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君に、いやになるほどありふれた愛の言葉を紡ぐ。
愛してる、と。
それでも君は満足したかのように僕のほうを見て、私もです。と返すんだ。
愛の伝え方なんてほかにもたくさんある。
だから僕はこうして君をだれにも触れさせずに、誰とも話させずに、僕の隣に置きたいと願ったんだ。
愛してるなんて、こんな定型文でも君は満足してる。
もっと別の方法で愛を伝えたいんだ。唯一無二の言葉で。
思えば、入学式でタブレット越しに君を見た時から君のことを目で追うようになった。
初めは君が女の子で、異世界から来たことに興味を持ったんだと思った。
だって、恋は脳のバグで、僕が恋するわけがないと思ってた。
でも、僕がオーバーブロットしたとき、君は魔法も何も使えない非力な女の子なのに僕に立ち向かっていったんだ。
正直、感心したよ。
君以外の人の協力もあったと思う。でもよく考えれば、君が考えた作戦でいろんなことを終わらせてきたこともある。
君は一人でたくさんのことを抱え込んでいるから、泣いてしまいそうなときもあったと思う。
でも君は泣かなかった。
ああ、どうしてだろうね。
君を見るたび、君と話すたび、君を想うたびに心臓の鼓動が早くなって、毛先が春のような色に染まるのは。
僕は君という、本来ここにいるはずのないウイルスに感染したんだ。
シャットダウンして真っ暗な画面になって動かなくなったコンピューターみたいに、君を盲目に想うよ。
僕は君が好きなんだ。
そう伝えた。
「先輩、恋は脳のバグですよ」
君はそう言った。知ってるよ。だって僕が君に言ったんだ。
「でも、それでも。バグでも。君を愛してる。」
「僕の脳を支配した君を、心の底から愛してる。」
こう伝えたら、君の頬はどんどん春色に染まっていって。
君の色白の肌に映える春色は、僕にも映ったみたいで。
君からの返事を待っている間が、とても長く感じられた。
「私も好きです______。」
たった六文字。
愛を伝えるありふれた言葉なのに、君からそう言われたときは本当にうれしかった。
君の笑顔は春爛漫と咲き乱れ、春の光をまとって僕を見た。
君は明日も僕にそうやって笑うんだろうな。
僕だけじゃない誰かにも。
それがたまらなく嫌だった。
僕は君を盲目に想って。
恋は脳のバグだって。
それでいいから君を愛すよ。
君の全部が、たまらなく愛おしい。
その想いが、僕を少しずつ溶かすんだ。
君は僕の中にある黒く渦巻く感情に気付かずに生きていて、僕の隣で笑ってる。
そんな無邪気で、馬鹿な君が愛おしい。
こんなことを言ったら怒られるだろうか。嫌われてしまうだろうか。
僕は臆病だ。嫌われたくなくて、必死に黒い感情を隠す。
君がこの感情に気付かないように、僕はこの感情を押し殺しながら今日もまた君の隣で生きている。
でも、抑えられないんだ。
君を僕でいっぱいにしたい。
考えること、話すこと。そのすべてを僕で埋め尽くせたら。
でも君はそれを嫌がるだろ?
だから僕は、君に片思いをするんだ。
本当の感情を言ったら、君に受け入れられなくなるから。
だから僕は優しいままの彼氏でいる。
世間一般で言う愛の形とは違うかもしれないけど、これが僕の愛の形。
君は永遠に僕の隣にいてくれるだけでいいんだ。
君の命が尽きるまで、僕の隣で春爛漫と笑顔を咲かせて。
バグなんかじゃないこの愛を。バグってしまった僕の脳を。
君はドロドロに溶かして。
バグってしまった君でさえ、僕は心の底から愛すよ。
僕の愛の形はとても歪んでいて、君を監禁してただ毎日君を見ていたい。
恋は脳のバグというけど、僕の心が恋をしてバグってみたいだよ。
君を愛してる。
君が冥府に逝ったら、僕も後を追って冥府に逝くんだ。
今みたいにこうやって君を殺して、君がログアウトしたこの世界なんて、生きていても意味なんてないんだから。
愛してるよ。この先もずっと。魂になった君でさえ。