テラーノベル
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うちには猫がいる。黒くてもふもふの可愛い子。
ベッドの上で丸まって眠っている、猫は気まぐれで近寄ると逃げてしまう。そんな所も愛おしい。
そっと近寄りベッドに腰掛ける。
どんな夢を見ているのかな、そんな事を考えながら頭を撫でてやった。
ビクッ
猫は突然起き上がり部屋の端まで逃げてしまった
「ごめん、起こしちゃったね」
優しく微笑み声をかける。猫はこちらを見つめ体を小さく丸めている。
「まだ怖いか」
そういい手を引っ込めた。
あの子は最近拾った捨て猫、近くの公園に1匹で居たから連れて帰ってきた。
私は猫をよく拾う、数ヶ月前は茶色の毛をしたヤンチャな子、あの子も家に来てすぐいなくなった。
その前もその前も、今まで何匹も拾った。
でもみんないなくなる。
だから今度こそ大切に育てようと思った。
「ご飯食べる?」
返事はない。私は床に皿を置いた、猫は動かない。
「ここに置いとくね」
怖がらせない為に仕方なく部屋を出る、ドアを閉める直接に1度だけ振り返った。
黒い毛、大きな目、小さく震える体
可愛い。
そう思って私は笑った
翌朝。
部屋に入ると猫はベッドの隅に座っていた。昨日より少しだけ近い。
「おはよう」
返事はない。
「今日はいい子だね」
私はしゃがみ込んだ。すると猫は後ろへ下がった。壁に背中をつけ、それ以上逃げられなくなる。私は不思議に思った。
どうしてこの子はいつも怯えているんだろう。
「大丈夫だよ」
手を伸ばす、猫が首を横に振った。
「…?」
その動きが少しだけおかしかった。
猫なら、こんなふうにはしない。けれど私はそれ以上考えなかった。
「怖くないよ」
私は笑った。
「ここは安全だから」
猫の目から涙が一筋落ちた、私は首を傾げる。
猫が泣くなんて変なの。
でもこの子は少し変わった猫なのだろう。そう思う事にした。
数日が経った。猫が喋った。
「…おうち、帰りたい」
私は混乱した。猫が話す?そんな訳がない。静まり返った部屋で猫がこちらを見ていた。
「…今なんて言ったの?」
猫は答えない。ただ震えている。私はゆっくり微笑んで言った。
「猫はそんな事言わないよ?」
そう言って頭を撫でてやる。猫は逃げようとした、けれど私はその身体を抱き上げた。
「大丈夫」
抱き上げられて猫が暴れる。私は優しく囁く。
「ここがあなたのおうちなんだから」
その言葉を聞いた途端、猫は動かなくなった。
私は満足そうに笑った。
「いい子だね」
その夜、私はアルバムを眺めていた。
今まで飼ってきた猫達の写真。どの子も可愛かった。そして1番新しいページ。
そこにはこの子の写真が貼られている。
黒くてもふもふの可愛い子。その写真を指で撫でる。
部屋の奥から小さな声。
「…助けて」
私は振り返り猫を見た。部屋の隅でこちらを見つめている。
「どうしたの?」
猫が泣いている。
「…お母さんに会いたい」
首を傾げた。
「変なの」
アルバムを閉じて猫に近ずく。微笑んで言っ た。
「あなたは猫でしょう?」
猫は首を横に振る。1歩近ずいた。
「そうだよね」
頭を撫でた。
「あなたは、」
その先の言葉を、私は言わなかった。
言う必要なんてない。
この子が何者なのかなんて私には関係ない。
私にとってはただの猫なのだから。
部屋には一人の人間と、
一匹の猫。
ただそれだけだった。
コメント
1件
読ませていただきました……。 冒頭のほっこりした空気から、じわじわと狂気が滲んでくる感じ、ゾッとしました。特に「猫が泣くなんて変なの」「あなたは猫でしょう?」という台詞、主人公の認識の歪みがひたひたと伝わってきて、ラストの一文が静かに胸に刺さりました。これは続きが気になります…!
#カントリーヒューマンズ
さくらんぼんぼん
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