テラーノベル
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「……ふぅ。これでひとまず、落ち着いたかな」
「そうだね、涼ちゃん。いやぁ、昨日の今日でここまで持ってくるとは、さすが元貴だね」
僕たちは、配信を終えたばかりの二人の様子を見守りながら、ようやく大きな溜息をついた。
昨夜、あの「影」がネットで騒がれ始めたとき、元貴からかかってきた電話の声は、今までに聞いたことがないくらい焦っていて、そして怒っていた。
自分のスキャンダルにじゃなく、らんちゃんが好奇の目に晒されることに、彼は本気で震えていた。
「『隠しておきたかった』って、元貴はずっと言ってたけど……。あそこまでハッキリ『僕が盾になる』なんて言っちゃうんだもん。かっこいいけど、相変わらず愛が重いよ」
「本当だよね。でも、あの配信を見てたファンのみんなの反応、温かいものが多くてよかった。二人がどれだけ真剣か、ちゃんと伝わったんだろうね」
元貴が「公表したい」と言い出したとき、僕たちに迷いはなかった。
この3年間、彼がらんちゃんをどれだけ大切に、それこそガラス細工を扱うように守ってきたかを一番近くで見てきたのは僕たちだ。
彼が一番幸せでいられる場所が彼女の隣なら、それを全力で肯定するのが、僕たちメンバーの役目だから。
「にしてもさ、若井。これからもっと大変だよ。今まで以上に、元貴の『らんちゃん自慢』に拍車がかかるのは目に見えてるし」
「うわ、確かに……。今までは『内緒の惚気』だったけど、これからは『公認の惚気』になるわけだ。僕らの耳、もつかなぁ」
カメラが切れた後、元貴の胸で泣いているらんちゃんと、彼女を一生離さないという勢いで抱きしめている元貴。
その光景は、あまりにも完成された二人の世界で、僕たちが入り込む隙なんて微塵もなかった。
「ま、これからは堂々と4人で外にご飯も行けるしね。カモフラージュ役じゃなくて、本当のお祝いとしてさ」
「そうだね。……元貴、らんちゃん。お疲れ様。明日からのスタジオ、一段と騒がしくなりそうだね」
僕たちは顔を見合わせ、苦笑いしながらも、心からの祝福を込めて二人に声をかけた。
「世界一重い愛」を抱えたリーダーと、それを真っ直ぐに受け止める最高のパートナー。
これからのミセスの音楽に、どんな新しい色が加わるのか。
僕たちは、誰よりもそれを楽しみに、明日からの日々を迎えることにした。
NEXT明日
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