♢ side Watanabe Shota
俺は、物心がついた時から不思議な力を持っていた。
それは。
……「赤い糸」が見える。
という事。
もちろん、メンバーとか誰にも言っていない。
……気になる?じゃあ、君には特別に教えてあげる。
俺が、この力の所為でどれだけ辛い思いをしたか、をさ。
♢
ある日の帰り道。
Fuka「あ”ー疲れたー!」
「の割には元気じゃねぇか。」
Fuka「いやいや、足結構ヤバいから。」
「……まぁ、今日は照の振付だったけど難しかったしな。」
Fuka「はぁぁ……。」
「……、」
俺はふと、ふっかの手をちらりと見てこう思った。
「(誰が好きなんだろ、ふっか。)」
俺がそう思った理由は、ふっかの左手の薬指に赤い糸が巻き付いていたから。
Fuka「ん?どした?」
「……あぁ、ううん何でもない。」
Fuka「絶対何かあるだろ!笑」
「何でもないって。」
Fuka「またまたぁ……そんなに俺の事がカッコイイなら言ってくれれば良いのに。」
「……じゃ、また明日。」
Fuka「おいシカトすんな!笑」
「だってふっかの家着いたし…………って、」
Fuka「だからさっきからそれ何!?笑」
「(は……?)」
ふっかの赤い糸は、ふっかの家の中に続いていた。
だから俺は、どストレートに聞いてやった。
「……ふっかさ、誰かと住んでんの?」
Fuka「……え?」
明らかに動揺し始めた。
Fuka「な、何で……?」
「……ちょっと家入れてくんね?」
Fuka「っな、何も無いって!俺一人で住んでるから!」
「問答無用ー。」
俺はふっかの言う事を無視してズカズカとふっかの家に入っていった。
Fuka「あちょ、!っ翔太、!!」
♢
ふっかの家に入ると……。
『おかえりー。』
と、知った声が聞こえる。
「(……やっぱり。)」
Hika「遅かったね…………って、え、?」
「……どーも、帰ってきたのが彼女だけじゃなくてごめんな?」
Hika「な、何で……?」
Fuka「っ、」
ふっかの家に居たのはリーダーの照だった。最近、プライベートで2人は遊ぶ事が多いらしいし、今日も練習終わりに1番に帰ったのは照だった。2人が付き合っているのは知らなかったし、当然誰にも話していないのだろう。それが俺にバレた所為か、ふっかは泣き出してしまった。
Fuka「っごめ、ごめん、っ……ひかる、」
Hika「……何で、バレたの?」
……「赤い糸」が見えたから、なんてそんな事言える訳も無くて。
「……いや、結構2人イチャイチャしてるからね?」
Hika「……あー、そっか。」
「……あと、それに……ふっか泣くなよ。」
Fuka「っえ、?」
「俺、別に責めるつもり無いんだけど。」
Fuka「な、んで……、」
「付き合ってんでしょ?2人。」
Hika「そう、だけど……何も言わないの?」
「言うも何も……俺の事何だと思ってんの?」
Hika「だ、だって……俺らが今まで隠してきたのは……っ、」
「男同士それにメンバー同士で付き合ってんのがバレたら何言われるか分からないから……だろ?」
Hika「……何でも、見通してんな……翔太。」
「……んなの、俺は気にしねぇよ。他のメンバーだってそうだと思う。」
Fuka「翔太……、」
「……まぁ、あと……勝手に家入ってごめんな?」
Fuka「……っいや、逆にありがとな。」
「え?」
Fuka「だって、翔太が来なかったら……俺らずっと皆に隠し続けて生きていかなきゃ駄目だったと思う。」
Hika「……俺も、翔太のおかげで言えそうかな。」
「……なら、良かった。」
と言って俺は帰ろうとした、その時。
Fuka「え、帰るの?」
「帰る以外に何の選択肢があんだよ。」
Hika「今から飲まね?」
「……は?明日練習あんのに?」
Hika「お礼だって。」
「ったく……リーダーがんな事言っていいの?」
Hika「何とかするから!」
「……まぁいいけどさ、」
Fuka「さっすがしょったー!」
♢
だが、赤い糸はずっと結ばれる訳じゃない。
互いの関係が悪くなれば、糸は解れる。
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