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キーンコーンカーンコーン
授業の終りを告げる鐘が鳴る。
やっと終わったと思いながら先程から視線を感じる方に目を向けると彼女と目が合った。
彼女は笑いながらこちらを見つめている。
なんだろうと思いながらも俺も笑い返した。
そうしたら彼女はさらに笑いながら俺の方に近づいてくる。
その手には裁縫道具を持っていた。
「あ…」
もしかして…と思いながら制服のボタンを確認すると、ボタンは取れ掛けで今にも外れそうだった。
彼女は、「直してあげる♪」と言いながら、制服脱いで。とジェスチャーしている。
俺は慌てて制服を脱ぎ、「早く直したい!」と言ってる彼女に渡す。
彼女は針に糸を通すのも一瞬で出来ていた。
もし俺だったら糸を通すことも出来ずに針と糸とにらめっこをして結局は俺が耐えきれずにその戦いに負けるだろう。
彼女は縫ってる間も笑顔だ。
そんな笑顔でできる余裕あるなら少しくらい裁縫の能力を分けて欲しいくらいだ。
なにせ、家庭科の時間はいつも地獄だ。
特に裁縫なんかは…。
俺はさっきも言った通り針に糸を通すことも出来ないのでそこはもう諦めて友達にやって貰ってる。
まぁ、その友達というのも今俺の制服のボタンを直してくれている彼女なんだけど。
だが、糸通しすらできない俺がなみ縫いやら何とか縫いやらができるわけが無い。
なのでいつも芸術作品が出来上がる。
先生からはいつも「どんまい…」と苦笑される。
彼女からは満面の笑みで「どんまい!」と。
悪気はないと思う。
逆にそれが恥ずかしい。
と、そんなことを思っていたらとっくにボタンが直っていた。
流石。早い。
「出来た!どうぞ!」
「ありがとう。」
そう言うと嬉しいのか眩しいほどの笑顔で「どういたしまして!」と返される。
裁縫が苦手すぎて家庭科の時間は辛い。
でも彼女と近くにいれるから、裁縫が下手すぎる俺を気遣ってくれるから
家庭科の時間は好きだ。
正直、一日中家庭科でもいい。
そう思うくらい俺は彼女のことが
好き
だった