カランカラン♪
貸し切りになったはずの店の扉が軽い音を鳴らした。
ルカともう1人の会わせたい人だろうか。
「やぁお待たせマリネット。彼を連れてきたよ。」
ルカがそう言うとルカの背後から”彼”が出てきた。
「あっ……なっ……あっ……えっ……。」
ドッドッドッド
彼を前にして言葉が出てこない…。しかも心臓が痛いほど鼓動する。
まるで何かを訴えているみたいに…。これは恐怖…?
私は自然と腰が上がり後ずさってしまう。
「こんにちは。マリネット。ボクはアドリアン・アグレスト。」
アドリアン・アグレスト。頭の中でその名前が何度も頭の中をグルグル回る。
私の部屋にあった大量の写真達はこの目の前にいるアドリアン・アグレスト。
今目の前にいる彼が私のストーキング相手…。
確かにこのイケメンをストーキングしたい気持ちも
分からなくもないがルカも十分イケメンだし、
第一私の趣味はもっと強そうな人で…。って違う違う!
まずはきちんと謝らなければ。犯罪なんだから。
「こっこんにちはッッ!わわしはワリネットですッッ!
これまで犯した罪、申し訳ありませんでしたッッ!(超早口)」
めっ……めっちゃ噛んじゃった…。
逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい
逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい
2人の視線が背中に刺さるように感じる。
額には一向に止まりそうのない冷や汗まみれ。
「「罪??」」
上から素っ頓狂な声が降ってきた。
2人の反応からしてストーキングは2人にバレてないってことだろう。
記憶が無いときとは言え罪は罪。私がやったことには変わらない。
「わっ私がっアッアドリアン・アグレストさんをストッ……」
「「スト?」」
「ストーキングしていたと言うとこです!」
私が言い切ると、一瞬ときが止まったような感覚がした。
「ストーキング…?あっwクッックッククッ……www」
「えっ……と…マリネット?一回落ち着こう…?」
顔を上げてみると解凍されたかのようにルカは何かを思い出し笑いをこらえ、
被害者のアドリアンは目をパチクリさせていた。
罪を告白して笑われ、頭の方をどうかしたかと思われるなんて生き地獄でしかない。
「「マリネット!?」」
後ろから声が聞こえたがもう私はカフェ・ミラキュラスを後に走り去っていった。