——ついに、言ってしまった。
やっぱりこんなこと言って迷惑だよね…?
如月くん困ってるよね…?
そう思い、私はそれまでうつむいていた顔を少しあげて、彼の顔を伺った。
すると、顔を上げた瞬間、彼の手がそっと伸びてきた。
「……!」
驚いて目を見開く。
「そっか、すごく辛かったんだね」
彼は優しく私を抱きしめて言った。
驚きと戸惑いは、一瞬で温かな安心感へと変わっていった。
彼の腕に抱かれながら、ずっと誰かに気持ちを分かってほしかったんだと気づいた。
「話してくれてありがとう」
穏やかな声が耳元で響き、私の瞳からは自然と涙がこぼれた。
そして彼に抱かれながら、小さな子どもみたいに泣きじゃくった。
「我慢しなくていいよ、いっぱい泣きな」
そう言って、私の頭を優しく撫でてくれた。
本当にこの人はどこまで優しいのだろうか。
これまでの、如月くんの細やかな気遣いや優しい言葉の一つ一つを思い出すたびに、心が温かくなった。
少しして、如月くんが持ってきてくれたテッシュで涙を拭いていると、それまで黙って私が落ち着くまで背中を撫でてくれていた彼が目を細めて優しく微笑んだ。
「少しは落ち着いたかな?」
彼の穏やかな笑顔と心配そうに覗き込む仕草に、胸がじんわりと温かくなる。
「うん。こんな泣き顔を見せてしまってごめんね」
そう言うと少し笑い、優しく私の目を見つめた。
「謝らないで。帆乃さんの思ってること聞けて嬉しかったから」
まるで私の気持ちをすべて受け止めようとしているかのようだった。その頬はほんのりピンク色に染まっていて、どこか照れくさそうだった。
「それと、謝るのは俺のほうだよ…その、急に抱きしめたりしたから…」
ふふ、如月くん照れてるのかな…?
なんだか可愛い。
いつの間にか彼のことをそんな風に思えるようになっていた。
「ううん。あれですっごく安心したからいいの」
そう言うと、彼はフッと微笑んだ。
「それなら、良かった」
ドキッ。
心臓が跳ねるような感覚に、思わず息を飲んだ。
な、なんだろ…この気持ち…?
気付けば頬が熱くなっていた。
「う、うん」
「そういえば、このこと他の誰かに話してたりする?」
そう聞かれて、私は首を横に振る。
「ううん。家族と幼馴染以外には誰にも言ってない…こんなの言えるわけない…」
気づけば声が小さくなっていた。
「そっか」
彼が困ったように眉を下げる。どう言葉を返せばいいのか悩んでいるようだった。
私は少しでも彼を安心させたくて、できるだけ明るい声で笑顔で言った。
「だからね、如月くんに話せて良かった!少しスッキリしたし、本当にありがとう!」
彼はホッとしたように微笑み、「それならいいんだけど」と優しく言った。
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