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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第34話 〚抑えきれない感情〛(りあ)
——ずっと、許せなかった。
姫野りあは、昼休みの教室で、机に肘をついたまま天井を睨んでいた。
白雪澪。
静かで、目立たなくて、
いつも本ばかり読んでいる三軍。
——そう、思っていた。
それなのに。
橘海翔。
西園寺恒一。
優等生で、イケメンで、人気者。
その二人が、澪の周りにいる。
さらに、
えま、しおり、みさと。
「三軍」のはずの女子たちが、
澪を中心に、しっかり繋がっている。
(……意味わかんない)
胸の奥が、どす黒く煮詰まる。
りあは、これまでを思い出していた。
澪を見下していた日々。
無視しても、悪口を言っても、
澪は何も言い返さなかった。
——だから、下だと思っていた。
なのに今は。
守られている。
選ばれている。
羨ましがられている。
(ふざけんなよ……)
昼休み。
担任はいない。
教室は、ざわざわしている。
——今なら。
りあは、わざと大きめの声で言った。
「三軍のくせにさ」
「ほんと調子乗ってるよね」
くすっと笑う声。
周りの視線。
「どうせ静かなだけでしょ」
「人気者に近づけたからって、勘違いしすぎ」
言葉が、止まらない。
ずっと溜めてきた感情が、
一気に溢れ出す。
その時。
——教室の扉が開いた。
廊下から戻ってきた澪が、
その場に、立ち止まった。
目が合う。
澪は、すぐに状況を理解した。
自分のことだ、と。
一瞬、時間が止まったみたいだった。
澪の指先が、きゅっと震える。
唇を噛みしめて、何も言わない。
——でも。
その目が、潤んでいくのが、はっきり分かった。
限界だった。
今まで黙ってきた。
耐えてきた。
見ないふりをしてきた。
でも。
澪の目に浮かんだ涙が、
それを全部、物語っていた。
りあの胸が、どくん、と鳴る。
(……あ)
言い過ぎた?
一瞬だけ、
ほんの一瞬だけ、迷いがよぎる。
でも。
もう、止められなかった。
澪は、俯いたまま、席に戻ろうとする。
涙をこらえながら。
教室の空気が、重く沈んだ。
誰も、笑わない。
誰も、フォローしない。
——その沈黙が、逆に、痛かった。
りあは、唇を噛みしめる。
(私は、悪くない)
そう言い聞かせながら。
でも、胸の奥に残った違和感は、
どれだけ誤魔化しても、消えなかった。