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#異世界転移
花月夜れん
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設楽理沙
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「麗霞、脚の怪我はもう大丈夫なの?」
皇太子妃の宮へ行こうとする途中、友達の葉青と会った。
公には、雲嵐は虎に襲われ、一緒にいた麗霞はその虎を射殺そうとした矢に当たって負傷したことになっている。
「ええ、まだ傷跡が少し残っているけどご覧の通りよ! すっかり良くなったわ」
「良かった。あんたが怪我して帰ってきたって聞いた時は驚いたんだから。それに雲嵐様の事も。虎に襲われたんでしょう? 聞いただけでも背筋が凍りそうなのに、目の前で襲われただなんて……。ごめん、変なこと言ったわ」
「ううん、いいの」
目の前でと言うのは事実だ。それが虎ではなく、人によるものであったけれど。人は時として獣よりも恐ろしいのだと、麗霞はあの時初めて体感した。
「何だか嫌なこと続きで暗くなっちゃうわね」
「続き? 他にも何かあったの?」
「ああ、そうか。麗霞は狩猟大会に行っていて知らないんだったわね。いない間のことだったんだけど、中書省の官女が遺体で見つかったそうよ。誰かに殺されたんじゃないかって話」
「え?」
「まあ後宮なら宮女がある日突然居なくなるなんてこと、ままあるらしいけど、中書省の下女じゃなくて官女よ? うーぅ! 怖いっ」
中書省の官女?
麗霞が知っている人と言えばあの人しかいない。雲嵐と逢い引きしていたあの女性。
「その人ってもしかして右って人?」
「うーん、そうだったかなぁ。『りょう』何とかって聞いたけど」
「嶺依」
「そうそう! 確かそんな名前だったと思う」
右嶺依、間違いない。
殺された雲嵐。その雲嵐と恋仲だった右。そして、火鼠に続く裏道で右に会ったことと逢い引きをしていたことを煜峰に報告したのは麗霞。
まさか……。まさかね。それはない。
雲嵐と皇太子のどちらが狙われるのか分からなかったと言っていたし、現に雲嵐にひっそりと護衛まで付けていた。それはあの場面に遭遇した麗霞が一番よく知っている。
だから雲嵐を殺したのは煜峰ではない。
でも右の方は……?
こちらもまた、煜峰ではないように思える。煜峰には中書省の官女としか教えていないし、どちらかと言うともっと探り出そうとしていたみたいだった。
そもそも、2人の死は全く関係のないものかもしれない。たまたま狙われた時期が重なっただけって可能性だってあるのだから。
煜峰に聞いてみたら何か教えてくれるだろうか。
うーむと考え込む麗霞を見て、葉青が心配そうに顔を覗き込んできた。
「知り合いだったの? 大丈夫?」
「あ、うん。春画を何度か売ったことがあったから」
「そう……」
しんみりした空気を打ち消すように、葉青は「そうだ!」と明るい声を出した。
「麗霞はこれからどこ行くの? 皇太子妃様の宮?」
「ええ。お子様達に書画を教えに」
「あんたのお陰で私も妃殿下に目をかけて貰えるようになって、調香院の中でも鼻高々よ!」
「ふふっ、それは良かった。でも葉青なら当然よ。それだけの実力があるんだもの」
前に皇太子妃に渡した茉莉花と月下香のお香を、それはもう大変気にいったようで、今では葉青を指名してお香を作ってもらっているそうだ。
「そろそろ行かなきゃ」
「うん、また」
葉青と別れて、いつも通りに皇太子妃の宮へと行くと、いつもと違う宮女が部屋の外に立っている。
新しい侍女を入れたのかな、とも思ったが、服装が皇太子妃の宮で働く人達とは違う。もしかしたら先客がいるのかもしれないと身構えると、やはり予想は当たっていた。部屋に通される前に、妃殿下の侍女に耳打ちされた。
「本日は皇后陛下もおいでです」
「えっ? ……あ、それでは私は外でお待ちしております」
「いいえ、皇后陛下も貴女に会いたいのだそうですよ。ですからこのままお入りください」
皇后陛下と謁見?! あまりに突然で心の準備が出来ていないのに、侍女に部屋に通されてしまった。
心臓はバクバク、動きはカチコチ。何とか皇后と皇太子妃の前へと進み出て額づいた。
「皇后陛下と皇太子妃殿下にご挨拶申し上げます。秘書省画院に配属されております栗麗霞でございます」
「面を上げて、楽になさい」
皇后に声をかけられて顔を上げると、柔和な笑みをたたえた女性が座っていた。小柄だが存在感があり、目尻に寄った皺が人の良さそうな雰囲気を醸し出している。
「突然で驚いたでしょう。今日はわたくしと娘たちの顔を見にいらしていたのだけど、この後で貴女が来ると言ったら、お待ちして下さっていたのよ」
「はっ、はい」
私に一体何の用が?
お子様方に教えている書画の内容についてだろうか?
頭の中がパニックになりそうにだが、2人の表情からして重大なミスやお叱りを受ける訳ではなさそう。
ドキドキとしながら話の続きを待っていると、今度は皇后が口を開いた。
「最近宮中で出回っている絵があると聞いたのよ。それも宮女たちの間だけでね。貴女なら何の絵か、よく知っているでしょう?」
「あ……はい」
終わった……。
ニコニコしながら怒るタイプの御方なんだわ……きっと。
コメント
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第37話、読み終えました!麗霞が葉青から右嶺依の死を聞くところと、その直後に皇后陛下が突然春画の話を持ち出すシーン、緊張感が一気に高まってぞくっとしました。麗霞の「終わった…」という心の叫びに思わず苦笑い。あの優しそうな皇后、実は怖い…。これからどうなるのか、本当に気になります!続きが待ち遠しいです🌷