その夜、私は眠れずに布団の中で何度も寝返りを打っていた。
やっぱり自分がHSPだなんて言わないほうが良かったよね…。 如月くん、困ってるかな…。彼のあのときの表情を思い出すと、胸がぎゅっと苦しくなった。
「はぁ…」
ピコン♪
静かな部屋にスマホの通知音が響く。 画面を見ると、如月くんからのLINEだった。
何だろう?
ドキドキしながら画面を開くと、そこには彼からのメッセージがあった。
『今日は話してくれてありがとう☺️ HSPのこと、ちゃんと調べてみたよ。帆乃さんがいつも色々なことに気を遣っているんだって分かって、もっと理解したくなったんだ。 今度またゆっくり話そう!』
メッセージを読んだ瞬間、私はその場に座り込んで涙がこぼれ落ちた。 理解してもらえてる。ちゃんと受け止めてもらえている。ずっと一人で抱えていた不安や寂しさが、彼の優しい言葉一つで溶けていくようだった。その安心感と嬉しさで、胸がいっぱいになった。
数日後、プリントを届けに行く足取りはまだ少し重かった。
あの日のことを思い出すと、如月くんに気を遣わせてしまうのではないかと心配だった。
インターホンを押すといつも通り如月くんが出てきて、優しい笑顔を向けてくれる。
「いつもプリントありがとう。本当に助かってるよ」
彼の穏やかな言葉に、私の頬がまた熱くなる。
「う、うん…」
私も小さく笑顔を返した。
「今日もあがってく?」
「あ、えっと…」
戸惑って目を泳がせる。
彼がまた私の気持ちに寄り添おうとしてくれているのは嬉しいけど、こんなに気を遣わせてしまっていいのかと不安になった。
そんな私の気持ちを察したのか、彼は微笑んだ。
「LINEで言ったよね?帆乃さんのことをもっと理解したいって。今日は俺に帆乃さんのことを話してほしいな」
彼のまっすぐな言葉に胸がじんわりと温かくなり、自然と頷いていた。
「……うん」
私は緊張しつつも、穏やかな気持ちで彼の家に入った。
「今日はハーブティーを淹れようか」
「ありがとう」
ハーブの香りが心地よく広がり、穏やかな気持ちになる中、窓際に置いてある本棚に目が留まった。
その中に『繊細さんの本』という題名で私も持っている本があったから。
他にも前には置いていなかった、HSP関連の本が何冊かあった。
もしかして——
私がじっとその本を見ていると、隣にいつの間にかきていた如月くんが座った。
「どうしたの?」
「あれって…!」
私が指差した方を見ると、彼は照れたように頬を染めた。
「ああ、帆乃さんのこと少しは知れるかなと思って…」
私は感動して口元を手で覆った。
「すごく嬉しい…!本当にありがとう」
胸がいっぱいになり、それ以上言葉にならなかった。
すると、彼は遠慮がちに言った。
「…あのさ、他に俺に話したいことある?」
———俺は、無意識に言っていた。
彼女は目を伏せ、黙り込んだ。まるで、言葉にできない辛さを必死に隠そうとしているように見えた。
「あ、嫌なら無理に話さなくていいからね」
慌ててそう言い、安心させようと彼女の手をぎゅっと握った。
彼女のことをもっと守ってあげたい、支えたいという気持ちが強くなった。
どうしてこう思うのだろう…?
そう俺が考えているとしばらくして、彼女は意を結したように顔を上げた。
「ううん。話したい…!」
彼女は緊張と不安が入り混じったような表情をしていたが、その目は真剣だった。
「あのね、実は中学生の時、不登校だったんだ」
突然の告白に俺は一瞬驚いたが、彼女が勇気を出して話しているので穏やかな表情で頷いた。
「うん」
「中1の夏休みまでは頑張って行ってたけど、夏休みが終わって学校が始まるとだんだん行けなくなって…」
話すうちに彼女の瞳が潤んでいくのが見えた。
「うん」
「なんで行けなくなったのかは、はっきり分からない…」
彼女はそう言うと、また俯いてしまった。俺はそんな彼女の姿を見て、自分も胸が苦しくなった。
「学校行っていない間、ずっと辛かったし苦しかった…ずっと消えたいと思ってた」
彼女の言葉が胸に突き刺さるようだった。そんな自分の気持ちを誰にも言えず、ずっと黙っていたなんて。
でも、その気持ちは分かる。
俺も鬱病になって、学校に行けなくなってから、周りに置いていかれているような焦りや孤独感に毎日押し潰されそうだった。彼女の言葉にその頃の苦しさを鮮明に思い出し、胸が締め付けられた。
そんな彼女を慰めたいという思いが溢れたからか、思わず彼女に手を伸ばす———
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