感じでオシャレだわ」
「綾も何か欲しい物が有れば、置いても良いぞ」
と言った。
「え?」
──なんだか気が早いような気がする
「あ、うん……。ここってペット可?」と聞いてみた。
「うん、小型犬程度なら」
「それは良いなあ」
「ん? 綾、犬欲しいの?」
「うん、いつかはね〜しかも小型犬」
「そっか……」と笑っている。
そして、匠は紅茶とコーヒーを淹れながら、
「綾! コーヒー、全く飲めないわけじゃないよな? さっき飲んでたよな?」と。
「うん、毎朝、デカフェを飲んでる」と言うと、
「そっか、じゃあ、それも後で買おう」
「うん、ありがとう」
──ん? 私が来た時の為に?
平日は、仕事だし、どんな頻度で来れるかなあ?
なんだか勿体ないような気もする。
そんなにモーニングコーヒーを一緒に飲む?
え、ヤダ〜それってお泊まりした時じゃん!
と、1人で妄想して、恥ずかしくなった。
ニヤニヤしていると、
「ん?」と、匠に言われた。
「ううん」
「ふふ」と笑われた。
そして、
「どうぞ」と、リビングテーブルまで運んで来てくれた。
「うわ〜可愛い〜! ありがとう〜」
可愛い紅茶ポットに、入れてくれている。
「ポットだから、おかわりもあるぞ」と言いながら、
砂時計まで置いてくれた。
初めて会う男性からされたら、引くレベルの気遣いだ!
「うわっ、すっごくオシャレ! ホントにカフェみたい!」と言うと、
「ふふ、やれば出来る子」と笑っている。
「ふふ、ホント、オシャレだよね? もう彼女なんて要らなくない?」と言うと、
「いやいや、何でも見よう見まねだよ! 普段はこんなことしないから今日だけ特別な! それに、綾は必要だから!」と言われた。
「ふふ」と思わず照れて笑ってしまった。
砂時計を見て「もうちょっとだな」と言う匠。
「これも初体験ね」と言うと、
「おお、もう二度と出て来ないかもしれないからな、貴重な体験だぞ!」と言う。
マメに、ずっとこんなに丁寧なことをする人なら、
本当に私なんて要らないじゃん! って思ったけど、今日は、私の為に頑張ってくれてるんだと思うと、嬉しかった。
「そりゃあ、モテるよね〜」と、しみじみ言うと、
「ん? 誰が?」と匠。
匠を人差し指で、指差すと、
「人を指差すな!」と右手の人差し指を掴まれる。
「え、この指、人差し指って言うんだよ! 知らないの?」と言うと、
「だからって、俺を差すな!」と言う。
「ん? 何? もしかして、先っちょ恐怖症?」と言うと、
「先っちょとか言うな! 先端な!」と笑っている。
「怖いの? ほれほれ」と、また指を差す。
「やめろ!」と、繰り返し指を掴まれるので、指を順番に変えて差す。
「「ふふふふ」」と笑い合う。
何をしていても2人なら笑っていられる。
そして、私の薬指を掴んで、
「指輪、買うか?」と言った。
「え?」
驚いた!
少し照れ隠しで、
「これ右手だよ」と言うと、
「ハハッ」と笑っている。
「匠って、どこか抜けてるよね?」と言うと、
「綾だけには、言われたくない!」と笑う。
「ふ〜んだ! でも匠は、マメそうだから、モテるんだろうね」と言うと、
「は〜? 3年も彼女居ませんでしたけど?」
と言う。
「たった3年じゃん!」と言うと、
「3年は、長かった……」と重めに言う。
「そっか……あっ!」
もう砂時計の砂が全部落ちたようなのでポットからカップに紅茶を注ぐ。
「う〜ん、良い香り〜」と言うと、
「だろう? ダージリン。でもさあ、レモンには、キャンディとかニルギリとか言う茶葉が合うらしいぞ、今度買ってみよう」と言う。
「何でも良く知ってるね?」と言うと、
「検索したに決まってるだろ?」と笑う。
「もしかして、私の為に調べてくれたの?」と聞くと、「そうそう、チャチャっと」と笑っている。
「そうなんだ」
──嬉しい
「あ〜美味しい〜!」
ホッとする。匠みたいだ。
「良かった」と満足そうに微笑んでいる。
そして、匠が突然、
「なあ、綾」
「ん?」
「ココで一緒に暮らさないか?」
と言った。
「え?」と、私が驚くと、
「もう、ご両親の許可も貰えたわけだし……」と言う。
「匠のご両親には、まだだよ」と私が言うと、
「それは大丈夫!」と言う。
「え? 何が大丈夫なの?」と聞くと、
「今頃、《《お母さん》》がウチのおふくろと電話で話してるはず」と言う。
「え〜〜〜〜!」
物凄く驚いた。
「さっき、実家の電話番号を聞かれたから」と笑っている。
母よ、だから『ごゆっくり〜』とか『頑張って〜』と手を振りながら笑っていたのか……
「まあ、そもそも、俺の結婚相手は、自分で決める! って両親には以前から言ってあるし……事後報告で大丈夫なんだけどな」と言う。
いやいや、でも……
昨日は、確かに《《結婚前提》》と、父から言い出したし、匠からも正式に言われたけど、
昨日の今日で、もう同棲の話って早すぎない?
と、思っていると。
「綾は、どう思ってる?」と……
「匠と一緒に居れば楽しいし、ずっと一緒に居たいと思ってるよ」
「うん」
「でも、正直言うと、スピードが早すぎて、まだ頭が追いついてないの」と話すと、
「そっか、ちょっと急ぎ過ぎたかな?」と悲しい顔をする匠。
「あ、嫌だ! って言ってるんじゃないのよ」
「うん、分かってる」
「幼馴染とは言え、小学生から3年前までの匠をまだ私は知らないし、匠だってその頃の私のことを知らないでしょう?」と言うと、
「そうだけど、俺は過去なんて、どうでも良いと思ってる。綾は綾だし、この3年間、今の綾を見て来たから」と言われた。
また、泣きそうになった。
コメント
1件
匠くん、素敵です✨