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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第33話 〚計画に入らない感情〛(りあ視点)
……おかしい。
姫野りあは、スマホを握りしめながら、鏡の前で自分の顔を見つめていた。
いつものように整えた前髪。
いつものように作った笑顔。
なのに。
胸の奥が、ちくりと痛む。
(こんなはずじゃなかったのに)
最初は、簡単な話だった。
白雪澪が嫌い。
静かなくせに、目立つ。
近づけないくせに、特別扱いされる。
橘海翔が澪のそばにいるのが、どうしても許せなかった。
そこに現れたのが、西園寺恒一。
冷静で、頭が良くて、
「利用」という言葉を、平然と使える人。
——この人と組めば、澪を引きずり下ろせる。
そう思った。
海翔と付き合えたら。
一軍に戻れて。
みんなから羨ましがられて。
人生、勝ち組。
それが、計画。
……だったはずなのに。
「……はぁ」
りあは、ベッドに倒れ込んだ。
最近、恒一と話していると、胸がざわつく。
優しい言葉をかけられたわけじゃない。
むしろ、冷たいくらいなのに。
でも。
自分を「使える」と判断してくれた。
価値がある、と言われた気がした。
(……私、何期待してるの)
スマホの画面を見る。
恒一からのメッセージは、短く、要点だけ。
《様子は?》
《無理はしなくていい》
——優しい、わけじゃない。
効率的なだけ。
それなのに。
「……なんで」
澪を見た時とは、違う感情。
澪を見ると、苛立つ。
妬ましい。
奪いたい。
でも、恒一を思い浮かべると——
胸が、少しだけ、熱くなる。
(やば)
りあは、慌てて顔を覆った。
これは計画に入っていない。
感情は邪魔。
弱点になる。
恒一は、感情を嫌うタイプだ。
使えるかどうかで、人を見る。
そんな人に、
「好きかも」なんて思ったら——
終わりだ。
(私は、道具)
自分に言い聞かせる。
澪を引きずり下ろすための。
一軍に戻るための。
でも。
ふと、思い出す。
澪が守られている姿。
黙っていても、味方がいる姿。
——あれは、計算じゃない。
羨ましい。
悔しい。
そして、少しだけ。
(……怖い)
この計画が、どこへ向かうのか。
自分が、どこまで踏み込んでいるのか。
りあは、スマホを胸に抱きしめた。
(まだ、引き返せる?)
答えは、出ない。
ただ一つ分かるのは。
この感情は、計画に入っていない。
そしてそれは、
静かに、確実に、歪みを生み始めていた。