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※これは完全なる作者の幻覚です
※現実と妄想の区別がつかない方は閲覧なさらないでください
死ネタ有
元小説から加筆修正をしています
……ああ、またこの夢。
自分の腕に抱えた、片足を失った雲雀を見てそう思う。
浅くなっていく呼吸に顔を顰め、ぎゅうと体を強く抱いた。
周りでは爆発音や銃声が響き、恐らく何かしらの争いが起きているんだろうと思う。
当然、そんな事はありえない。だから、これが夢だと理解するのに時間はかからなかった。
雲雀に目を落とすと、既に目は虚ろで、何を写しているか分からない状況だった。
「……雲雀…」
「…は、…んなかお、すんなって、!……大丈夫、だから…」
その目で僕を捉えると、心配させまいと笑う雲雀。
いつもみたいに笑うその姿に、頭が痛くなる。
現実じゃないのに、変にリアルだから、この夢は本当にタチが悪い。
冷えていく体を抱きしめて、僕も目を閉じた。
僕は『雲雀が死ぬ夢』をよく見ていた。
とんでもない悪夢だ。
時には、爆発に巻き込まれて。
時には、病気を患って。
時には、人助けのために溺れて。
時には……そうだな。現実の僕はそんなヘマしないけど……僕を庇って、ナイフに刺された。
どれも現実離れしているんだ。だから、夢に落ちたらすぐに分かる。これは夢だって。
でも、雲雀は全部本物のようだった。
その体温。
その言葉。
その声。
その姿。
その表情。
その行動。
夢だって割り切ってしまいたいのに、夢の中の雲雀はどうにも本物のようで、全てが記憶に残ってしまう。
どの雲雀も僕を心から愛していて、どの夢でも僕は雲雀を心から愛してしまっていた。
夢の中だけでも君を嫌えたら、こんな思いはしてないだろうに。
初めて夢を見たその日から、雲雀が離れていくのが怖くなった。
「…ッ雲雀!!」
「うわっ!?何!?……奏斗、どうしたんだよ?なんかあったか?」
「……ッ、……ううん。何でも……虫がいたかと思ったんだけど、見間違えたみたい」
「……?なら、いいけど」
「……雲雀、?どこ行くの?」
「え?どこって……アキラ達のとこ。どした?なんか予定あったっけ?」
「あー……いや、そういうわけじゃないんだけど。……気をつけてね」
「おー!いってきまーす」
バタン、と閉じられた扉を見つめ、バクバクと鳴る心臓を宥める。
あれは夢だ。大丈夫。
そう言い聞かせたって、不安なものは不安で、どうしようもなかった。
(……また、夢……)
この夢では、雲雀が縛り付けられ、処刑台に立たされている。
僕は、誰よりも近い位置でそれを見ていた。
助けたいのに、この体は動いてくれない。
重い、鋭い刃の下に、雲雀の体が押さえつけられる。
……なんでそんな顔してんだよ、雲雀。
お前が何したって言うの?
諦めたような顔をした雲雀を見て、拳を握りしめる。
……そんなこと考えたって、無駄だ。だって、これは夢。
雲雀の目が、僕を捉える。
少し目を見開き、愛おしいものを見るような目で笑った。
『幸せに生きろよ』
確かに、雲雀の口はそう動いた。
刃が落ちる。
見ていたくなくて、僕は目を瞑った。
目を開く。
(……あれ、?)
視界に映るのは自室の天井では無かった。
目の前には雲雀が居る。
周りを見渡すと、知らない廃墟に居るようだった。
じゃあ、これも夢だ。ここに居るよりも前の記憶が無いし。
……でも、人がいない。僕と、雲雀だけ。
……もしかして、雲雀を助けられるのか?
雲雀の顔を見る。
笑っている。
けれど、悲しそうに歪んでいる。
よく見れば、雲雀の手は恐怖に震えていた。
……ああ。
これも、ハッピーエンドにはならないな。
直感でそう思った。
けれど、誰が殺すっていうんだ。
周りには人が居ないのに。
手に持ったナイフを握り直す。
……え。
目を、自身の手に落とす。
鋭いそれ。
鈍く輝くそれ。
なんで、僕。
ナイフ、持って。
理解が追い付かず、思考が詰まる。
グラり、と体が動いた。
地面を蹴って、雲雀に飛びかかる。
なんで、ダメ。
手に握りしめたそれを手放したくても、手から離れてくれない。
やめろ。やめろってば。
勝手に動く体を必死に止めようとしても、止まってくれやしない。
ナイフを振り上げる。
雲雀の目から涙が零れる。
その鋭い先端は、雲雀の胸を貫いた。
暗転。
「ひば、り?……ね、起きて。起きてよ……」
気づけば僕は、体温を失い始めている雲雀の体を揺らしていた。
聞こえる呼吸は浅くなっていくばかりだった。
自分で殺したのに、起きてだなんて。
こんな馬鹿な話はない。
僕が殺したのだ。雲雀を。
そんなこと、現実の僕がするはずが無い。
だから、これは夢だって分かる 。
……なのに、なんでまだ醒めないの?
「雲雀……お願い……お願い……」
1%の光に賭けて、肩を必死に揺らす。
馬鹿みたい。こんなの、死んでるに決まってる。
間違いなく僕の手は心臓を狙っていたんだから。
冷えきった体を、震える腕で抱きしめる。
とっくに呼吸の音はしなくなっていた。
ごめんね雲雀。
馬鹿な僕を許して。
夢で君を殺した僕を。
生暖かい液体が頬を伝う。
もう見たくないよ。こんな夢。
大切な人が死ぬ夢なんて、耐えられない。
なんでこんな夢を見なきゃいけないの。
見たくない。死んでいく雲雀を。
僕の手で殺した雲雀を、見ていたくない。
だから、早く。早く。
「……はやく、さめろよ……」
ぽたり。
僕の頬を伝っていた涙が、雲雀の頬に落ちた。