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ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)は綿の精霊たちの世界(どこまでも真っ白な世界)で走っていた。
やつらの女王が自分をこの世界に閉じ込めようとしたからだ。
ミノリ(吸血鬼)の一部が助けに来てくれなかったら今ごろ彼女の人形になっていただろう。
それにしても吸血鬼って何でもできるんだな。
「ナオト、終わったわよ」
「うおっ! び、びっくりしたー。いきなり目の前に現れるな! 心臓が止まるかと思ったぞ」
「そんなに驚かないでよ。ここには綿の精霊と女王とあたしとあんたしかいないのよ? 居場所の特定なんてすぐできるわよ」
「そ、そうか。えっと、その……お前はミノリ……なんだよな?」
ミノリ(吸血鬼)がニッコリ笑う。
「ええ、そうよ。まあ、あんたの目の前にいるあたしは本体の情報を元に形成されてるけど、本体の人格とは違うから間違ってもあたしに惚れたりしないでね?」
「も、もし俺がお前に惚れたらどうするんだ?」
ミノリ(吸血鬼)が俺に顔をぐいと近づける。
「その時は……あんたの血を全部いただこうかなー」
「そ、それは困るなー」
「冗談よ。そんなことしたら本体に消されるもの」
お前は多分……いや、確実にここから出たら消されるぞ。
まあ、分かってるんだろうけど。
「そ、そうか。えっと、その……例の女王様はどうなったんだ?」
「あー、あいつは今、本来の姿をあたしに見られたショックで泣き崩れてるわよ」
「お前、そんな状態のやつを無視して俺のところに来たのか?」
「ええ、そうよ。だって、それが本体の命令だもん」
俺を全力で守れ……的な?
「そうか。えっと、じゃあ、とりあえずそいつのところまで連れていってくれ」
「あんた、頭大丈夫? あいつはあんたを自分のものにしようとしたのよ? そんなやつを励ましに行くの?」
「泣いている女の子をほったらかしにして、ここから出るわけにはいかないからな」
ミノリ(吸血鬼)は大きなため息を吐《つ》いた。
「あっ、そう。なら、さっさと終わらせましょう。ナオト、あたしの手を握って」
「お、おう」
ナオトがミノリ(吸血鬼)の手を握ると、一瞬で女王様の元までワープした。
「お前、今何したんだ?」
「ん? あー、えーっと、マーキングした場所まで移動しただけよ。こんなの吸血鬼じゃなくてもできるわよ」
そ、そうなのか。
なんかもうすごすぎて何も言えないな。
「そっかー。ミノリはすごいなー。さて、女王様の様子は……」
ナオトのそばで泣いているのは胸と秘所を綿のようなもので隠している白髪ロングと紅《あか》い瞳が特徴的な美少女……いや美幼女だった。
「あ、あのー、女王様。大丈夫、ですか?」
「大丈夫じゃないわよ! あっ、やめて! 見ないで! 私を見ないでー!!」
「お前、いったい何をしたんだ?」
「ちょっと生意気だったから実力の差を見せつけただけよ」
ひどいな……まあ、そうしないとこいつは今も俺を追いかけていただろうな。
「はぁ……もう少しうまくやれよ、まったく。女王様、俺です。ナオトです。分かりますか?」
「こっちに来ないで! あと、私を見ないで!」
うーん、これは少し時間がかかりそうだなー。